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2006年 08月 27日

今週の注目新刊(第65回:06年8月27日)

■注目の文芸書新刊

ランボー全集
平井啓之+湯浅博雄+中地義和+川那部保明=訳
青土社 12,600円 A5判上製函入1200頁 ISBN:4-7917-9168-1
●1994年に同版元から刊行されていた『ランボー全詩集』をさらにアップグレードした一冊。
●版元の紹介によれば、本書の主な特徴は「ランボーの草稿を再検討した新しいテクストによる翻訳」「ランボー表現の核心に迫る註解」「80年代から急速に進展したランボー研究の成果を集大成」「デッサン、写真、草稿などランボー関係の図版約300点」「文学放棄後を含む全書簡を、詩作品とともに1巻に収録」とのこと。
●詩人としてのランボーも、断筆して砂漠に彷徨い出たランボーも、すべてがこの一冊の中にあるというわけです。
●加納光於さんの挿画をあしらった高麗隆彦さんによる装幀も素晴らしい。
●本体価格一万円以内に押さえていたらもっと素晴らしかったのですが、これはやむを得ません。
●ただ、学生やサラリーマンのためには将来的に普及版も必要かも。本書は愛蔵版の風格。
●どうしても手が出せないという方は、宇佐美斉訳『ランボー全詩集』(ちくま文庫、1996年)をお勧めします。ほぼ全ての詩作品と主要な手紙が収められています。税込1,155円也。

ボードレール パリの憂鬱
シャルル・ボードレール=著 渡辺邦彦(1936-)=訳
みすず書房 2,730円 46判294頁 ISBN:4-622-08069-9
●シリーズ《大人の本棚》 からの一冊。「パリの憂鬱」は現在文庫でも二種類の翻訳を読むことができますが、新訳が出るのは嬉しい限りです。阿部良雄さんによる個人訳全集訳以来だすれば、17年ぶりですか。
●阿部良雄訳「パリの憂鬱」、『ボードレール全詩集(II)』所収、ちくま文庫、1998年。
●三好達治訳『巴里の憂鬱』、新潮文庫、1951年。
●ちなみに主著の『悪の華』の場合、文庫では現在4種類もの翻訳が入手できます。阿部良雄訳(『ボードレール全詩集(I)』所収、ちくま文庫、98年)、安藤元雄訳(集英社文庫、91年)、鈴木信太郎訳(岩波文庫、61年)、堀口大學訳(新潮文庫、53年)。すごいですよね。

美酒と革嚢--第一書房・長谷川巳之吉
長谷川郁夫(1947-)=著
河出書房新社 A5判464頁 6,090円 ISBN:4-309-01773-8
●中学卒業後に上京、23歳で第一書房を興し、数々の美しい本を世に送り出しながら、第二次世界大戦末期に自ら廃業した伝説の出版人長谷川巳之吉(1893-1973)の評伝決定版です。著者はかの小沢書店の社主だった方です。「図書新聞」の連載をまとめたものですね。

埴谷雄高--新たなる黙示
河出書房新社 1,575円 A5判192頁 ISBN:4-309-74013-8
●2007年で没後10年ですか。あっという間のような気もします。生前の埴谷さんに何度かお目にかかったことがあります。私にとっては忘れえぬ思い出です。


■注目の人文社会書新刊

特に注目したいのは『知られざる東京権力の謎』。都政を動かす隠れた行政権力としての「(財)特別区協議会」の実像に迫るという本。著者は二人。安達氏は、特定医療法人財団健和会の医療福祉調査室室長。鈴木氏は、地域ケア総合評価機構の介護保険公共事業調査員。

人文学と批評の使命--デモクラシーのために
E・W・サイード=著 村山敏勝+三宅敦子=訳
岩波書店 1,995円 46判上製200頁 ISBN:4-00-023423-4

学者たちへの論駁(2)論理学者たちへの論駁
セクストス・エンペイリコス=著 金山弥平+金山万里子=訳
西洋古典叢書:京都大学学術出版会 4,620円 46判494+43頁 ISBN:4-87698-165-5

アインシュタインは語る 〔増補新版〕
アリス・カラプリス編 林一+林大=訳
大月書店 3,675円 46判488頁 ISBN:4-272-43068-8

テレポーテーション--瞬間移動の夢
デヴィッド・ダーリング(1953-)=著 林大=訳
光文社 1,890円 46判294頁 ISBN:4-334-96192-4

知られざる東京権力の謎--中間的自治体の発見
安達智則+鈴木優子=著
花伝社 2,100円 46判244頁 ISBN:4-7634-0473-3

アメリカにおける白人意識の構築--労働者階級の形成と人種
デイヴィッド・R・ローディガー=著 小原豊志+竹中興慈+井川真砂+落合明子訳
明石書店 4,725円 46判380頁 ISBN:4-7503-2386-1

所有と国家のゆくえ
稲葉振一郎(1963-)+立岩真也(1960-)=著
NHKブックス:NHK出版 1,176円 B6判301頁 ISBN:4-14-091064-X

反空爆の思想
吉田敏浩(1957-)=著
NHKブックス:NHK出版 1,218円 B6判308頁 ISBN:4-14-091065-8


■注目の芸術書新刊

高名なトランペッターの日野さんの描く絵はなかなかカラフルでパワフル。ゼロ次元は60年代後半から数年間のあいだ活動した、伝説のパフォーマンス集団。「トニオちゃん」は第一弾が文芸社から刊行されていて、ずいぶん楽しませてもらいました。今度の第二弾もぶっとんでます。

日野皓正ドローイング作品集 2 GANBO
日野皓正(1942-)=著 浅井博司=監修
近代映画社 3,150円 B5変形112頁 ISBN:4-7648-2102-8

ゼロ次元--加藤好弘と六十年代
平田実=著
河出書房新社 2,520円 A5判128頁 ISBN:4-309-26914-1

みんなのトニオちゃんRETURNS
菅原そうた(1979-)=著
ゴマブックス 2,520円 A4判144頁 ISBN:4-7771-0472-9


■偶然でもいいから・・・

かつて『ねこぢる純粋理性批判』という本がありましたが、どんなきっかけでもいいんです、今回の新刊文庫の脇にカント自身の『純粋理性批判』を置いてみるという本屋さんがいらっしゃったら拍手喝采です。ちなみにかつて角川文庫で刊行されたことのあるカント自身の著書は『実践理性批判』(豊川昇=訳)のみでしたっけね。古き良き時代の角川文庫・・・。

純粋理性批判殺人事件 上・下
マイケル・グレゴリオ=著 羽田詩津子=訳
角川文庫 740円/700円 327頁/302頁 ISBN : 4-04-296301-3/4-04-296302-1
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by urag | 2006-08-27 01:01 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
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