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2008年 01月 05日

08年1月刊行開始:東京大学出版会『エウクレイデス全集』

08年1月刊行開始:東京大学出版会『エウクレイデス全集』_a0018105_103554100.jpg今月下旬刊行開始と聞いている、東京大学出版会さんの『エウクレイデス全集』の内容見本と書誌情報をいただいたので、以下に掲載します。

エウクレイデス全集 全5巻 【写真は内容見本】
東京大学出版会

★内容紹介

全集、初の邦訳! 08年1月刊行開始。古代ギリシャの数学者、エウクレイデス。著作としては『原論』が有名であるが、実際の彼自身の関心は純粋数学のみならず、天文学・視覚論・音楽など多岐にわたっていた。本全集ではそのすべてを邦訳(底本はハイベアとメンゲ編纂による『エウクレイデス全集』)。最新の研究成果に基づいた解説も充実! A5判上製カバー装・平均456頁。

★訳・解説
片山千佳子(東京芸術大学)、斎藤憲(大阪府立大学)、鈴木孝典(東海大学)、高橋憲一(九州大学)、三浦伸夫(神戸大学)。

★特徴

・ハイベア-メンゲの底本に基づき、さらにそれを超える地平に立つ。
・テクストに忠実な翻訳。原文の論理的関係を明確に再現。
・世界各国の科学史研究の最新成果を紹介・分析。
・全体解説のほか、個々の命題に詳細な解説を付加。

★刊行にあたって(抜粋)

エウクレイデスの学問的関心は純粋数学のみだったわけではない。天文学・視覚論(光学)・音楽など多岐にわたっていた。つまりその関心領域は、アリストテレスにおいて「数学的な諸学問のうちでより自然学的なもの」と呼ばれ、中世ヨーロッパにおいては数学と自然学の間の「中間的学問」と呼ばれたものに及んでいたのである。その実態を正確に把握し、また私たち自身の数学イメージの拡大に資するためにも、彼の学問的活動の全体像を知ることが必要なのではなかろうか。(・・・)広く世界を見ても、『エウクレイデス』の近代語訳はいまだなされておらず、今回の邦訳がまさに世界最初の近代語訳全集となる。

★各巻構成

第1巻『原論』I―VI巻 (第1回配本)
第2巻『原論』VII―X巻
第3巻『原論』XI―XV巻
第4巻『デドメナ』『オプティカ』『カトプトリカ』
第5巻『ファイノメナ』『ハルモニア論入門』『カノーンの分割』

★著者紹介

エウクレイデス(前300年頃アレクサンドリアで活躍)は、古代ギリシャの数学者として広く知られている。従来、「エウクレイデス」の英語訳である「ユークリッド」と呼ばれることが多かったが、現在では原音で呼ぶのが一般的である。

「数学を語ることは証明を語ることである。定義・公準・公理から演繹的に定理を導き出す。それが定理の証明というもので、数学の本質はここにある。証明のない数学とは形容矛盾に他ならない。」こうした数学のイメージは古代ギリシャの所産であり、とくにその集大成ともいうべきエウクレイデス『原論』に淵源する。学問的方法の一つの典型として、古来『原論』が学びつがれてきたゆえんである。西洋世界では、『聖書』に次いで読まれてきた書物であるともいわれている。

彼にはいくつかの著作があるが、邦訳で出版されたものは、1971年に共立出版から出された『原論』のみである。この共立版は解説が少なく、また、近年エウクレイデスを含めギリシャ数学史に関する研究がおおいに進展してきたことから、新たな『原論』の翻訳が求められていた。さらに、『原論』だけではなく、邦訳初となる他の著作は、ギリシャ数学の広さとそのおもしろさを教えてくれるだろう。

★各巻紹介

◆第1巻『原論』I-VI巻  斎藤憲(訳・解説)/三浦伸夫(全体解説)
ISBN978-4-13-065301-5/2008年1月刊/本体価格5200円

『原論』は全13巻からなり(XIV、XV巻は後の数学者が加えたものとされる)、その成立はおおむね紀元前300年頃と考えられている。約15万語の本文と多数の図版からなる、当時の数学の論証数学の基本的知識を集大成した書物である。

