2007年 04月 22日

今週の注目新刊(第95回:07年4月22日)

a0018105_22186.jpg抵抗の場へ--あらゆる境界を越えるために マサオ・ミヨシ自らを語る
マサオ・ミヨシ(1928-)×吉本光宏(1961-):著
洛北出版 07年4月 2,940円 46判上製カバー装382頁 ISBN978-4-903127-05-7
■帯文より:最初の戦争体験、アメリカで英文学者になるまで、ベトナム反戦運動、チョムスキーやサイードとの出会い、「知識人」との訣別、人文科学消滅後の学問……自らの軌跡をたどりながら、批評=抵抗の新たなスタイルを語る。
●ここ最近読んだものの中ではダントツに面白い、示唆に富んだ一冊です。柄谷行人さんが朝日新聞の書評でも取り上げていらっしゃったことが当然と確信できるほど、素晴らしい本です。
●一言で言えば日本語版オリジナルの自伝的インタビューですが、ミヨシさんの生きざまと研究姿勢に色々なことを教えられます。楽しいエピソードもあれば、考えさせられる重要な証言もあります。一読者としても堪能しましたが、人文書に関わる業界人はなおさら必読だろうと思います。
●「遅かれ早かれ、人文・社会科学は崩壊すると思うのです。事実、学問領域としての人文・社会科学はすでに崩壊しているのではないでしょうか」(319頁)と著者は語ります。そして、人文科学崩壊後に到来する超学問領域的な「環境学」への展望について、ごく簡単にですが触れています。その折に参照されているのはガタリのエコゾフィー(『三つのエコロジー』大村書店)や、ラヴロックのガイア仮説(『地球生命圏』工作舎)です。
●本書と一緒に読んでみると勉強になるのは次の本です。人文科学の真価についてはサイードの『人文学と批評の使命』(岩波書店)、学際性の問題をめぐってはハラウェイの『サイボーグ・ダイアローグズ』(水声社)、グローバリズムに抗するプラネタリアニズム、惑星主義的思考をめぐってはスピヴァクの『ある学問の死』(みすず書房)。

悲しみの収穫--ウクライナ大飢饉 / ロバート・コンクエスト(1917-):著 白石治朗:訳 / 恵雅堂出版 / 5,250円 / A5判638頁
アルメニア人ジェノサイド--民族4000年の歴史と文化 / 中島偉晴(1939-):著 / 明石書店 / 3,150円 / 46判241+15頁
兵士になった女性たち--近世ヨーロッパにおける異性装の伝統 / ルドルフ・M・デッカー(1951-)+ロッテ・C・ファン・ドゥ・ポル(1949-):著 大木昌:訳 / 法政大学出版局 / 2,730円 / 46判242頁
ドイツ中世都市の自由と平和--フランクフルトの歴史から / 小倉欣一:著 / 勁草書房 / 4,935円 / A5判348+61頁

フーコーと法--統治としての法の社会学に向けて / A・ハント(1942-)+G・ウィッカム(1951-):著 久塚純一:監訳 永井順子:訳 / 早稲田大学出版部 / 3,150円 / A5判241頁
オフィシャル・ノレッジ批判--保守復権の時代における民主主義教育 / マイケル・W・アップル:著 野崎与志子+井口博充+小暮修三+池田寛:訳 / 東信堂 / 3,990円 / A5判319頁
言葉と在るものの声 / 前田英樹(1951-):著 / 青土社 / 2,310円 / 46判247頁
能の見える風景 / 多田富雄(1934-):著 / 藤原書店 / 2,310円 / B6判182頁
澁澤龍彦幻想美術館 / 巌谷國士:監修・文 / 平凡社 / 2,700円 / B5判246頁
はじまりの物語--デザインの視線 / 松田行正:著 / 紀伊國屋書店 / 2,940円 / A5判355頁
図書館の誕生--古代オリエントからローマへ / L・カッソン:著 新海邦治:訳 / 刀水書房 / 2,415円 / 46判222頁
渦巻きは神であった--謎の古代文様 / 大谷幸市(1943-):著 / 彩流社 / 2,940円 / A5判296頁

