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2008年 08月 21日

8月26日発売:ドゥルーズ+パルネ『対話』河出書房新社

8月26日発売:ドゥルーズ+パルネ『対話』河出書房新社_a0018105_442593.jpg
対話
ジル・ドゥルーズ+クレール・パルネ:著 江川隆男+増田靖彦:訳
河出書房新社 08年8月 2,310円 46判268頁 ISBN978-4-309-24450-1
■帯文より:生成の地理学の問いへ。『アンチ・オイディプス』『千のプラトー』のエッセンスを凝縮し、新たな哲学的思考を提起する名著(旧題『ドゥルーズの思想』)の増補新訳。絶筆「現働的なものと潜在的なもの」所収。

★『ドゥルーズの思想』(田村毅訳、大修館書店、80年5月刊、写真中央)に、1995年の絶筆論考"L'actuel et virtuel"を加えた96年の文庫版Dialogueがフランスで刊行され(写真左)、その文庫版が今回翻訳されました。初版本の翻訳から数えて、28年ぶりの新訳です。

★ドゥルーズは本書についてこう述べています。「ドゥルーズがインタヴュアーの署名でドゥルーズを説明する」ということではなく、「ドゥルーズがあなたの署名でガタリを説明する」・・・ということである。そうなれば対談も真の〈機能〉をもったものとなるだろう」(34頁)。じっさい、本書の内容は、帯文にもある通り、ガタリとの共同作業のインパクトのもとに語られており、ガタリとの出会い前後のドゥルーズの思想形成を知る上でもっともホットな本だと思います。

★訳者の江川さんの解説「対話と折衝」で指摘されている通り、「本書のタイトルは『対話』であるが、実際はクレール・パルネとの共著という形態をとっている」。第一章から第四章まで、それぞれ二部制になっていて、第一章のみ第一部にドゥルーズのイニシャルが記され、第二部にはパルネのイニシャルが記されています。第二章以降はイニシャルはありませんが、第三章と第四章のそれぞれ第二部の途中にドゥルーズによる注記が挿入されているのを見ると、パルネが書いたものかもしれないとも思えますが、正確には分かりません。パルネがドゥルーズとの「対話」を彼女なりに整理してみた、といった印象があります。

★原著初版本の刊行は77年です。その二年前にパリで撮影された、ドゥルーズとパルネのツーショットが、ポンピドゥ・センターから2005年に刊行されたDeleuze, un albumに掲載されています(ISBN2-84426-294-5)。パルネさんはめっちゃかわいいというか、知的美人。ぴったり寄り添っているドゥルーズさんの表情が柔らかくて、二人の親密さが想像できます。このアルバム本は、彼の幼い子供時代から晩年までの写真が収められていて、見ていると何だか泣きたくなってくるようなノスタルジックな仕上がりになっています。

★先日も少し書きましたが、絶筆「現働的なものと潜在的なもの」は、飛び降り自殺の直前に発表された「内在――ひとつの生・・・」(『狂人の二つの体制 1983-1995』収録、河出書房新社)の続編と目されています。

***
河出書房新社さんでは、『対話』と同じ発売日8月26日に、以下の本も刊行します。

8月26日発売:ドゥルーズ+パルネ『対話』河出書房新社_a0018105_621229.jpg哲学者、怒りに炎上す。
ミシェル・オンフレ(1959-):著 嶋崎正樹:訳
河出書房新社 08年8月 1,575円 46判128頁 ISBN978-4-309-24449-5
■帯文より:現代フランス哲学の第一線で活躍する方から、怒りの声が届いております。フランス大統領選にツッコミを入れ、欧州憲法条約を手玉にとり、オカルト商売人を鼻で嗤い、同業の哲学者に当てこすり……。『〈反〉哲学教科書』の著者による、毒盛りまくりの時評集。

★帯文に偽りなしの痛快な毒舌本です。印象的なカバーイラストは100%ORANGEさん。原書は一昨年(2006年)にガリレから出版されたTraces de feux furieuxです。

★辛口批評を下す相手の実名をモロに書いていて、その舌鋒たるや、まさに一刀両断の瞬殺剣。たとえば「ケルヒャー掃除機の不毛な議論」と題したエッセーでは、05年11月の郊外暴動を論評する一線の思想家・批評家たちを一挙にぶぁさーっとなぎ倒しています。ジャック・アタリ、ベルナール=アンリ・レヴィ、アラン・バディウ、カレール・ダンコース、ジャン・ボードリヤール、アンドレ・グリュックスマン、アラン・フィンケルクロート、レジス・ドゥブレ、フィリップ・ソレルス、マレク・シェベル、ダニエル・シボニー。訳者の嶋崎さんのノリのいい翻訳が光ります。他のエッセイでも、ジョルジョ・アガンベン、ピーター・シンガー、リュック・フェリーなどが「餌食」になっています。特にフェリーのベストセラー『生きることを学ぶ』への「口撃」は見事で、思わず吹き出してしまいます。

★訳者あとがきによれば、オンフレさんが2004年に来日した折、訳者の嶋崎さんに「ソクラテスを取り上げて語っている女性哲学者がいると聞いたのだけれど、知らないか?」と質問され、嶋崎さんはあとになってから池田晶子さんのことだと気づいた、とのことです。その後池田さんは急逝され、二人を引き合わせることができなかったのが「痛恨の極み」と。確かにそれは残念ですね。

★ミシェル・オンフレ(Michel Onfray, 1959-)既訳書
98年01月『哲学者の食卓』幸田礼雅訳、新評論 ※「オンフレイ」と表記。
04年11月『〈反〉哲学教科書』嶋崎正樹訳、NTT出版

by urag | 2008-08-21 05:38 | 本のコンシェルジュ | Comments(0)


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