2008年 11月 10日

注目新刊:ホッブズ『市民論』、京都大学学術出版会

「西洋古典叢書」の継続によって人文書の世界におそらく百年に一度あるかどうかという大きな足跡を残しつつある京都大学学術出版会が、「近代社会思想コレクション」という魅力的なシリーズを先月からスタートさせました。第一回配本はなんとホッブズの『市民論』です。

a0018105_4493969.jpg市民論
トマス・ホッブズ(1588-1679):著 本田裕志(1956年生まれ、龍谷大学文学部教授):訳
京都大学学術出版会 08年10月 本体3,900円 四六上製478頁 ISBN978-4-87698-753-5
■版元紹介チラシより:本書は、トマス・ホッブズの主著のひとつ『市民論(De Cive)』(1642年)の全訳である。Oxford Clarendon Pressから刊行された最新のラテン語版(Howard Warrender, 1983)を底本とし、これから直接に日本語に訳したものである。長年にわたって訳者は本書の翻訳に取り組み、その訳は極めて正確なものと賞賛できる。ホッブズのもうひとつの著書『リヴァイアサン』(1651年)が既に何度か翻訳が刊行されているのに対して、本書は未だ邦訳に恵まれていない。近代の自然法思想の展開においてホッブズの思想を正確に理解することは不可欠であるが、『リヴァイアサン』に至るホッブズ自身の政治思想の形成をみる上でも、『市民論』は重要な意味をもっており、本書の邦訳が刊行されることは、わが国におけるヨーロッパ近代思想研究(哲学、法学、政治学を含む)に資するところは大である。

■目次
献辞
読者に向けての序文

自由
 第1章 市民社会のない人間の状態について
 第2章 契約に関する自然の法について
 第3章 その他の自然の法について
 第4章 自然法は神の法であること
命令権
 第5章 国家の原因および起源について
 第6章 国家において最高権力を持つ会議体ないし一人の人物の権利について
 第7章 国家の三つの種類、民主制・貴族制・君主制について
 第8章 奴隷に対する主人の権利について
 第9章 子供に対する親の権利について、ならびに世襲王権について
 第10章 三種類の国家の各々が持つ不利な点に関しての比較
 第11章 王権に関して、右の主張を支持するように思われる聖書の箇所と原文
 第12章 国家を解体する内的諸原因について
 第13章 最高命令権を司る人々の職務について
 第14章 法と犯罪について
宗教
 第15章 自然をつうじての神の王政統治について
 第16章 旧い契約による神の王政統治について
 第17章 新しい契約による神の王政統治について
 第18章 天国へ入るために必要なことについて

解説
索引 

★『市民論』(1642年)は、ホッブズの思想体系を示す『哲学原本 Elementa Philosophiae』三部作のうち、第三部になります。第一部『物体論』(1655年)や第二部『人間論』(1658年)は、『市民論』や『リヴァイアサン』(1651年)のあとに公刊されました。訳者による「解説」には、「〔『市民論』の〕k受容の度合いと評価を見極めたうえで、実行可能という目途が立てば、続いて『物体論』を、最後に『人間論』を翻訳・刊行する、という方針をとることにした」と書かれています。素晴らしいことだと思います。

★弊社でも『市民論』をはじめとする哲学要綱三部作の翻訳を刊行する予定が以前からありますが、まだ刊行時期は決まっていません。ぜひ実現させたいと思います。

★京都大学学術出版会の「近代社会思想コレクション」は、「近代市民社会の成立を原典から読む」という趣旨のシリーズで、今後年一回から二回の配本ペースで進むようです。第二回配本はユストゥス・メーザーの『郷土愛の夢』、第三回はフランシス・ハチスンの『道徳哲学序説』と予告されています。『市民論』のチラシによれば、さらにそのあとには、以下の思想家たちが登場するようです。

16世紀:スアレス、ヴィトリア、リプシウス、オットマン、トーマス・スミス、フォーテスキュー。
17世紀:グロティウス、プーフェンドルフ、ボダン、エドワード・クック、ベイコン、フィルマー、ホッブズ、ハリントン、カンバーランド、ロック、シドニ、モリヌークス、モールズワース、ガッサンディ、テンプル、アンドルー・フレッチャー。
18世紀:コリンズ、トーランド、クラーク、アディスン/スティール、ボリングブルック、トレンチャード/ゴードン、マンデヴィル、シャーフツベリ、バークリ、ムロン、ハチスン、ターンブル、ヒューム、フィールディング、ケインズ、ファーガスン、ロバートスン、ミラー、D・ステュアート、プライス、プルーストリ、エルヴェシウス、トマジウス、メーザー、ヴァッテル、ジェームズ・バー。
19世紀:コールリッジ、コンスタン、シュタール夫人、ベンサム、ミル、ジョン・テイラー、ラスキン。

実に壮観ですね。このうちのいくつかは弊社でも類似企画がありますが、京大出版会さんの大きな背中を励みにしながらがんばりたいと思います。
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by urag | 2008-11-10 04:18 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
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