2009年 06月 28日

近刊チェック《知の近未来》:09年6月25日

「[本]のメルマガ」卒業後、初の「近刊チェック」である。メルマガの場合は25日配信の約束だが、平日は本業で営業時間以外もキリキリ舞いしているので、有って無いような週末のプライベートの時間を割いて書くほかない。そう思っていたら、当ブログへの25日のアクセスが存外に多くて、何だか申し訳ない気分です。

まず恒例の前口上を述べる前に、いくつかお礼を述べたい。拙ブログをご覧になって新刊を贈ってくださる編集者や著者の方々すべてにあらためて感謝します。贈呈していただいた新刊をもれなくただちにご紹介、とまではできていませんが、タイミングやチャンスが出来次第、必ず取り上げます。

続いて前口上。メルマガ読者に読んでいただくという緊張感から解放されてしまったせいか、焦点が絞れない。いくつか書くべきことはあるものの、断片的にしかレスポンスできない。備忘録的に列記してみる。

まず昨今の業界再編については、遠からず発売される月刊誌「日本古書通信」09年7月号に掲載される予定の、小田光雄さんによるリポート「最近の出版・書店界の状況――『出版状況クロニクル』補遺」が、見取り図としては一番簡潔で参考になると思う。関連する記事を、論創社ウェブサイトで連載されている小田さんの「出版状況クロニクル」の13で読むことができるから、興味のある方はご覧ください。

次に、どうしても言及したく思うのは、PR誌「未来」09年5月号に掲載された、旭屋書店池袋店の佐藤啓一さんによるエッセイ「本の交換依頼」についてである。これは、読み終えた本を返品しにくる客の様々なタイプについて、書店サイドの困惑を書いたものだが、今年に入ってから一番胸が痛んだ記事のひとつだった。二か月前に買って読み古した本を「間違えて別の本を買ってしまったので返金してくれ」と言ってくる客や、大学での定期テストで使用した六法をテスト終了後に書店へ持ち込んで返金要求する学生(しかもたちが悪い場合は書き込みをした本を返品しようとする)、読み終えたコミックを返品しようとする客等々、実にひどいものだった。

こうしたことがあることを知らなかったから胸が痛んだのではない。営業マンであれば類似する話を折々に書店員さんから聞くものだし、このほかにも様々な「ひどい客」の例がある(さらに言えば「ひどい版元」「ひどい取次」の話もしばしば耳にする)。こうした話はなかなか公けにならないが、もっとこうした情報は業界で広く共有したほうがいい。業界向けSNSがあったらいいなと思うが、各人の利害関係が複雑なせいか、試みはあってもなかなか広まらないのが実情ではないだろうか。佐藤さんのエッセイは「書店のABC」というリレー連載のために書かれたものだが、「未来」誌はこの連載をウェブ公開したらいいと思う。未來社には書店経験を積んだ優秀な社員さんが二人もいるのだから、ぜひ書店員目線のウェブコンテンツを作ってほしいと心から期待しています。

(ちなみにさいきん、日本経済評論社から松本昌次編『西谷能雄 本は志にあり―自称・頑迷固陋の全身出版人』が刊行された。言うまでもなく、西谷能雄さんは未來社の創業者だ。私は西谷さんの生前最後の新入社員だった。未來社時代の思い出が蘇ってくる。)

昔、「ひどい客」についてのエピソードを毒々しく書き散らしている、とある書店員さんのホームページを見たことがある。正直に言えばそれに限ってあまり好印象を持たなかった。本屋さんがうんざりする気持ちもわからないではないが、読者側の気持ちや要望について顧みる余裕がそこには感じられなかったからだ。今回の佐藤さんの記事はそういうものではない。淡々と書かれていて、出版人としても読者としても非常識な客のあまりの行状に唖然とする。ただし、上記のような実例を通して、読者の要望の一端を垣間見ることはできるかもしれない。つまり、本にせよコミックにせよ、しばらくのあいだ「私有」的に新本を独占できて、いらなくなったら返品して買い取ってもらえる、というシステムが、書店にあればいい、というニーズ。その善し悪しは別として、新刊書店と図書館と古書店のいいとこどりのような業態だが、昨今の「リサイクル/リユース」の大義名分からすれば、今後そうした業態が生まれないとも限らないだろう。

