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2006年 05月 28日

今週の注目新刊(第52回:06年5月28日)

中世の言語と読者――ラテン語から民衆語へ
エーリヒ・アウエルバッハ(1892-1957)著 小竹澄栄(1947-)訳
八坂書房 06年5月刊 ¥5,040 A5判400頁 ISBN:4896948726
■版元紹介文より:教養ある読者・聴衆の不在という特異な文化状況のなか、中世のラテン語はどのような変貌を遂げ、最終的にいかにして克服されたか?――不朽の名著『ミメーシス』の補遺との位置づけのもと、渡米後に満を持して筆を起こし、近代語成立前夜までのドラマを鮮やかに描き切った渾身の論集、待望の邦訳。
●久々の訳書です。主著『ミメーシス』(全2巻、ちくま学芸文庫)のほかに、処女作『世俗詩人ダンテ』(みすず書房、1993年)が小竹さん訳で、また、論文集『世界文学の文献学』(みすず書房、1998年)が高木昌史・岡部仁・松田治の三氏の共訳で刊行されています。
●いずれも著者の博識についていくのがしんどい本ですが、読まずにやりすごすことのできない現代の古典。アウエルバッハの本をきちんと揃えておいている本屋さんは本物です。文芸書の海外文学棚や批評評論棚にあるのはありうべきことだとして、人文書の哲学思想棚の批評・記号学棚の周辺にまで置いてあったら更に素晴らしい。

カール・シュミットの挑戦
シャンタル・ムフ編 古賀敬太+佐野誠編訳
風行社 06年5月刊 ¥4,410 A5判300頁 ISBN:493866285X
●99年にVersoから刊行されたThe Challenge of Carl Schmittの翻訳のようです。だとすれば編者ムフの"Carl Schmitt and the Paradox of Liberal Democracy"や、ジジェクの"Carl Schmitt in the Age of Post-Politics"、ポール・ハーストの"Carl Schmitt's Decisionism"などの論文が読めるはずです。その他の寄稿者は研究者レベルでないと知らない名前かもしれませんが、充実した論文集であることは確かです。

哲学者は何を考えているのか
ジュリアン・バジーニ+ジェレミー・スタンルーム編 松本俊吉(1963-)訳
春秋社 06年5月刊 ¥3,360 46判424頁 ISBN:4393323084
■帯文より:科学者・神学者も含め、現代を代表する哲学思想家22人にインタビュー。彼らが著作に書けない赤裸々な本音も引きだしつつ、科学の成果がもたらす新たな倫理的課題や、政治・社会との関わりによって多様化する〈知〉の情況と哲学の意味を明らかにする。
●丹治信春(1949-)監修による新シリーズ「現代哲学への招待」の第一弾です。アラン・ソーカル、リチャード・ドーキンス、ヘレナ・クローニン、ピーター・シンガー、サイモン・ブラックバーン、レイ・モンク、マイケル・ダメット、ヒラリー・パトナム、ジョン・サール等々が登場するようです。

捏造された聖書
バート・D・アーマン著 松田和也訳
柏書房 06年5月刊 ¥2,310 A5判294頁 ISBN:4760129421
■帯文より:『ダ・ヴィンチ・コード』が語らなかったキリスト教の聖典をめぐる新事実。
■版元紹介文より:聖書は、その最初期から、多くの人によって書き写されてきた。そこではたんなる誤写のみならず「捏造」すら行われてきたという。聖書の「原典」とはいかなるものなのか。誤謬と捏造に満ちた聖書の謎を巡るノンフィクション!
●原題は"Misquoting Jesus:The Story Behind Who Changed the Bible and Why"です。著者はノースキャロライナ大学宗教学部長。『ダ・ヴィンチ・コード』の直接的な関連書ではありませんが、『ユダの福音書を追え』などと一緒に本棚の周辺に置いておくと面白い
のではないかと思います。
●柏書房の既刊では、『レンヌ=ル=シャトーの謎――イエスの血脈と聖杯伝説』がふたたび売れているようです。本書の著者3名の内、マイケル・ベイジェントとリチャード・リーはダン・ブラウンの『ダ・ヴィンチ・コード』を本書からの「盗作である」と主張して裁判を起していました(いわゆる「ダ・ヴィンチ・コード裁判」)が、先月無罪判決が出ています。ブラウンは『ダ・ヴィンチ・レガシー』(集英社文庫)の小説家ルイス・パーデューからも盗作疑惑で訴えられていましたが、これまた無罪。

デモステネス弁論集 1
デモステネス著 加来彰俊+北嶋美雪+杉山晃太郎+田中美知太郎+北野雅弘訳
京都大学学術出版会 06年5月刊 ¥5,250 46判667+24頁 ISBN:4876981639
●全7巻で、これまでに3巻と4巻が刊行されています。現在刊行中の「西洋古典叢書」第III期では、あと第2巻が出る予定。

エリコ
島田雅彦文・絵
インデックス・コミュニケーションズ 06年5月刊 ¥1,260 B6判71頁 ISBN:4757303831
■版元紹介文より:でおじいさんと一緒に暮らしていた少女が、密林を抜け草原と砂漠を経て、海を越え、都市に向かい、廃虚に至る壮大な旅の記録。
●「サンサンス絵本シリーズ」の第一弾として『私を忘れないで』(藤原智美=文/森祐子=絵)とともに発売。島田さんの絵はなかなか味わいがあっていい感じです。担当編集者氏によれば、「今あらためて問われる「家と家族」について、作家、詩人、アーティストなどのクリエーターが語る、ビジュアルブック・シリーズ」だそうです。
●もう何年も続いている「絵本」ブームですが、大人から子供まで幅広い読者を対象とするこのジャンルは、編集者ならば一度はチャレンジしてみたい分野。もはや絵本は児童書に収まりきらない広がりがあると思います。コミックも絵本もどんどん人文書棚に入ってきて欲しいというのが私の希望です。
●同書のサイン会が丸善丸の内本店2階で6月13日(火)19:00から予定されています。参加方法:は、同店にて対象書籍を購入した方、先着100名様に整理券を配布とのこと。問い合わせ先は丸善丸の内本店、電話は代表で03-5288-8881です。

