2009年 04月 20日

ヨハネス・ケプラー『世界の調和』(1619年)、ついに完訳なる

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宇宙の調和

ヨハネス・ケプラー(1571-1630):著 岸本良彦(1946-):訳
工作舎 09年4月 本体10,000円 A5判上製624頁 ISBN978-4-87502-418-7

内容:地球を含む6つの惑星は、調和音を奏でながら太陽の周りを運動する。処女作『宇宙の神秘 Mysterium Cosmographicum』(1956年)で提唱した5つの正多面体による宇宙モデルと、ティコ・ブラーエとの共同研究により第1・第二法則をうち立てた『新天文学 Astronomia Nova』(1609年)の成果を統合し、第3法則を樹立した歴史的名著、それが『宇宙の調和 Harmonice Mundi』(1619年)である。ピュタゴラス、プラトンの音楽的調和に満ちた宇宙像を継承し、かつニュートン力学への端緒をひらいたケプラーの集大成にして、科学史の分水嶺に立つ偉大なる古典を、ラテン語原典から初完訳。ヨーロッパ思想史の至宝が約400年の時をへてここによみがえる。

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感動で鳥肌がたつ思いです。21世紀の初頭にまさかこうして完訳を手に出来るとは思いませんでした。しかも、『ライプニッツ著作集』を出した工作舎さんからですから当然造本も装丁も、愛蔵するに足る堂々とした出来栄えです。今回、同時に『宇宙の神秘』(大槻真一郎+岸本良彦訳)の新装版も刊行。『調和』は『神秘』の倍のお値段なので安くはありませんが、購読する人を選ぶでしょうから仕方ありません。

これまでに刊行された『宇宙の調和』の抄訳には以下のものがあります。

「世界の調和」島村福太郎訳、『世界大思想全集 社会・宗教・科学篇第31巻 ガリレオ/ケプラー』所収、河出書房新社、1963年、123-293頁。
マックス・カスパーによる独訳からの重訳で、抄訳になります。題辞、ヤコブ皇帝への献辞、第一巻~第三巻のまえがきのみ、第四巻~第五巻全体が訳されています。また、この第31巻にはケプラーの『新しい天文学』も同じく独訳からの重訳で同氏により抄訳されており、さらにガリレオの『星界の報告』と『太陽黒点論』がイタリア語から山田慶児さんと谷泰さん(表向きの訳者代表は薮内清さん)により訳出されています。古書市場ではかなり見つけにくい部類の本です。

「世界の和声学」、『原典による自然科学の歩み』(玉虫文一+木村陽二郎+渡辺正雄編著)所収、講談社、1974年、64-78頁。
マックス・カスパーによる独訳からの重訳で、抄訳になります。訳者名は明記されていませんが、ケプラーを含む第一章「宇宙」の執筆者は渡辺正雄さんです。訳されているのは、第五巻のまえがきと第三章の途中までです。第三章の途中までというのは、工作舎版『調和』で言うと、424頁の「第9」の手前まで。講談社の「原典による学術史」シリーズのなかには、自然科学のほかに(以下を「原典による○○の歩み」の○○に当てはめてください)、哲学、歴史学、教育学、心理学、社会学、経済学、法学、がありました。現在すべて品切。学術文庫で文庫化されたのは、歴史学(『原典による歴史学入門』1982年)、心理学(『原典による心理学入門』1993年)と、『原典による自然科学の歩み』の第三章「生命」を独立させた木村陽二郎『原典による生命科学入門』(1992年)ですが、いずれも現在品切。

また、ケプラーの著書の既訳には以下のものがあります。
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ヨハネス・ケプラー『ケプラーの夢』渡辺正雄+榎本恵美子訳、講談社、1972年/講談社学術文庫、1985年。遺稿である月世界旅行記Somnium(1634年)の翻訳。人類初の月旅行SFです。悲しいことに品切。

ヨハネス・ケプラー『宇宙の神秘』大槻真一郎+岸本良彦訳、工作舎、1982年初版(函入)/1986年新装版(カバー装)/2009年新装版(カバー装)。09年の新装版は奥付では新装版第三刷となっています。お値段は据え置きのまま4800円(税別)というのがとても良心的。この値段から比較すると、読者にとって受け入れやすい『調和』の値段は6800円~7800円といったところだったのでは、という気がします。

ケプラーやケプラー以前/以後の「天体の数学的音楽的調和」論については、以下の文献が参考になります。

渡辺正雄編著『ケプラーと世界の調和』、共立出版、1991年。
E・J・エイトン著『円から楕円へ――天と地の運動理論を求めて』渡辺正雄監訳、共立出版、1983年。
アリストクセノス「ハルモニア原論」、プトレマイオス「ハルモニア論」、山本建郎訳『古代音楽論集』所収、西洋古典叢書(京都大学学術出版会)、2008年。
山本建郎『アリストクセノス『ハルモニア原論』の研究』、東海大学出版会、2001年。
名須川学『デカルトにおける〈比例〉思想の研究』、哲学書房、2002年。
今道友信編『精神と音楽の交響――西洋音楽美学の流れ』、音楽之友社、1997年。
中村雄二郎『精神のフーガ――音楽の相のもとに』、小学館、2000年。
S・K・ベニンガー・Jr『天球の音楽――ピュタゴラス宇宙論とルネサンス詩学』山田耕士ほか訳、平凡社、1990年。
ジェイミー・ジェイムズ『天球の音楽――歴史の中の科学・音楽・神秘思想』黒川孝文訳、白揚社、1998年。
ジョスリン・ゴドウィン『星界の音楽』斉藤栄一訳、工作舎、1990年。
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by urag | 2009-04-20 02:28 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
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