最後にひとつ言及しておきたいのは、今月冒頭にやっと完成した「人文会ニュース(105)創立40周年記念東京合同研修会特集号」のことだ。これは昨年10月に全国から書店員さんを百名以上招いて開催された研修会の記録である。登壇者の一人だったので、私の発言やレジュメも掲載されている。研修会は誰もが参加できるものではなかったため、興味をもってくれそうな知り合いの出版人や取次人に私も配った。その一人から聞いたのだが、田中純さんがブログでこの特集号を取り上げてくださっているという。人文会の誰がどうして贈呈する気になったのかわからないが、私はいささか困惑した。というのも、私の発言もレジュメも明確に書店員さん向けのもので、大学の先生を対象としたものではなかったからだ。読んでいただいても全然構わないが、理解してもらえるものではあるまい。私が販売の諸々の現場と出版事業とのあわいをどう縫い合わせようとしているのか、その都度かりそめの見取り図や戦略を準備しながら苦心している背景というものは、まったく伝わりにくいだろう。案の定というか、田中先生は違和感を覚えられたようだ。先生のご意見はもっともだと思う。ひとつひとつに応答したいし、提示すべき意見を持っているが、今は別の機会に譲るほかない。

出版人はもっと著者や大学人に「出版ビジネス」について啓蒙すべきだろうか。答えはイエスでもあり、ノーでもある。私はその必要性を感じる時があるが、出版ビジネスの実態や戦略について著者や大学人に理解してもらうのは実に骨が折れる作業である。できることならば、著者や大学人にはそうした水面下の苦労など知らせることなく本が出せれば楽だ、とも思う。それはおそらく著者や大学人側も同じで、出来上がった原稿の背後にどれほどの苦労と研鑽があるか、出版人に逐一説明したりこまごまと御託を並べたりすることはない。言わなければ伝わらないことがある。言わなかったせいで誤解されることもある。言えば直ちに理解してもらえるというものではないが、理解してもらえるよう努力はしなければならないし、相手を理解するようつとめなければならない。だが、なかなかうまくはいかないものだ。

ところで私は出版業界で(すら)しばしば言われる「win-winの関係」やら「三位一体」などの美辞麗句を信じていない。平等で対等な、鏡のような関係性というものは存在しない。誰かの儲けは誰かの損である。「正当な対価」というのは語義矛盾だ。対価は常に関係性の中で方向付けられており、正当さは幻想でしかない。私は虚無主義を標榜したいのではない。幻想でしかない正当さの根拠を常に問い返したいだけだ。立場が違えば様々に存在する「正当さ」を、利害が完全に一致するわけではない相手に理解してもらうのは本当に大変なことだ。たとえば「新文化」紙6月4日号に掲載されたYさんのGoogleブック検索についての記事を読むと、絶望に近いものを感じる。彼からすれば作家や出版人はバカばっかり、ということになるのだろうが、ブック検索擁護論の興味深さを除けば、彼の罵倒調は読むに堪えないひどいものだった。擁護論と業界批判がここまで渾然一体となってしまっては、伝わるものも伝わらないのではないかと思う。

「新文化」や「文化通信」などの業界紙、「週刊読書人」や「図書新聞」などの書評紙はウェブ上で無料で読めるようになるといい。それを望むのは読者のわがままだろうか。メディアとしていっそう影響力が強まると思うのだが。

