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2008年 09月 22日

注目新刊:アガサンスキー『性の政治学』産業図書

a0018105_225517.jpg性の政治学
シルヴィアンヌ・アガサンスキー(Sylviane Agacinski, 1945-):著 丸岡高弘:訳
産業図書 08年9月 本体2,800円 46判上製272頁 ISBN978-4-7828-0165-9

■版元紹介文より:男性と女性が異なった性に属しているという事実を無視すると、必然的に男性中心主義の罠におちいってしまう。男性と女性の差異は自然に根拠をもっている。しかし社会の中でこの差異にどのような意味をあたえるかは交渉によって決定するしかない。だから「性の政治学」が必要なのである。

■原書:"Politique des Sexes", 1998/2001, Seuil.

■目次:
混成性(ミクシテ)にかんする補足〔第二版序文〕
前書き
差異
 人間の二元性
 差異のさまざまな表現
 自由と生殖能力
 男性的普遍性
親子関係
 アイデンティティと同性愛
 二重の起源
 プラトン対アリストテレス
政治
 戦争か政治か
 フランスにおける性的解放と旧弊さ
 平等
 男女同数制(パリテ)
訳者あとがき
人名索引

★写真の通りオビなしの本です。オビに慣れすぎてしまっている現代人にとってはやや素っ気ない感じですね。弊社でもオビなし本を作ったとき、「オビがありません」とお客様からお電話をいただくことがありました。それはさておき、アガサンスキーの本邦初訳本です。彼女の著作の日本語訳は、論文単位では『Anyplace』(NTT出版)での発表などがありますが、単独著の翻訳は初めて。デリダ以後のフランス現代思想を代表する哲学者の重鎮の一人で、社会科学高等研究院(EHESS)教授です。

★父親はポーランド移民。ドゥルーズのもとで学び、キルケゴール論で哲学者デビュー。デリダらとともに国際哲学コレージュの創設に関わり、創設後ほどない1984年には、ジャック・デリダとの間に「ダニエル」という名前の息子が生まれます。94年には政治家のリオネル・ジョスパンと結婚(ジョスパンは97年から02年、フランス首相を務めました)。

★アガサンズキーの著書には、78年『私語――ゼーレン・キルケゴールの思想と死』、94年『自我中心主義批判――他者の問い』、96年『ヴォリューム――建築における哲学と政治』、97年『性の政治学』(上記新刊)、00年『時の渡し守――近代性と郷愁』、02年『中断された日記――2002年1月25日~5月25日』、07年『性の形而上学』、07年『アンガージュマン』などがあります。

★ちなみにデリダと彼の寡婦であるマルグリットさん(旧姓オクチュリエ)は精神分析家との間に、「ピエール」と「ジャン」という二人の息子がいます(つまりデリダにはあわせて三人の息子がいるわけです)。前者は詩人で浩瀚なオッカム研究の書を博論で書いているピエール・アルフェリ。現在、デリダの遺族は遺稿管理の件でカリフォルニア大学と係争中と聞きます。詳しくはこちらの記事をご覧下さい。

★やや脱線しましたが、『性の政治学』はアガサンスキーが強く主張してきたパリテ(男女同数制:フランスにおいて議員数を男女同数と定める制度)の思想的根拠について詳しく書いたものだと言えます。「前書き」の書き出しはこうです、「こんなに本を書く意欲がたかまったことはなかった。わたしはなにもかんがえず、やりかけの仕事もほうりだしてとりかかった。まるで個人的な必要性にせまられたみたいに」(31頁)。彼女の論敵となったのは、政治家ロベール・バダンテールとその妻でフェミニズム思想家エリザベート・バダンテールでした。バダンテールによるアガサンスキー批判は『迷走フェミニズム』(新曜社、06年)で読むことができます。パリテ論争については、検索エンジンで引っかかってくる各種サイトをご覧下さい。

★「売春」について討論するアガサンスキーさんの動画

対論の相手は、保守的論調の『性の混乱』を昨年出版して話題を呼んだミシェル・シュネーデル。日本ではグールド論やプルースト論が翻訳されています。眼つきが怖い。
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by urag | 2008-09-22 22:06 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
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