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2006年 05月 08日

第三次世界大戦

共同通信によれば、アメリカのブッシュ大統領は5月5日にテレビインタビューに答えて、911以降のいわゆる「テロとの戦い」は「第三次世界大戦」である、と述べたようです。

「CNBCテレビとのインタビューで、2001年の中枢同時テロの際、乗っ取られたユナイテッド航空93便の機内で乗客がテロ犯と格闘したのは「第3次世界大戦での最初の反撃だった」と言明、「テロとの戦い」は「第3次世界大戦」であるとの認識を示した」とのこと。

数々の妄言で知られるジュニアですが(昨秋倒産したぺんぎん書房から03年に刊行されていた秀逸な『ブッシュ妄言録』全2巻をご参照)、この発言はかなりグロテスクです。「世界」をどんなものと考えているのかが露骨に読み取れます。つまり世界とはアメリカ合衆国を中心とした利害関係のすべてを政治的に言い表した特異なグリッド状の存在なのです。

J・G・バラードの短篇に「第三次世界大戦秘史」というのがあります(同著者の短編集『第三次世界大戦秘史』福武文庫、1994年刊に収録)。これは、レーガン政権下のアメリカとゴルバチョフ政権下のソビエト連邦が戦闘状態に入るけれども、テレビのニュース番組では第三次世界大戦の勃発よりも、今にも死にそうなレーガンの健康状態を詳細に報道することの方が優先され、知らぬ間に大戦が終わっている、という皮肉を描いたフィクションです。

バラードのこの作品は非常に面白いのですが、日本人はこうしたフィクションを笑えない「経験」をしています。昭和天皇の最晩年における健康報道の加熱ぶりを30代半ば以降の人ならばよく覚えていることでしょう。こんにちにおける皇室報道のいっそうの加熱ぶりを見ると、いつの日か、バラードの「予言」に近いことが起こるかもしれないとも思えます。

そうです、現在ですら、少なくとも、日本に直接的なかかわりのない世界各地の「戦争」は、国内の政治家や企業家、芸能人らが起すスキャンダルよりもずっと報道される機会が少ないですよね。ブッシュの「第三次世界大戦」発言はもっと真剣に批判されて良いはずですが、おそらくほとんどの日本人は真に受けず無関心のままでしょう。真に受けないのはいいにしても、その発言の背景はきっちり分析すべきなのですけれども。
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by urag | 2006-05-08 22:34 | 雑談 | Trackback | Comments(0)
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