……それでは、来月の新刊で気になったのは以下の書目である。

09年7月
01日『STREET PEOPLE―路上に生きる85人』高松英昭写真 太郎次郎社エディタス 2500円
01日『生かされて。』イリバギザ+アーウィン PHP文庫 820円
01日『星の王子さま』サン=テグジュペリ/たまだまさお漫画 PHP文庫 500円  
01日『O・ヘンリー傑作選』齋藤孝解説 PHP文庫 580円  
01日『サイコパス―冷淡な脳』ブレア+ミッチェル 星和書店 2940円
06日『賢い皮膚─思考する最大の〈臓器〉』傳田光洋 ちくま新書 756円
06日『害虫の誕生―虫からみた日本史』瀬戸口明久 ちくま新書 756円
06日『中学生からの哲学「超」入門』竹田青嗣 ちくまプリマー新書 840円
07日『第七官界彷徨』尾崎翠 河出文庫 630円  
07日『ボヴァリー夫人』フローベール/山田ジャク訳 河出文庫 1260円
08日『ゲームの理論と経済行動(3)』ノイマンほか ちくま学芸文庫 1785円  
08日『鏡花百物語集 文豪怪談傑作選 特別篇』泉鏡花ほか/東雅夫編 ちくま文庫 924円
09日『戦後思想家としての司馬遼太郎』成田龍一 筑摩書房 2940円
09日『ムンダネウム』ル・コルビュジェ+オトレ 筑摩書房 2625円
09日『アドルノ文学ノート(1)』三光長治ほか訳 5250円 みすず書房
09日『人類が消えた世界』アラン・ワイズマン ハヤカワ文庫NF 840円
09日『妻を帽子とまちがえた男』オリヴァー・サックス ハヤカワ文庫NF 945円
09日『人、イヌにあう』コンラート・ローレンツ ハヤカワ文庫NF 840円
09日『悪霊にさいなまれる世界』上下巻 カール・セーガン ハヤカワ文庫NF 各882円
10日『宇宙に秘められた謎』ルーシー&スティーヴン・ホーキング 岩崎書店 1995円
10日『「いのち」の教室』ライアル・ワトソン PHP研究所 1260円
13日『イブン・ジュバイルの旅行記』藤本勝次ほか監訳 講談社学術文庫 1523円
13日『自然界の秘められたデザイン』イアン・スチュアート 河出書房新社 2730円
14日『ミンスキー博士の脳の探検』Marvin Minsky 共立出版 4,725円
14日『東京ラスタマン』IZABA 河出書房新社 1680円
16日『死の内の生命―ヒロシマの生存者』上下巻 ロバート・リフトン 岩波現代文庫 各1365円
16日『対訳 イェイツ詩集』高松雄一編 岩波文庫 798円
16日『動物農場/おとぎばなし』ジョージ・オーウェル/川端康雄訳 岩波文庫 588円  
16日『エルナニ』ユゴー/稲垣直樹訳 岩波文庫 693円  
16日『続審問』ボルヘス/中村健二訳 岩波文庫 903円
16日『失われた森』レイチェル・カーソン 集英社文庫 879円
16日『ニッポンの思想』佐々木敦 講談社現代新書 777円
16日『はじめての言語ゲーム』橋爪大三郎 講談社現代新書 777円
16日『世界は分けても分からない』福岡伸一 講談社現代新書 798円
17日『日本赤軍私史』重信房子 河出書房新社 3360円
17日『ソーシャルビジネス入門』コーエン+ワーウィック 日経BP出版センター 1680円
17日『技術の哲学』村田純一 岩波書店 2625円
17日『ヤシガラ椀の外へ』ベネディクト・アンダーソン/加藤剛訳 NTT出版 2310円
21日『哲学者たちの死に方』サイモン・クリッチリー 河出書房新社 2310円
21日『血液の歴史』(『血液の物語』改題)ダグラス・スター 河出書房新社 4410円
23日『天使とボナヴェントゥラ』坂口ふみ 岩波書店 3465円
24日『少年期ヴェーバー 古代・中世史論』マックス・ヴェーバー/今野元編訳 岩波書店 2625円
25日『道元「典座教訓」―禅の食事と心』藤井宗哲訳 角川ソフィア文庫 630円
25日『現代語訳 南方録』熊倉功夫著 中央公論新社 15750円
25日『ハロルド・ピンター(1)温室/背信/家族の声』ハヤカワ演劇文庫 945円
25日『ロングテール〔増補改訂版〕』クリス・アンダーソン ハヤカワ新書juice 1365円
25日『ペスト』ダニエル・デフォー/平井正穂訳 中公文庫 1200円
25日『無印ニッポン―20世紀消費社会の終焉』堤清二+三浦展 中公新書 777円
27日『[新訳]老子』岬龍一郎訳 PHP研究所 945円
28日『村上春樹『1Q84』をどう読むか』加藤典洋ほか 河出書房新社 1260円
30日『カルパッチョ―美学的探求』ミッシェル・セール 法政大学出版局 3150円
30日『定着者と部外者』エリアス+スコットソン 法政大学出版局 3570円
30日『サイバーシティ』M・クリスティーヌ・ボイヤー NTT出版 3360円

世界一カッコイイ「ホームレス」写真集、と銘打たれた『STREET PEOPLE』には小説家の星野智幸さんによる書き下ろし短編小説「先輩伝説」が収録されている。限定350冊で、今月(09年6月1日~10日)、東京、大阪、名古屋、京都、神戸の各所で「ビッグイシュー」販売者による「路上先行販売」が行われたそうだ。

