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2006年 09月 04日

『未来』06年9月号に啓文堂高幡店による専売復刊の話が

a0018105_2055781.jpg業界人にはよく知られているはずの話ですが、啓文堂書店高幡店の志水店長(72年生まれ)が講談社文芸文庫の大岡昇平『愛について』を同店の専売商品として700冊買い切るという条件で見事復刊させたことがありました。今春の話です。その顛末が、PR誌「未来」06年9月号の「書店のABC」コーナーに寄稿した志水雅弘さんご自身の筆になる「「専売」――初めての挑戦」で明らかにされています。

啓文堂書店は京王グループ傘下の中堅チェーンで、都内を中心に三十数店舗を展開。高幡店はその一つです。チェーンでは昨年講談社文庫のとある商品を猛烈に拡販し、それがきっかけで志水さんは講談社サイドに『愛について』の復刊をかけてアタック。実績ある書店からの申し出に、講談社は実に迅速なことに数日のうちに重版を決定、一ヵ月後には重版が出来上がったというのです。すごい。

志水さんは店内で同商品を60面積み、ズバリ700冊全部を陳列し、手書きのパネルとPOPを設置。なんと一ヵ月後には100冊を売り、四ヶ月で重版部数の半数にあたる350冊を売り切ったそうです。これはたった一店舗の話。「専売商品は確かにリスクを伴う。だが“当店でしか手に入らない”という武器は専売ならではの魅力がある」と志水さんは語り、書店人や出版人に専売へのチャレンジを勧めています。

出版社サイドの気持ちとして申し上げれば、書店さんから「専売したいので復刊を」との申し出があったら、身を乗り出して大いに話を伺うでしょう。むろん、文庫ではなく単行本の場合は、単価が高いですから、いくら書店さんが買い切ると言っても、高額本の場合は難しいこともあるかもしれません。

しかし内容や版権にまつわる事情がクリアになっていれば、どんなに高額な商品でも復刊できないことは原則的にありません。それに、買い切っていただくとなれば、出版社側も「直取引にして卸正味を下げる」こともできるでしょう。

人文書業界でもそういう「専売」への夢はずっと昔からありました。専売とはいきませんでしたが、いわゆる「復刊事業」には積極的に取り組んできました。一店舗に買い切って欲しいとは言わないまでも、人文書を置くような大型書店さんがチェーンで買い切ってくださるなら、引き受けることも可能だと思います。専売商品が他チェーンとの差別化に貢献するならば、商売としては成功です。

しかしながら人文書業界では専売復刊というのは聞いたことがありません。教科書採用品につき実質的な専売状態になることはあるでしょうけれど・・・。しかし、岩波文庫、講談社学術文庫、ちくま学芸文庫、平凡社ライブラリーなどの人文系の文庫(あるいは新書でもいいのですが)は、大型書店チェーンならば専売復刊をお願いしてもいいような気がします。あるいは出版社側が専売復刊を持ちかけたら引き受けてくださる書店さんがいらっしゃるでしょうか。

講談社は上記の流れを成功と見たのか、あるいは他店や遠方の読者からの声があったのか、『愛について』を遠からず重版するそうです。私は専売店で売切れるまでは重版しないということを専売商品の特権的条件にしたほうがいいように思います。というのも、在庫というのは残りが少なくなってからしぶとく何年ももったりする場合があるのですから。

たとえばA書店で専売復刊となったとき、あるいはカバーや奥付にその書店の名を冠したり、あるいはその書店の要望にしたがって装丁を変えたりという試みも不可能ではありません。書店主導で本をカスタマイズしていく、そうした試みもあっていいと思います。

***

「未来」9月号の広告および筑摩書房の公式ウェブサイトの近刊情報によれば、ちくま学芸文庫の「フーコー・コレクション」の続刊予定はこうなっています。第五巻「性・真理」9月8日刊、第六巻「生政治・統治」10月12日、そして「フーコー・ガイドブック」です。最後の「ガイドブック」というのはどんなものなんでしょうね。筑摩書房では10月下旬にフーコーの単行本新刊『マネの絵画』(阿部崇訳、A5判240頁、価格未定)も刊行するそうです。

「未来」10月号では丹生谷貴志さんによる『初期ストア哲学における非物体的なものの理論』の書評が掲載されると予告が出ていました。楽しみです。
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by urag | 2006-09-04 19:36 | 雑談 | Trackback(1) | Comments(0)
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