或る明治女学生日記--岡山・山陽女学校生「石原登女子」の記録 / 石原登女子:著 太田健一+竹内涼子:編 / 吉備人出版 / 1,890円 / B6判369頁
カストリの時代 / 林忠彦(1918-1990):著 / ピエ・ブックス / 1,890円 / A5判143頁
長崎昭和レトロ冩真館--ガマンせんば!だれもがそんな時代だった。 / 堺屋修一:写真 永松実:文 / 長崎新聞社 / 2,100円 / B5判159頁
GHQカメラマンが撮った戦後ニッポン--カラーで蘇る敗戦から復興への記録 / ディミトリー・ボリア(1902-1990):写真 杉田米行:編著 / アーカイブス出版 / 4,935円 / A4変形判191頁
聖戦のイコノグラフィ--天皇と兵士・戦死者の図像・表象 / 川村邦光(1950-):著 / 青弓社 / 3,570円 / A5判250頁
日本人と戦争責任--元戦艦武蔵乗組員の「遺書」を読んで考える / 斎藤貴男(1958-)+森達也(1956-):著 / 高文研 / 1,785円 / B6判252頁
普通の国になりましょう / C・ダグラス・ラミス(1936-):著 / 大月書店 / 1,260円 / 46判90頁

シリーズ世界周航記 (2) 世界周航記 / 岩波書店 / 3,675円 / 46判225+4頁
●ブーガンヴィル「世界周航記」と、ディドロ「ブーガンヴィル航海記補遺」を収録。この手の古典は最初から文庫で出してくださると嬉しいのですけれども。

一六世紀文化革命 (1) / 山本義隆(1941-):著 / みすず書房 / 3,360円 / 46判390+29頁
●全2巻同時発売。全共闘世代には有名人でも、若い世代にはおそらくほとんどまったく認知されていなかったはずの著者でしたが、『磁力と重力の発見』(全3巻、みすず書房)がずいぶん話題になりましたから、お読みになった方もいらっしゃるでしょうね。今回の新刊も広く話題になりそうな予感がします。

バルト--距離への情熱 / 渡辺諒(1952-):著 / 白水社 / 2,520円 / 46判205頁
●シリーズ「哲学の現代を読む」の最新刊。

お母さん社長が行く!
橋本真由美(1949-):著 / 日経BP社 / 1,365円 / B6判251頁
●著者はブックオフ代表取締役社長。パートから登りつめた叩上げの人。「フリーターもニートも主婦も、みんな立派な戦力です!」という帯文が気になります。戦いからいかに降りるか、異他なる価値創造はいかに可能か、ということに関心がある人はどうすればいいでしょうか。

日本中世内乱史人名事典 (上) / 佐藤和彦+樋口州男+錦昭江+松井吉昭+桜井彦+鈴木彰:編 / 新人物往来社 / 12,600円 / A5判380頁
●上下巻。保元・平治の乱から応仁・文明の乱までの803人を扱っています。

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◎注目の文庫、新書、選書

西郷隆盛「南洲翁遺訓」 / 猪飼隆明:訳 / 角川文庫ソフィア / 620円
文学論 (下) / 夏目漱石:著 / 岩波文庫 / 945円
倫理学 (4) 和辻哲郎:著 / 岩波文庫 / 987円
国語学原論 (下) / 時枝誠記:著 / 岩波文庫 / 735円
道化の民俗学 / 山口昌男:著 / 岩波現代文庫 / 1,365円 / 384+16頁

越境の時--一九六〇年代と在日 / 鈴木道彦(1929-):著 / 集英社新書 / 735円 / 253頁
乾隆帝--その政治の図像学 / 中野美代子:著 / 文春新書 / 840円 / 260頁

知の遠近法 / ヘルマン・ゴチェフスキ(1963-):編 / 講談社選書メチエ / 1,575円 / B6判228頁
美術館の政治学 / 暮沢剛巳:著 / 青弓社ライブラリー / 1,680円 / B6判237頁
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by urag | 2007-04-22 18:21 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
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