本全集第1巻には『原論』I-VI巻が収められる。I-IV:初等的な平面幾何、V:比例論、VI:比例論の平面幾何への応用、である。ピュタゴラスの定理などもこの巻に含まれる。

主要目次:
全体解説(エウクレイデスの人物像/エウクレイデスの著作/テクストの伝承/文明圏におけるエウクレイデス)
『原論』解説I-VI巻(『原論』の成立・伝承・構成/『原論』と初期ギリシア数学の展開/非共測量史観と「幾何学的代数」/非共測量と比例論の展開/比例論の幾何学への応用)
『原論』翻訳I-VI巻

◆第2巻『原論』VII-X巻  斎藤憲(訳・解説)
ISBN978-4-13-065302-2/第4回配本:09年7月刊/予価5000円(本体)

本全集第2巻には『原論』VII-IX巻が収められる。VII-IX:整数論、X:非共測量(通約不能量)の分類論、を扱う。第X巻は、100を超える命題から成り立ち、『原論』の3割近くを占める巨大な巻である。

◆第3巻『原論』XI-XV巻  斎藤憲(訳・解説)/三浦伸夫(解説)
ISBN978-4-13-065303-9/最終回配本:10年1月刊/予価5000円(本体)

本全集第3巻には『原論』XI-XV巻が収められる。XI-XIII:立体幾何学、XIV-XV:正多面体論への追加、を扱う。先にも述べたように、XIV、XV巻は古代末期頃付け加えられたものであるが、ハイベア版に準じるため、本全集にも掲載する。なお、共立版には、XIV、XV巻の訳は掲載されていない。

◆第4巻『デドメナ』『オプティカ』『カトプトリカ』 斎藤憲(訳・解説)/高橋憲一(訳・解説)
ISBN978-4-13-065304-6/第3回配本:09年1月刊/予価5000円(本体)

本全集第4巻には、平面幾何学、視覚論に関する内容が収められる。個々の内容は以下の通りである。

『デドメナ』(=『ダダ』とも呼ばれる)は、平面幾何学を扱っており、15の定義と94の命題からなる。『原論』と同じ論証形式をもっており、そこで使用されている命題は『原論』の命題のみである。全体に「所与(の角、比、直線など)を(持つ、作図されるなど)ならば、~である」という記述がとられているため、「所与」にあたるギリシャ語を採用して『デドメナ』という書名で呼ばれている。パッポスが『数学集成』において「解析の宝庫」の筆頭にあげている重要な書物である。

『オプティカ(視学)』は、眼から視線が出ていると主張する「流出説」の立場にたち、同一媒質中の対象の見え方を論じる7つの定義と58の命題からなる。

『カトプトリカ(反射視学)』は、鏡(平面鏡、凸面鏡、凹面鏡)に映し出された像を6つの定義と30個の命題で考察するものである。

◆第5巻『ファイノメナ』『ハルモニア論入門』『カノーンの分割』 鈴木孝典(訳・解説)/片山千佳子(訳・解説)
ISBN978-4-13-065305-3/第2回配本:08年7月刊/予価5000円(本体)

本全集第5巻は、天文学、音楽論に関する内容を収める。個々の内容は以下の通りである。

『ファイノメナ』は、天文学を 題材とする。「ファイノメナ」は「現れるものども」を意味するが、ここではさらに「星の出没のありさま」に限定されている。全文は18個の命題からなる。

『ハルモニア論入門』は、アリストクセノス派の音楽理論を要約したものである。『原論』などとは違って、論証的ではなく、記述的な作品である。

『カノーンの分割』は、ピュタゴラス的音程比理論と、カノーンと呼ばれる一弦の分割によるギリシャの音組織論とを20の命題にまとめて体系化し論証したものである。『音楽原論』とも呼ばれる。

by urag | 2008-01-05 10:39 | 本のコンシェルジュ | Comments(0)


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