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2008年 09月 17日

今週の注目新刊:ド・フォントネ『動物たちの沈黙』彩流社

動物たちの沈黙――《動物性》をめぐる哲学試論
エリザベート・ド・フォントネ:著 石田和男・小幡谷友二・早川文敏:訳
彩流社 08年9月 本体7,000円 A5判上製798頁 ISBN978-4-7791-1338-3

■帯文:《動物性》という観点から、約2500年にもわたる西洋思想史の断面を見事に切り取ってみせた画期的大著。
■原書:Le Silence des bêtes. La philosophie à l’épreuve de l’animalité, Paris, Fayard, 1999.

■著者:エリザベート・ド・フォントネ(Elisabeth de Fontenay, 1934-)哲学者。『マルクスのユダヤ的フィギュール』(1973年)、『ディドロあるいは魔法の唯物論』(1986年)、『プルタルコス「動物論三篇」における強者の論理』(1992年)、『千と一つのお祭り――宗教についての小講和』(2005年)、『まったくの別問題――ジャン=フランソワ・リオタールへの質問』(2006年)、『動物があなたを眺めるとき』(2006年)、『人類を攻撃せずに――動物問題についての考察』(2008年)など。

■訳者:
石田和男(1948-)横浜薬科大学講師。
小幡谷友二(1969-)中央大学、明治学院大学、立正大学非常勤講師。
早川文敏(1971-)京都産業大学、同志社大学、同志社女子大学非常勤講師。

★本日08年9月17日店頭発売開始。ド・フォントネは論文では翻訳がありましたが、単独著の日本語訳は本書が初めてです。親族をアウシュヴィッツ強制収容所で亡くしたと聞くド・フォントネは、「ユダヤ」を自らの研究の中核に置いてきた哲学者で、ショアー記憶財団のショアー教育委員会理事長を務められています。レヴィナスやデリダらに続く、20世紀フランスのユダヤ系知識人を代表する一人です。今回の新刊はまだ私は入手していませんが、上記リンク先の版元ドットコムさんから購入できますので、どうぞご利用ください。カード決済も可。

★補足情報:動物論はフランス現代思想における大きなトピックです。97年夏にスリジー=ラ=サルで開催されたデリダをめぐる大きなコロックも、主題は動物論でした(論文集『自伝的動物――ジャック・デリダの周辺』1999年、ガリレ刊を参照)。デリダが"L'animal que je suis"を発表したのはこの時です。参加者はジャン=リュック・ナンシー、フィリップ・ラクー=ラバルト、マルク・フロマン=ムーリス、ペーター・サンディ、マリ=ルイーズ・マレ、トマス・デュトイト(デュトワ)、ニコラス・ロイル、ヘント・デ・ヴリース、アキラ・ミズタ・リピット(リピット水田堯)、等々。ド・フォントネは出席していませんが、このコロックが国内外で大きな思想的インパクトを持っていたのは確かだろうと思います。この時のラクー=ラバルトの発表「忠実さ」は、郷原佳以さんの訳で、先日刊行された「現代詩手帖特集版2008:ブランショ生誕100年」に収録されています。

***

08年9月22日追記:

今週の注目新刊:ド・フォントネ『動物たちの沈黙』彩流社_a0018105_0433921.jpg★入手しました。カバーが本体より短い!とビビッていたら仕様でした。天の部分からのぞいている青い部分が本体です。印象的な装丁は宗利淳一さんによるもの。弊社でもお世話になっているデザイナーさんです。論創社さんの「ドイツ現代戯曲選」シリーズの装丁など、素晴らしいですよね。

★さて本書の魅力は、古代から現代までの西洋思想史を博捜するその展望の広さなのですが、それを伝えるには目次を転記するのが一番だろうと思います。しかし実際のところ、目次自体も本書のボリュームに比して、細かく長大なので、全20部構成の各部各章においてフィーチャーされている思想家たちを列記することで代えさせてください。序文、第1部、第20部は特にフィーチャーされている人物がいないので、それ以外の各部について記します。重複している名前もありますが、そのままを転記しています。

■目次:
序文
第一部:動物の無-言への歩み
第二部:仲介者たち
 ホフマンスタール/ドゥルーズ/フローベール/レヴィ=ストロース
第三部:変身と輪廻
 オウィディウス/ソクラテス以前の哲学者たち、そしてプラトン/プロティノス
第四部:さかさまの人間主義
 アリストテレス/ストア派/エピクロス派、ストア派/ルクレティウス
第五部:人間性の侵犯
 オルペウス教徒、キュニコス派、ピュタゴラス派/ポルピュリオス/プルタルコス/
第六部:ギリシア的な優しさ
 テオプラストス/プルタルコス/テオプラストス、プルタルコス/アレクサンドリアのフィロン/懐疑主義者
第七部:生贄の時代
 モース、バタイユ/古代ギリシア人/ユダヤ教
第八部:子羊の勝利
 キリスト教/クローデル、ブロワ
第九部:噛み合わない論争
 アウグスティヌス/デカルト/マルブランシュ/ベール
第一〇部:錯乱と夢
 ベーコン/ブージャン、デカルト、ライプニッツ/レペ、コンディヤック、ラ・メトリ、ルソー
第一一部:さまざまな境界
 モンテーニュ/シャロン/ガッサンディ、ラ・フォンテーヌ、ベルニエ/ロック/ライプニッツ
第一二部:ああ! でも人間は、人間はだね……
 ヒューム/ビュフォン/コンディヤック/ディドロ、モーペルチュイ/ラ・メトリ、エルヴェシウス
第一三部:苦しみと思考
 ブリエ/ルロワ/マンデヴィル、ルソー/メリエ/ヴォルテール
第一四部:再確立
 ルソー/ヘルダー/カント/フィヒテ/ヘーゲル
第一五部:似たものによる実験
 クロード・ベルナール/ダーウィン
第一六部:本来の意味と比喩的な意味
 ショーペンハウアー/ニーチェ/ミシュレ
第一七部:動物は世界をもっているか?
 フッサール/メルロ=ポンティ/ハイデガー
第一八部:存在あるいは他社の彼方に
 レヴィナス、ラヴァーター/アール、リシール、フランク、デリダ、ダストゥール/デリダ/デリダ
第一九部:重苦しい気分
 アドルノ、ホルクハイマー/デーブリーン、シンガー、グロスマン、プリモ・レヴィ
第二〇部:眠れる森の動物たち
訳者あとがき
人名索引

by urag | 2008-09-17 23:47 | 本のコンシェルジュ | Comments(0)


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