今月のハヤカワ文庫(とくにNFと演劇)のラインアップがすごい。何か一気に名作を揃えた感じだ。ジョージ・オーウェルの『一九八四年〔新訳版〕』(高橋和久訳)もまもなくハヤカワepi文庫の一冊として刊行されるはずだが、早川書房の文庫近刊一覧にはまだ載っていない。6月下旬と予告されていたのが、オンライン書店各社の情報では7月上旬となっていたり中旬となっていたりするから、刊行が遅延しているのだろう。7月のうちに本当に出るのかどうかも難しいのかもしれない。

ミンスキー博士の脳の探検』は、人工知能とロボット工学の権威マーヴィン・ミンスキー(1927‐)の研究を集大成した内容で、日本語訳としては、『計算機の数学的理論』(金山裕訳、近代科学社、1970年)、『心の社会』(安西祐一郎訳、産業図書、1990年)、『パーセプトロン』(シーモア・パパートとの共著、斎藤正男訳、東京大学出版会、1971年/改訂版、中野馨+坂口豊訳、パーソナルメディア、1993年)などに続く貴重な一冊である。先週(6月22日)、ミンスキーは来日して早稲田大学で「常識をもつロボットの実現に向けて――常識・思考・感情・自己とは何か」と題した講演を行った。その様子は森山和道さんの記名記事「機械で「心」を作る~「AIの父」ミンスキー氏が早稲田大学で講演」でうかがい知ることができる。

佐々木敦『ニッポンの思想』は待望の書き下ろし。類書は多いが、「日本の現代思想」についての入門書の中で出色の一冊になるだろう。ニューアカ全盛期をナマで体験し、なおかつ自らもその当時、ニューアカ以後の若い世代としてデビューしていた佐々木さんは、いわばサブカルチャーとしての(ハイカルチャーでもマスカルチャーでもない)ニューアカ・ブームを一番ヴィヴィッドに語れる書き手だと思う。ブームの残照の中で読書経験をした私にとって、佐々木敦さんはたった4歳年上なだけなのに、はるか前方を走りつつ「今」の空気を活き活きと掴んで、こちらに様々なサインを送ってくれるとてつもないファストウォーカーだった。私は佐々木さんの熱心なフォロワーではなかったけれど、当時自分なりにたどりついた様々な場所で佐々木さんの足跡を見つけるたび、驚きと感激を覚えた。佐々木さんは今なおファストウォーカーであり続けているわけで、ただただ感嘆するほかはない。

ミンスキー同様、大学者の割に訳書が少ない、東南アジア研究の権威ベネディクト・アンダーソン(1936‐)の『ヤシガラ椀の外へ』は、日本語版オリジナル本。版元ウェブサイトでは次のように内容が紹介されている。「学問と向き合うとはどういうことか、研究では何が重要なのか……。所属する組織やディシプリンというヤシガラ椀に安住せず、知的冒険精神を大切にする。自分が答えを知らない疑問から出発し、異質な世界にさらされることで感覚を研ぎ澄ませる。執筆時には読み手を思い浮かべ、ジャーゴン(専門用語)から自由になる勇気を持つ。何より、対象地域への愛情や不断の好奇心が研究への原動力となる。『想像の共同体』の著者が、地域研究、比較研究の軌跡や学問的制度の変遷を振り返りつつ、研究のスタート地点に立つ日本の若い読者に向けて綴る」。自身の研究スタンスと信条を惜しみなく開陳する魅力的な本だろう。

アンダーソンの既訳書には以下のものがある。『想像の共同体』(白石隆+白石さや訳、リブロポート、1987年/増補版、同訳、NTT出版、1997年/定本版、同訳、書籍工房早山、2007年)、『言葉と権力』(中島成久訳、日本エディタースクール出版部、1995年)、『比較の亡霊』(糟谷啓介ほか訳、作品社、2005年)、『ベネディクト・アンダーソン グローバリゼーションを語る』(梅森直之編訳、光文社新書、2007年)。このうち、最後の一冊は、今回の新刊同様、日本語版オリジナル本である。

