ウラゲツ☆ブログ

urag.exblog.jp
ブログトップ
2008年 08月 10日

【公開版】今週の注目新刊(第10回[第159回]:08年8月10日)

a0018105_652811.jpg影の歴史
ヴィクトル・I・ストイキツァ:著 岡田温司・西田兼:訳
平凡社 08年8月 A5判328頁 ISBN978-4-582-70270-5
■帯文より:絵画の歴史は事物の影をなぞることから始まったにもかかわらず、美術史学が影の歴史を主題的に扱うことはなかった。本書はその歴史の包括的検証に大胆に挑んだ瞠目の力業。「影」は文字どおり絵画の陰画であり、それはもうひとつの絵画史を形成する。影の人類学の誕生。
■訳者あとがきより:ゴンブリッチ〔『影――西洋美術における投影された影の描写』1995年、未訳〕やバクサンドール〔『影と啓蒙』1995年、未訳〕といった美術史学の巨匠の向こうを張って、ストイキツァがなぜあえて、ほかでもなく「影」というテーマにチャレンジしたのかはいまや明らかだろう。そして、狙いはたしかに的中した。美術史や美学はもちろん、神話、文学、哲学、博物学、魔術、科学し、心理学など、「影」とその表象に関連しておよそ考えられうるあらゆる領域を自在に横断しながら、著者は、たんに美術作品の解釈に終わらない「影の人類学」を、本書で初めて打ち立てることに成功しているのである。
■原書:"A Short History of the Shadow", 1997, London: Reaktion Books.

★まもなく発売。絵画史に新次元を開く労作です。ストイキツァが「影」に着目する一方、先達の美術史家ダミッシュ(1928-)は「雲」に着目しました。来月刊行予定のユベール・ダミッシュ『雲の理論――絵画史への試論』(松岡新一郎:訳 法政大学出版局 予価4,515円 ISBN978-4-588-00896-9)にも注目したいところ。

★ヴィクトル・I・ストイキツァ(ストイキッツァ:1949-)既訳書
2001年06月『絵画の自意識――初期近代におけるタブローの誕生』岡田温司・ 松原知生訳 ありな書房
2006年06月『ピュグマリオン効果――シミュラークルの歴史人類学』松原知生:訳 ありな書房
2003年02月『ゴヤ――最後のカーニヴァル』アンナ・マリア・コデルク:共著 森雅彦・松井美智子:訳 白水社

阿片帝国・日本
倉橋正直(1943-):著
共栄書房 08年8月 2,100円 46判236頁 ISBN978-4-7634-1034-4
★戦前の日本が阿片、モルヒネ、ヘロインなどを大量に、中国や朝鮮をはじめとするアジア諸国に長期間密輸し続けた事実を丹念に追って、戦後の日本が隠蔽し続けてきた歴史を暴く、というもの。著者は現在、愛知県立大学教授。関連する著書に『日本の阿片戦略――隠された国家犯罪』(共栄書房、1996年09月/2005年11月)や『日本の阿片王――二反長音蔵とその時代』(共栄書房、2002年08月)があります。

ヨーロッパ的普遍主義――近代世界システムにおける構造的暴力と権力の修辞学
イマニュエル・ウォーラーステイン(1930-):著 山下範久:訳
明石書店 08年8月 2,310円 46判192頁 ISBN978-4-7503-2825-6
■版元紹介文:人権や民主主義、市場の優越性や競争の自明性、科学的実証性など、現代社会において自明と思われている概念は、不平等の構造を拡大・深化させるレトリック、「普遍主義」という暴力に支えられているのではないか。――16世紀から21世紀の現在までを貫く暴力を、世界システム論に基づいて具体的に検証し、その臨界性を指ししめすウォーラーステインの新たな展開。

