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2008年 10月 17日

注目新刊:『カルデロン演劇集』

a0018105_22205577.jpgカルデロン演劇集
ペドロ・カルデロン・デ・ラ・バルカ(1600-1681):著 佐竹謙一(1949-):訳
名古屋大学出版局 08年9月 本体6,600円 A5判上製508頁 ISBN978-4-8158-0597-5

■帯文より:人生の深淵をのぞかせる、色彩渦巻くバロック演劇の精華。シェイクスピアにも比される、スペイン黄金世紀を代表する劇作家カルデロン。哲学劇『人生は夢』をはじめ、宗教劇・歴史劇・喜劇・名誉の悲劇等、多彩かつ豊穣な世界を凝縮した初の本格的選集。

■目次より:
はじめに

十字架への献身
イングランド国教会分裂 ◆
淑女「ドゥエンデ」
四月と五月の朝 ◆
密かな恥辱には密かな復讐を ◆
人生は夢
驚異の魔術師
不名誉の画家 ◆

解説 カルデロンの演劇  
あとがき

★訳者の佐竹さんはかつて、「驚異の魔術師」と「淑女ドゥエンデ」をあわせた一冊を平凡社ライブラリーから刊行していました(『驚異の魔術師』97年4月)。今回この二篇は改稿されて『演劇集』に収録されています。カルデロンの演劇を収めた手ごろな本にはこのほかに、高橋正武訳『人の世は夢・サラメアの村長』岩波文庫、78年刊)があります。120作現存するというカルデロンの戯曲のうち、「サラメアの村長」はかつて森鴎外も訳していますが、トータルの数としては翻訳はさほど多くはありません。◆印は本邦初訳です。

★「人生は夢」より、主人公セヒスムンド王子の台詞、第二幕の最終場面。315-316頁:しょせん人は、生きることは夢を見ているに過ぎないという特異な世界にいるわけだし、おれはおれで、生きている人間は目を覚ますまでその生き様を夢で見ているのだということを身をもって学ばせてもらった。・・・この世では誰もがみんなそれとは気づかずに、それぞれの生き様を夢で見ている・・・人生とは何だ? 狂乱だ。人生とは何だ? まやかし、影、幻だ。この上ない幸せとてちっぽけなものだ。人生はすべてが夢だ。夢はしょせん夢なのだ。

★「人生は夢」より、主人公セヒスムンド王子の台詞、第三幕の最終場面。332頁:偉大な勝利をおさめようと血気にはやるものの、今はおのれに打ち勝つことがもっとも崇高な勝利。

★上記別訳(高橋正武訳「人の世は夢」、岩波文庫78年刊、119頁):勇気を奮えば、大小の勝利は勝ち取れるとはいうものの、きょう勝ちとらねばならぬもっとも気高い勝利とは、おのれに克つこと。

★上記別訳(田尻陽一訳「人生は夢」、『ベスト・プレイズ』白鳳社00年刊、254頁):勇気をふるえば、いかなる勝利も手に入れることはできるが、今日、おのれの欲望を抑えることが最高の勝利となる。〔ここでは田尻訳は文脈を踏まえて、「おのれに打ち克つ」を「おのれの欲望を抑える」と、より説明的に訳しています。訳書の比べ読みはとても面白いです。〕

★上記原文:
SEGISMUNDO:
 Pues que ya vencer aguarda
 mi valor grandes victorias,
 hoy ha de ser la más alta
 vencerme a mí.

★「人生は夢 La vida es sueño」の原文は、こちらで公開されています。

★スペイン文学の黄金世紀(16-17世紀)に活躍した文学者にはカルデロンのほかに、次の人々がいます。セルバンテス、ロペ・デ・ベーガ、ゴンゴラ、ケベード、グラシアン、など。
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by urag | 2008-10-17 22:23 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
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