クリッチリー『哲学者たちの死に方』は、『ヨーロッパ大陸の哲学』(佐藤透訳、岩波書店、2004年)に続く、待望の訳書第二弾。サイモン・クリッチリー(1960-)はイギリスの哲学者で、まだ日本にはあまり知られていないが、ヨーロッパ現代思想(とりわけレヴィナスやデリダ)の遺産を継ぐ注目株だ。『哲学者たちの死に方』は版元ウェブサイトの紹介文によれば、「哲学者たちはどう死んでいったのか。そこから見える哲学の真実と、死への向き合い方に学ぶため、古代から現代まで190人以上の哲学者の臨終を描く、かつてなかった、そして待ち望まれていた書」とある。

熊倉功夫『現代語訳 南方録』は、版元ウェブサイトの紹介文によれば、「わび茶の思想を最もよく伝える秘伝書の初の全訳。原文・図版を忠実に再現したうえで、茶の湯の碩学が対訳を施し、項目ごとに用語・人物について丁寧な注釈と解説を付した画期的な書」。熊倉さんには『南方録を読む』(淡交社、1983年)という著書もある。

堤清二さんと三浦展さんの対談本『無印ニッポン―20世紀消費社会の終焉』は、版元こそ違え、堤さんが辻井喬名義で上野千鶴子さんと対談した『ポスト消費社会のゆくえ』(文春新書、2008年)に続く、、セゾン盛衰史検証対談本の第二弾に位置づけうるだろう。周知の通り、三浦さんはパルコのマーケティング部門であるアクロスにかつて所属し、消費社会の変容を追い続けてきたかたである。上野さんと違うのは、三浦さんは内部の人間だったということ。そして、今回は堤さんがペンネームではなく実名で本を出しているのも特徴的だ。西武とパルコは似ているようでまったく別の「文化」を有している。今回の新刊ではそのあたりもはっきり見えてくるだろう。堤対談本はこの先も色々企画されうるのではないか。保坂和志さんとの対談とか。

『カルパッチョ』は、セールの訳書を『ライプニッツのシステム』(朝日出版社、1985年)を除いて継続的に刊行し続けてきた法政大学出版局の成果のひとつ。法政大学出版局がほぼ一手に扱ってきた海外の研究者には哲学者のセールのほかにも、社会学者のエリアスや歴史家のデュル、科学史家のカンギレムなどがいるが、こうした律儀な付き合いは「編集者が変われば新刊の傾向も変わる」のを宿命としている出版業界ではなかなかできないことだ。今月の同局の新刊もすごい。ジョージ・スタイナー『バベルの後に(下)』(亀山健吉訳)、ゲルショム・ショーレム『サバタイ・ツヴィ伝』(上下巻、石丸昭二訳)といった大物が出たばかりだし、まもなくユルゲン・ハーバーマスの《911》以後の発言を収めた『引き裂かれた西洋』(大貫敦子ほか訳)が発売になる。

発売日未詳だが、7月新刊には以下の書目も見える。

『建築する動物たち』マイク・ハンセル 青土社 2520円
『日本の写真家100人―ジャパニーズ・フォトグラファー・ファイル 完全保存版』INFASパブリケーションズ 1801円
『日本の図像 神獣霊獣』ピエ・ブックス 3990円
『帝国と美術―帝国日本の対外美術戦略』五十殿利治編 国書刊行会 8190円
『ピエロ・デッラ・フランチェスカ〔新装版〕』アンリ・フォション 白水社 3150円
『楽園創造―書割スイス文化史』ダニエル・シュミットほか 平凡社 7350円
『食品偽装の歴史』ビー・ウィルソン 白水社 3150円
『食の安全―政治が操るアメリカの食卓』マリオン・ネッスル 岩波書店 2940円
『書棚と平台―出版流通というメディア』柴野京子 弘文堂 3360円

ピエ・ブックスはプロ御用達の美しいヴィジュアル資料本をこれまで数多く刊行してきた。来月は上記の『日本の図像 神獣霊獣』のほか、『世界の駅』『世界の空港』 といった写真集や『フランスの古い紙』などの新刊が出る。出版傾向は異なるが、ファンタジー系の便利な資料集や事典類を出し続けてきた新紀元社の8月新刊には古今東西の有名人の身長を比較した『身長文庫』や、「幻想的な単語を英仏独をはじめラテン・ギリシャ語まで10ケ国語で1200語以上紹介する」という『幻想ネーミング辞典』がある。
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by urag | 2009-06-28 20:35 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
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