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2008年 06月 09日

グールド『人間の測りまちがい』(河出文庫)より

河出文庫の今月の新刊、グールド『人間の測りまちがい』より

1967年の夏、ユダヤ人街での大暴動の後、三人の医者が有名な『アメリカ医学協会誌』に手紙を書き送っている(ショロバー、1979年に引用)。

「何百万というスラム街の住民のうちわずかな人たちが暴動にかかわったこと、また、これらの暴徒のごく一部が放火、狙撃、暴行をほしいままにしたことを認識する必要がある。が、もし、スラムの状況だけが暴動を起こさせ、その発端となったのであれば、どうしてスラムの大多数の住民が(自らの)押さえ切れない暴力の誘惑に抵抗できたのだろうか。平和を好む彼らの隣人たちと違った何かが、この暴動に加わったスラムの住民にはあるのだろうか」

我々は自分の専門分野から物事を一般化する傾向がある。この三人の医者たちは精神外科医である。しかし、絶望的になり、落胆しきった人々の暴力行為をどんな根拠で彼らの脳の機能障害に結びつけるのだろうか。いっぽうで、国会議員や大統領の汚職や暴力については同じような考え方をしようとしないではないか。人間集団はいろいろな行為に対してかなり変化に富んだ対応をするものである。ある人はするが、ある人はしないというこの単純な事実こそが、行為者の脳の特定の場所に位置づけられる特別な病理的異常が存在する証拠などないことを示している。我々は暴力に対する根拠のない思弁、つまり犠牲者を非難する決定論哲学に従う思弁に注意を集中させようではないか。それよりも、まず、《ゲットーを築き、そこの失業者の心を徐々に弱めるような迫害》の排除に努めようではないか。

(スティーヴン・J・グールド『人間の測りまちがい』上巻、河出文庫、08年6月刊、274-275頁)
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by urag | 2008-06-09 18:28 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
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