「ほっ」と。キャンペーン
2008年 07月 06日

【公開版】今週の注目新刊(第5回[第154回]:08年7月6日)

ドゥルーズ キーワード89
芳川泰久(1951-)+堀千晶(1981-):著
せりか書房 08年7月 2,100円 四六判並製266頁 ISBN978-4-7967-0283-6
■版元紹介文より:「欲望」「戦争機械」「器官なき身体」「ノマド」など哲学・文学批評・美学・倫理・政治哲学の諸領域を横断する89の基本概念を簡潔・明快に解説したドゥルーズ哲学への最良の入門書(詳細なビブリオグラフィを付す)。
★『ドゥルーズ――没後10年、入門のために』(河出書房新社、05年10月)、『ドゥルーズ/ガタリの現在』(平凡社、08年1月)などに続く、十周忌以後の注目のドゥルーズ論。フランス現代思想の中でも、とりわけドゥルーズを研究している日本人の層は、他の思想家に比べて厚いのではないでしょうか。昨年1月には、フランスのラルマッタン社から、白仁高志(1956-)さんの博士論文『ドゥルーズと内在の哲学』が刊行されています。

議論好きなインド人――対話と異端の歴史が紡ぐ多文化世界
アマルティア・セン(1933-):著 佐藤宏+粟屋利江:訳
明石書店 08年7月 3,990円 46判686頁 ISBN978-4-7503-2795-2
■帯文より:神秘主義でも、宗教原理主義でも、核兵器でも、IT産業や暗算力でもない、3000年の歴史に探る民主主義の水脈。ノーベル経済学賞受賞者が解き明かす真に学ぶべきインド。
★センの訳書の中で一番の大著が、彼の専門の厚生経済学ではなく、インド文化論だというのが面白いですね。アジアにおける多文化主義を考える上で、日本人にとっても啓発的な文献であると評価されるようになるのではないかと思います。

新宿駅最後の小さなお店ベルク――個人店が生き残るには?
井野朋也(1960-):著
ブルース・インターアクションズ 08年7月 1,680円 46判並製259頁 
ISBN978-4-86020-277-4
■版元紹介文より:新宿駅徒歩15秒、日本一の立地にあるインディーズ・カフェ「ベルク」。 「新宿」らしさを残しつつ、時代とともに変化し、サバイブしてきた店の歴史とチェーン店にはない創意工夫、ユニークな経営術が、この一冊で全てわかる。個人店がどのように生き残るかのヒントも満載。外食業コンサルタント押野見喜八郎による解説「個人店に必要なフィロソフィ」付き。
★かなり赤裸々にざっくばらんに舞台裏が書かれていて、思わず引き込まれる本です。理不尽な立ち退き要請に対峙する「現在」に言及した最終章には釘付けになります。井野さんの柔らかだけれど芯のある筆運びが実に魅力的です。帯文にある久住昌之さんの「ずっとずっとここにあって欲しい」という言葉が胸に沁みます。

***

◎今週の「別腹」

★今週は「古典」ものに収穫多し。
★まず西洋古典では、田川建三さんの驚異の個人訳『新約聖書』の第一巻「マルコ福音書/マタイ福音書」(作品社)、阿刀田高さんの『プルタークの物語』(上巻、潮出版社)。田川版『新約聖書』は07年8月の第三巻「パウロ書簡 その1」に続く第二回配本。阿刀田版「英雄伝」は月刊誌『潮』の連載を単行本化したもの。
★続いて東洋古典では、徳間文庫「中国の思想」シリーズの『老子・列子』(奥平卓:訳/大村益夫:訳)と、同文庫の『陽根譚――中国性史』(土屋英明:編訳)。さらに河出文庫では、『現代語訳 雨月物語・春雨物語』(上田秋成1734-1809:著、円地文子:訳)。同文庫では85年に水木しげるさんのイラスト付の『水木しげるの雨月物語』が刊行されていて、二点一緒に買っても千円ちょっとです。
★最後に軍略ものでは、『新陰流軍学「訓閲集」』(上泉信綱1508-1582:伝、赤羽根大介:校訂、スキージャーナル)と、『クラウゼヴィッツのナポレオン戦争従軍記』(クラウゼヴィッツ1780-1831:著、金森誠也:訳、ビイング・ネット・プレス)。前者は版元紹介文によれば、「日本最初の兵法書『訓閲集』を初めて公開。ここには、戦陣の組み方、太刀・槍の使い方、馬上での戦い方、武器・武具、城の攻め方・守り方、さらには築城法、吉凶の知り方、諜報つまりスパイ活動の方法まで、戦国時代の戦いに関するすべてが具体的に描かれている」とのことです。こちらで立ち読み可能。後者の訳者である金森誠也さんは自著『「霊界」の研究――プラトン、カントが考えた「死後の世界」』(PHP文庫、親本は同社06年刊『人間は霊界を知り得るか』)が発売されたばかりです。

★マックス・ウェーバーをめぐる羽入=折原論争に新展開です。羽入辰郎(1953-)さんがついに沈黙を破って500頁以上の大冊『学問とは何か――『マックス・ヴェーバーの犯罪』その後』を刊行。論争のきっかけとなった羽入本は『マックス・ヴェーバーの犯罪――『倫理』論文における資料操作の詐術と「知的誠実性」の崩壊』(ミネルヴァ書房、02年9月)。折原浩(1935-)さんによる批判は『ヴェーバー学のすすめ』(未來社、03年11月)。同氏の羽入批判の関連書は『大衆化する大学院――一個別事例にみる研究指導と学位認定』(未來社、06年10月)。なお、羽入さんは上記二点の間に、PHP新書で『マックス・ヴェーバーの哀しみ――一生を母親に貪り喰われた男』(07年11月)を刊行されています。

★自伝『スターリンとヒットラーの軛のもとで――二つの全体主義』(林晶:訳、ミネルヴァ書房)が翻訳されたマルガレーテ・ブーバー=ノイマン(1901-1989)は、ナチス強制収容所のサバイバー。訳書に『カフカの恋人ミレナ』(平凡社ライブラリー、93年11月)、『第三の平和』(全二巻、共同出版社、1954年)があります。

★人文書院の「叢書文化研究」第六弾は、太田好信(1954-)さんの『亡霊としての歴史――痕跡と驚きから文化人類学を考える』。同叢書のこれまでの既刊書は以下の通り。
01年2月:太田好信『民族誌的近代への介入――文化を語る権利は誰にあるのか』
01年3月:古谷嘉章『異種混淆の近代と人類学――ラテンアメリカのコンタクト・ゾーンから』
03年1月:ジェイムズ・クリフォード『文化の窮状――二十世紀の民族誌、文学、芸術』
04年5月:川橋範子『混在するめぐみ――ポストコロニアル時代の宗教とフェミニズム』
04年12月:ジェイムズ・クリフォード『人類学の周縁から――対談集』
[PR]

by urag | 2008-07-06 02:29 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : http://urag.exblog.jp/tb/7281454
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。


<< 「週刊新潮」7月10日号に『洲...      【公開版】今週の注目新刊(第4... >>