2008年 01月 01日

ネグリ新刊『さらば、近代民主主義』、作品社より

a0018105_15366.jpgさらば、"近代民主主義"――政治概念のポスト近代革命
アントニオ・ネグリ(1933-):著 杉村昌昭:訳
作品社 08年1月 2,520円 46判上製カバー装252頁 ISBN978-4-86182-170-7

帯文より:本書は、ネグリが20世紀の政治思想・哲学の概念は機能停止したとして、さまざまな近代思想・ポストモダン思想(スピノザ、ヘーゲル、マルクス、ベンヤミン、アレント、フーコー、デリダ、アガンベンなど)を総括し、グローバル民主主義に向けて新たな政治概念の定義を行ったものである。

***

原書はフランス語で刊行された"Fabrique de Porcelaine. Pour une nouvelle grammaire du politique", Stock, 2006です。イタリア語版は未刊。原題を直訳すると「陶磁器製造工房――政治的なものの新たな文法のために」となります。04年から05年にかけてパリの国際哲学学院で行われた連続講義「政治的なものの新たな文法のために」をまとめたものです。目次は以下の通り。

親愛なる日本の友人たちへ――日本語版への序文
序文――新たな政治の文法づくりの"工房"として
工房1 近代/ポスト近代の区切り
工房2 マルチチュードの労働と生政治的組成
工房3 グローバリゼーションと集団的移動〔エクソダス〕――平和と戦争
工房4 公と私を超えて――〈共〉〔コモン〕へ
工房5 マージナルな抵抗としての「ポスト近代思想」批判
工房6 差異と抵抗――ポスト近代の区切りの認識から、来たるべき時代の存在論的構成へ
工房7 抵抗の権利から構成的権力へ
工房8 ガバメントとガバナンス――「政府形態」の批判のために
工房9 決定と組織
工房10 共通の自由の時間
結び――マルチチュードを形成することは、新たな民主主義をつくることである
訳者あとがき
政治概念・思想用語索引
人名索引

日本語版への序文によれば、原題の「陶磁器製造工房」というのは、「非常に脆い素材を使って手作りで貴重なものをつくるということを意味して」おり、「現代の新たな概念大系のようなものを生み出そうという意図を表わしている」とのことです。さらに「これは、まさに現代という時代が、なおあらゆる変化に開かれ、思考が予期せざるリスクにさらされているだけに、時宜を得たものではあるが、困難なことでもあった」とも書かれています。

本書のうちでもっとも注目すべき概念のひとつは、「共〔コモン〕」=共通のもの、です。公でも私でもなく、共。ネグリはこう述べます、「〔〈共〉の概念は〕公的なものと私的なものとのいっさいの起源的分離の拒否、そしていったん分離してからのあらゆる再構築の拒否から生まれたものである」(99頁)と。ネグリはこうした〈共〉の捉え方を、チャールズ・テイラーやサンデル、ハーバーマスらの「公共」哲学と対比させています。

ネグリの〈共〉は「マルチチュード」の概念によって彫琢されます。マルチチュードとは「特異性の総体」であり、「無限の特異的活動を結び合わせる協働的な織物の総体」です。上から正義を押し付けられるような「公」ではなく、かと言って「私」に引きこもるのでもなく、民衆が自ら個々のかけがえのなさを共に結び合わせていくこと。その主体性にネグリは賭けていると言えるのかもしれません。

ネグリは08年3月に来日し、東京と京都で講演する予定です。上記書のフランス語共訳者であるジュディット・ルヴェルさんも来日し、講演すると聴いています。
[PR]

by urag | 2008-01-01 00:57 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : http://urag.exblog.jp/tb/6626024
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。


<< 圧巻の論文集『ドゥルーズ/ガタ...      尾崎大輔写真集の生写真を展示@ >>