共感覚――もっとも奇妙な知覚世界
ジョン・ハリソン著 松尾香弥子訳
新曜社 06年5月刊 ¥3,675 46判348頁 ISBN:4788509989
■帯文より:音を聞くと色が見える……、味に形がある……。一つの刺激から複数の感覚が生じる「共感覚」。この希有で奇妙な心の現象への心理学の探求からわかってきた、脳と心のしくみ。

わたしって共依存?
河野貴代美(1939-)著
NHK出版(日本放送出版協会) 06年5月刊 ¥1,365 46判228頁 ISBN:4140811145
■版元紹介文より:人に頼り頼られるってすばらしい! 彼氏、女友達、母親……誰かから離れられない自分を「他人への依存症?」と不安に感じるアナタに、それは心の病ではなく、心地よい関係を保つための試行錯誤だとアドバイスする。映画や小説の共依存関係を見ながら、「関わり恐怖」を解きほぐし、人と関係をもつ勇気と心地よさを力強く後押ししてくれる1冊。
●共依存co-dependencyについて語られるとき、たとえば書名には、「他人やモノで自分を満たそうとする人たち 」「自己喪失の病」 「いつも他人に振りまわされる人たち」「愛情という名の支配」「愛情の病理」 といった表現が使われていて、大勢の現代人がつい思い当たって不安になってしまうところですが、本書はポジティヴな側面を強調してくれているようで、やっと落ち着いて自分を見直せる本が出たといったところでしょうか。関連書の中で一番売れていく気がします。著者は、お茶の水女子大学開発途上国女子教育センター客員教授で、日本フェミニストカウンセリング学会代表理事。
●なお、共依存を扱っている本でもっとも英語圏で読まれている本の一冊であるメロディ・ビーティの『共依存症』(講談社)は現在品切。文庫化すればいいのに。
●ちなみに私個人の関心は、共依存と、哲学で言うところの「共実存」(ナンシーなど)の議論をどうリンクできるかといったところ。そんな本を月曜社で企画してみたいものです。しかし書き手がまだ見つかりません。

隠喩としての病い エイズとその隠喩
スーザン・ソンタグ(1933-2004)著 富山太佳夫(1947-)訳
みすず書房 06年5月刊 ¥3,675 46判312頁 ISBN:4622072246
●新装版です。

グラウンド・ゼロと現代建築
飯島洋一著
青土社 06年5月刊 ¥2,520 46判280頁 ISBN:4791762711
■版元紹介文より:ツインタワー崩壊の思想的意味とは。衝撃的WTC崩壊から生じた無残な跡地グラウンド・ゼロが、同時代に向けて発信し続けるメッセージとは何か。ビル消滅を見たいと願った人びとの心情とは。9・11の勃発を、アメリカ文明に内在する病理として鋭敏に予見した存在とその根拠とは。大胆で重層的視座から浮き彫りにされる、事件の数奇な宿命と必然。現代の深層意識を探る画期的考察。

スパイ事典
リチャード・プラット著 川成洋訳
あすなろ書房 06年5月刊 ¥2,100 A4変型判64頁 ISBN:4751523279
■版元紹介文より:盗聴、盗撮から暗号の解読、秘密兵器まで、知られざるスパイの実像に迫るビジュアルブック。秘密の道具キット/二重スパイ/暗号/ほか。
● 「知」のビジュアル百科シリーズの一冊。読者対象が小学校高学年~中学生となっていますが、もちろん大人でも楽しめます。こういうのが学校の図書館にあったら嬉しいですよね。

ガリレオの迷宮――自然は数学の言語で書かれているか?
高橋憲一(1946-)著
共立出版 06年5月刊 ¥9,450 A5判560頁 ISBN:4320005694
■版元紹介文より:ガリレオ手稿72(『ガリレオ全集』に未収録の写本を含む)を、まったく新たな視点から徹底的に分析し、ガリレオの運動論形成過程について通説を覆す新説を提出。今日、「数理物理学」において自明視されている自然観や科学方法論がガリレオにおいてはじめて立ち現れてくる場面を詳しく分析した。「自然は数学の言語で書かれている」とのガリレオの名言の背後には「数学」と「自然学」の二つの学問を統合するという理念上の困難が隠れている。その困難を克服する歩みは、迷宮での彷徨になぞらえられる。
●ガリレオ手稿の本格的解読。手稿の写真もあり。 まえがきやあとがきがPDFで公開されています。

プラハ日記――アウシュヴィッツに消えたペトル少年の記録
ハヴァ・プレスブルゲル著 平野清美+林幸子訳
平凡社 06年5月刊 ¥1,680 46判268頁 ISBN:4582832806
■版元紹介文より:級友や親類が次々とナチスに連行される中、恐怖に怯え不条理に怒りながらも、常に自由と人間らしい楽しみを求め、最後まで冷静な眼差しで社会を批評し続けた14歳の少年による歴史の証言。

日本占法大全書
佐々木宏幹+藤井正雄+山折哲雄+頼富本宏監修
四季社 06年5月刊 ¥8,400 A5判726頁 ISBN:4884053362
●手相・人相・家相・姓名判断・気学・易・十二支占い・四柱推命・おみくじ・占い暦などについて、「実用的かつ宗教学・社会学的に」解説してあるそうです。
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by urag | 2006-05-28 23:36 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
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