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2006年 08月 20日

今週の注目新刊(第64回:06年8月20日)

◎注目の新刊単行本
a0018105_11293967.jpgコント=スポンヴィルの秀逸な哲学的エッセイは毎回楽しみにしています。本書111頁で著者は「市場が宗教になってしまったら、それは万人にとって最悪の事態」であり、それは「富の圧制」であると書いています。著者は控えめに言っていますが、おそらくこんにちすでに「富の圧制」が始まっていることを鋭く呵責したくだりかと思います。著者はそれを「もっとも滑稽なもの」と呼んでいます。まさにその通り、私たちは滑稽な社会に生きています。

黒人に変装したアメリカの白人の体験記『私のように黒い夜』は1967年に至誠堂から刊行されたものの全面改訳。こんにち日本でもいよいよ深刻化しつつある「差別」社会を考える上ではずせない、第一級の参考文献。同じくアメリカ人のマシアスの新刊は異文化間における「交通」や「翻訳」をめぐる一般的諸問題を考察するための、一つの「症例」を提供してくれるものかもしれない。

資本主義に徳はあるか / アンドレ・コント=スポンヴィル著 / 小須田健+C・カンタン訳 / 紀伊國屋書店 / ¥2,000
世界を変えた、ちょっと難しい20の哲学 / フランソワ・ダゴニェ著 / 宇波彰訳 / PHP研究所 / ¥1,470
オタク・イン・USA--愛と誤解のAnime輸入史 / パトリック・マシアス(1972-)著 / 町山智浩編訳 / 太田出版 / ¥1,554
私のように黒い夜 / J・H・グリフィン著 / 平井イサク訳 / ブルース・インターアクションズ / ¥2,200
ハンナ・アーレント--〈生〉は一つのナラティヴである / ジュリア・クリステヴァ著 / 松葉祥一+椎名亮輔+勝賀瀬恵子訳 / 作品社 / ¥3,990

◎注目の新書・文庫
a0018105_1013484.jpg『生命理論』(哲学書房)や『原生計算と存在論的観測』(東京大学出版会)などの著書で、哲学界に新風を巻き起こしている郡司さんの待望の新書。単行本/新書という売場の違いを超えて併売して欲しい一冊です。単行本の売場に新書や文庫を置かないというのは本の外見にこだわりすぎて「中味」を評価できていないことと同じ。

新刊の洪水の中でロングセラーの存在が脅かされている昨今、「スロー・リーディング」の思想がいよいよ立ち上がりつつあるようです。たとえば吉祥寺の古本屋「よみた屋」さんが、ウェブサイトで「スローリーディング宣言」という文章を公開しています。「話題に乗り遅れないために焦って流し読みする消化不良の読書にNONを言おう」と。大いに共感します。芥川賞受賞時に京大生だった平野さんの新刊は、まずは出版人や書店人が読んでおかねばならないのかもしれません。

生きていることの科学--生命・意識のマテリアル / 郡司ペギオ-幸夫著 / 講談社現代新書 / ¥760
本の読み方--スロー・リーディングの実践 / 平野啓一郎著 / PHP新書 / ¥756
黄金伝説 3 / ヤコブス・デ・ウォラギネ著 / 前田敬作+西井武訳 / 平凡社ライブラリー / ¥1,995
小説の認識 / 伊藤整著 / 岩波文庫 / ¥735
曖昧の七つの型 下 / ウィリアム・エンプソン著 / 岩崎宗治訳 / 岩波文庫 / ¥903
津田左右吉歴史論集 / 津田左右吉著 / 岩波書店 / ¥945
孤独な散歩者の夢想 改版/ ルソー著 / 青柳瑞穂訳 / 新潮文庫 / ¥420
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by urag | 2006-08-20 10:22 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
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