★イマニュエル・ウォーラーステイン(1930-)既訳書

単独著
1969年11月『大学闘争の戦略と戦術』公文俊平:訳 日本評論社
1981年07月『近代世界システム――農業資本主義と「ヨーロッパ世界経済」の成立(1)』川北稔:訳 岩波書店(再刊:2006年10月)
1981年10月『近代世界システム――農業資本主義と「ヨーロッパ世界経済」の成立(2)』川北稔:訳 岩波書店(再刊:2006年10月)
1985年03月『史的システムとしての資本主義』川北稔:訳 岩波書店(新版:1997年08月)
1987年04月『資本主義世界経済(1)中核と周辺の不平等』藤瀬浩司ほか:訳 名古屋大学出版会
1987年10月『資本主義世界経済(2)階級・エスニシティの不平等、国際政治』日南田静真:監訳 名古屋大学出版会
1991年09月『ポスト・アメリカ――世界システムにおける地政学と地政文化』丸山勝:訳 藤原書店
1991年12月『世界経済の政治学――国家・運動・文明』田中治男ほか:訳 同文館出版
1993年06月『近代世界システム 1600-1750――重商主義と「ヨーロッパ世界経済」の凝集』川北稔:訳 名古屋大学出版会
1993年09月『脱=社会科学――19世紀パラダイムの限界』本多健吉・高橋章:監訳 藤原書店
1997年07月『近代世界システム 1730-1840――大西洋革命の時代』川北稔:訳 名古屋大学出版会
1997年10月『アフター・リベラリズム――近代世界システムを支えたイデオロギーの終焉』松岡利道:訳 藤原書店(新版:2000年05月)
1999年11月『ユートピスティクス――21世紀の歴史的選択』松岡利道:訳 藤原書店
2001年03月『新しい学――21世紀の脱=社会科学』山下範久:訳 藤原書店
2002年06月『時代の転換点に立つ――ウォーラーステイン時事評論集成 1998-2002』山下範久:編訳 藤原書店
2003年06月『世界を読み解く 2002-2003』山下範久:訳 藤原書店
2004年09月『イラクの未来――世界を読み解く'04』山下範久:訳 藤原書店
2004年09月『脱商品化の時代――アメリカン・パワーの衰退と来るべき世界』山下範久:訳 藤原書店
2006年10月『入門・世界システム分析』山下範久:訳 藤原書店

共著
1991年06月『ワールド・エコノミー』山田鋭夫ほか:訳 藤原書店(再刊:2002年09月)
1992年01月『長期波動』山田鋭夫ほか:訳 藤原書店(再刊:2002年09月)
1992年08月『反システム運動』G・アリギ/T・ホプキンス:共著 太田仁樹:訳 大村書店(再刊:1998年10月)
1995年12月『人種・国民・階級――揺らぐアイデンティティ』E・バリバール:共著 若森章孝ほか:訳 大村書店(再刊:1997年03月)
1996年11月『社会科学をひらく』グルベンキアン委員会:共著 山田鋭夫:訳 藤原書店
1999年06月『転移する時代――世界システムの軌道 1945-2025』丸山勝:訳 藤原書店
1999年12月『『地中海』を読む』藤原書店編集部:編 藤原書店
2002年09月『世界システム論の方法』山田鋭夫ほか:訳 藤原書店
2003年03月『入門・ブローデル』浜名優美:監修 藤原書店
2006年04月『開かれた歴史学――ブローデルを読む』浜田道夫ほか:訳 藤原書店

★明石書店ではウォーラーステインの上記新刊に続いて、今月(08年08月)中旬には以下の新刊も刊行する予定です。要注目です。

政治的なものについて――闘技的民主主義と多元主義的グローバル秩序の構築
シャンタル・ムフ:著 酒井隆史:監訳 篠原雅武:訳 四六判224頁 本体2500円 ISBN978-4-7503-2819-5
※副題の「闘技的」の原語はagonisticで、討議的の誤植ではありません。
内容:「左派右派をこえて」「コスモポリタン民主主義」というかけ声のもと、時代遅れのものとして無視されるようになった政治的な敵対性。しかし、右翼ポピュリズムの台頭やテロリズムの続発からもあきらかなように、それはネオリベラリズムのヘゲモニー下でむしろ激化している。「政治的なもの」の欠乏に抗して多元主義的民主主義の可能性を探究する理論的思考の到達点。
「1990年代という、リベラル民主主義の最終的勝利と「新世界秩序」の到来が歓呼された時期のあと、新しい敵対性が出現しつつある。この新しい敵対性がつきつけてくる難問の本質を理解するためには、権力と主権性とヘゲモニーとを乗り越える宥和した世界という夢を捨て去り、「政治的なもの」の次元を認識していく必要がある。民主主義のプロジェクトを擁護しながら徹底化するためには、そうする以外にない」(本書第六章より)。

書影追加します【08年8月19日】
a0018105_343503.jpg

[PR]

by urag | 2008-08-10 03:32 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : http://urag.exblog.jp/tb/7386258
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。


<< 書店員ナイト@カロブックショッ...      新規開店情報:月曜社の本を置い... >>