ウラゲツ☆ブログ

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2007年 09月 03日

アマゾンのWarehouse Dealsが定価より高額の出品

8月16日に「アマゾンのWarehouse Dealsは再販制に抵触しているのでは?」という記事を書いたところ、トラックバックやコメント、ブックマーク等を通じて、様々な方の声を聞くことができました。皆さんの言及に感謝いたします。コメントがもっと増えるかもしれないので、レスのタイミングを窺っていたのですが、さいきんまたWarehouse Dealsについて発見したことがあったので、新しい記事を起こすことにしました。

前回の記事で私はこう書きました。

「弊社が7月末に刊行した最新刊の『ハワイ』が早くもAMP〔アマゾン・マーケット・プレイス〕に出品されています。税込正価6300円のところ、5124円。出品者はwarehouse_deals_jpで、この出品者はほかならないアマゾンがAMPに出品する際に使っているIDです。つまり、アマゾン自身が定価ではなく値引き価格で本を売っているわけです(あくまでも事故品の再利用のためであって、品切本を高額で売りつけるためのものではないようです)。/もしアマゾンが「AMPは古書市場であり、再販制に左右されない」と強弁するとしても、問題の所在は変わらない気がします。/(・・・)/私の意見はこうです。再販制に照らしてみて、warehouse_deals_jpは問題がある」。

訂正しなければならない記述があります。「品切本を高額で売りつけるためのものではないようです」という一文です。アマゾンのWarehouse Dealsは、定価以上の値段で出品している場合もあるのです。

たとえば、07年9月3日午前11:00現在、07年6月にNHK出版(日本放送出版協会)から刊行されたリサ・ランドールの『ワープする宇宙―5次元時空の謎を解く』は、定価3,045円(税込)で新品がアマゾンより「通常、4~5営業日以内に発送」されることになっていますが、同商品をWarehouse Dealsが税込3,183円と3,510円で出品しています。

3,183円のほうは、「ユーズド商品 - 良い」と分類されており、本の状態は「 カバー:やぶれ(中). カバー:しわ/折れ(中). 読んだ形跡なし. カバー:すり切れ(小).」と説明されています。3,510円のほうは、「ユーズド商品 - 非常に良い」と分類されており、本の状態は「読んだ形跡なし. ダストカバーに軽微なキズあり. カバー:しわ/折れ(小).」と説明されています。値段設定の基準がよくわからないのは仕方ないとしても、新品を普通に買えるのだから、難あり商品を定価より高い値段で買いたくはないなあ。

Warehouse Dealsでは在庫しているわけですから一両日中に発送できるのでしょうけれど、新品は発送まで4~5日かかるわけで。あるいは『ワープする宇宙』が一時期品薄になった時があって、マーケットプレイスで買うしかない時期がかつてあったのでしょうか? それにしても定価より高くするとは。版元さんは気づいているでしょうか?

一週間前の8月28日に、丸善とアマゾンジャパンの共同ストア「丸善オンラインストア」が開店し、書籍販売については丸善はアマゾンに任せるかたちになっています。丸善はWarehouse Dealsのことを認知済みなのでしょうか。

私はこう思っています、現行の商習慣と再販制の業界的解釈上では、アマゾンは再販制遵守を無視していると非難されても仕方がない、と。アマゾンの突出した行為について業界が静まり返っているように見えること、私にとって不思議なのはアマゾンのやり口というよりは、業界のこの静けさ、特に他書店さんが再販制についてどう考えているのか、よく分からないというこの業界の「空気」です。

拙記事にTBしてくださった「オシテオサレテ」のnikubetaさんは、「Warehouse Dealsについてはアマゾン側の言い分に理があるのではないでしょうか。」と題したエントリーで手際よく、「書店に戻ってきた本を古書とみなすことができるのか。アマゾンはこれにイエスと答え、ウラゲツ☆ブログさんはノーと答えるわけです」とまとめていらっしゃいます。現時点では、アマゾンの公式見解は公表されていないのですが、nikubetaさんのアマゾン理解は間違ってはいないだろうと推測するのが妥当な線だと私は思います。

さてその上で言えば、「お客様がいったん購入した商品を何かしらの理由で書店に返品し、書店がお客様に返金した」場合、返品された本がいわゆる「古書」とみなされるかどうか、という点については、業界ではこれまで通常「みなされない」のではなかったかと思います。

お客様から書店に返品された本は、書店からさらに取次を経由して版元に返品されます。版元は客注キャンセルによる返品を、一部の例外を除いて容認しています。取次=版元間において、返品された本の代金は、版元から取次への納品合計分から差し引かれます。返品された本は版元によって可能な限りきれいに改装され、再利用されます。カバー(アマゾンの言うダストカバー)ではなく、本体に汚損が認められる場合は、不良本として断裁されることが多いと言っていいでしょう。

つまり、本が返品されてくることも、それが改装されて再活用されることも、「古書」と区別されるところのいわゆる「新刊」における、販売サイクルの内部の出来事であると業界ではみなされていると理解していいと思われます。

返品が随時可能であるシステムの中では、お客様の返品がただちに古書と認められるようなことはありません。すべての出版社が買切制に移行し、それを取次および書店、そしてお客様が容認しないかぎり、それは不可能だというのが私の意見です。ですから、業界においては、nikubetaさんの言うように「アマゾン側の言い分に理がある」と認める人はさほど多くはないだろうと思っています。「返品されたきた本はわが社が買い取って古書として販売する」とまでは、アマゾンは公的には明文化していません。実際、他書店の手前、そう堂々とは謳いにくいでしょう。そこが微妙なところです。

ちなみに、広島を拠点とする書店チェーン「フタバ図書」のように、新刊書店が古書の買取をしている例があります。これは、「返品された本をそのまま古書として売る」ということとは違います。やや議論が脱線しますが、その他の新刊書店で古書買取(リサイクル)が広がらないのは、そもそも古物商の免許を持っていないからというよりは、店頭で万引きされた本を持ち込まれてはたまらない、という思いもあるからだろうと思います。

今回の記事で論点をすべてくまなく再説することはできませんでしたが、最後にひとつだけ言っておかねばならないことがあります。私は前回の記事で、再販制の長所と短所についてごく簡単に触れましたが、実際のところ、自分が再販制堅持派なのか、撤廃派なのかについては述べませんでした。私のことを、再販制擁護派であるとお考えになった方もいらっしゃるかもしれませんが、私自身の中ではこのことは単純に割り切れるものではありません。

できることならば、再販制の弾力的運用の中で、版元別に再販制を維持するか撤廃するかを選択でき、さらに個別の商品に応じて再販制のもとに置くか、あるいは時限再販を適用するか、あるいは最初から自由価格でいくか選択できればいいと思っています。それはあくまでも版元都合の話ですが、たぶんそうした細かいオペレーションは、しばらくこの業界では無理でしょう。書物は十把一絡げに扱われることを拒否するほどの多様性に満ちていますが、その多様性をどこかしらどうにか無視することなしに市場に送り出されることはないのです。

なお拙ブログでは、ライフログを通じて、アマゾンで書籍を購入できるようになっていますが、それはアマゾンを支持しているということではまったくありません。あしからず。
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by urag | 2007-09-03 11:34 | 雑談 | Trackback(2) | Comments(0)
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