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2008年 06月 05日

NHK「クローズアップ現代」08年6月4日:ランキング依存が止まらない~出版不況の裏側

同業者のMさんに教えていただいた、昨晩のNHK「クローズアップ現代」の出版不況特集への各種コメント。所用につき視聴できなかったのだけれど、色々と反響が出ている模様。

「空想書店 書肆紅屋」さんの6月4日投稿「今日の「クローズアップ現代」
「俺と100冊の成功本」さんの6月4日投稿「ランキング依存が止まらない~出版不況の裏側~ クローズアップ現代
「四国の星」さんの6月5日投稿「書籍購入パターンの変化と出版不況・・「クローズアップ現代」を見て
「INUTILE」さんの6月4日投稿「「クローズアップ現代」本のランキング依存
「TAKA@P.P.R.S!!!」さんの6月4日投稿「クローズアップ現代『ランキング依存が止まらない』を見て。

ひとこと言っておかなければならない。新刊を大量に出せば取次からの「内払い」で当面の糊口をしのげる、というのは、歴史ある一部の版元の話に過ぎない。弊社のような、比較的新しい零細版元は「内払い」などない。取次によっては委託手数料(いわゆる歩戻し)を配本の時点で直ちに計上されるし、さらにすべての取次において、注文条件の売上の30%が半年間支払いを保留される。実売とは無関係に新刊の内払いがある、既得権益の大きい大手版元と大違いである。新刊点数が増えるのは、新刊の短命化が止まらないからではある。短命化の複合的原因については説明にもっと時間を割く必要があるだろう。

Mさんによれば「旭川の「富貴堂」+「クローズアップ現代」や「本屋大賞」+「クローズアップ現代」で検索すればさらに出てきます」とのこと。ほほう。自分なりに「出版」「取次」「内払い」で検索をかけると、トップに「双風亭日乗」さんの過去のエントリーがヒットした。

「双風亭日乗はてな出張所」さんの05年5月29日投稿「取次というブラックボックス

ほかにも色々な検索結果が。どうぞお試しあれ。

★「内払い」とは? 2ch「出版業界何でも質問・回答スレッド」220氏のコメント

220 名前: 素っ頓狂 投稿日: 02/03/24 04:06

>219
委託商品(特に新刊委託)について、取次→版元間の支払い条件は大別して2種類あります。「条件払い」と「精算払い」。出版社にとり、条件払いは有利で精算払いは不利です。これは版元が取次店といつ口座開設したかによります。

すなわちまだ出版界全体の出版点数が少なく、本の取り合いがあった時代(昭和30年代中頃まで)に取引を始めた版元の多くは支払い条件として条件払いの適用を受けている例が多く見受けられます(一般的に)。

「内払い」とは条件払いのことで、委託(新刊・長期)したときにその委託金額の何%を締め日の翌月に払ってもらえるか、という条件です。この支払い率は概算で言えば100%~10%まで細かく区切られています。またこの率は通常その版元の固定割合となっていますから、黙っていても対象商品に適用されますが、場合により取次店と条件交渉でアップすることも可能です(版元営業取次担当の仕事の一部)。

委託商品について100%全払いを受ける(翌月支払われる)羨ましい版元には音羽や一ツ橋があります。
【引用者注:音羽=講談社、一ツ橋=小学館。wikipedia「音羽グループ」「一ツ橋グループ」項目参照。ちなみに音羽の偉い人や一ツ橋の偉い人は二大取次(日販・トーハン)の大株主だと聞く。ということは(以下吐血)。ちなみに、音羽VS一ツ橋の近年の一例とか→「蛯原友里の記事から見える一ツ橋と音羽の仁義無き戦い」、逆に大同団結とか→「「少年サンデー」と「少年マガジン」共同でマンガ雑誌を出版、小学館と講談社が合意」】

昭和30年代後半以降に取引開設した殆どの版元は、委託商品の支払い条件が精算払いの適用を受けます。特に新刊委託品は6カ月据え置き7カ月目支払いが一般的です(注文品は翌月支払い)。誰か前の回答で委託精算期間が3カ月とありましたが、新刊委託で3カ月目の精算はありません。

新刊委託期間の建前は版元⇔取次間6カ月。取次⇔書店間105日(3カ月)となっていて、版元取次間は精算と返品期間の建前期間。取次書店間は返品受付期間(精算は即請求)となっています。

>218
長期委託は通常3カ月ではなく、通常6カ月です。6長(ろくちょう)と言います。3カ月の場合は通常延勘が一般的。3延(さんのべ)と言います。最近はバリエーションが多々あるようですが、昔からの慣行なら ろくちょう さんのべ です。

また取次が書店に出荷する条件は2種類しかないというのが建前です。委託、買切の2種類。注文という出荷形態は建前としてありません(実際はこのバリエーションで様々な条件がありますが、建前は2つです)。即ち、委託で出荷したものは、委託期間内のみ返品可能。それを過ぎれば返品不可(大嘘。大建前)。買切で出荷したものは、返品不可(版元4500社中どの版元が?) という次第です。(常備は出荷ではなく、貸し出し。版元在庫の書店移動。)

明治時代に「実業の日本社」が始めた委託販売は制度疲労を起し、昭和22~23年に岩波が始めた常備寄託制度も、崩壊し始めました。出版界全体の仕組みが完全な制度疲労を起こし、大きな変化の前触れを実感する今日この頃です。

***

◎NHK「クローズアップ現代」08年6月4日(水)放送 総合:午後7時30分~7時56分 BS2:午後8時34分~午後9時

ランキング依存が止まらない~出版不況の裏側~

このほど、出版社の倒産件数が15年ぶりの高水準を記録したことが明らかになった。かつて「声に出して読みたい日本語」などのベストセラーを生み出し、じっくりと本を育てることで定評のあった草思社も倒産。背景には、読者の本の選び方が劇的に変化していることがある。「売り上げランキング」をもとに本を選ぶ人が増加。売れる本への一極集中が顕著となり、書店ではランキングに入らない本は即座に返品することが常態化している。短期間で売り上げ実績をあげる必要に迫られた出版社は、出版点数を急激に増やし、本の寿命が短くなる事態を招いている。日本の出版界の根幹を揺るがし始めた読者の変化。その知られざる実態に迫る。スタジオゲスト:仲俣暁生さん(文芸評論家)

※ゲスト出演した仲俣暁生さんご自身が当該放送を見た感想→「海難記」08年6月5日の投稿「本の買い方のリテラシー
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by urag | 2008-06-05 19:51 | 雑談 | Trackback(1) | Comments(0)
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