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2006年 05月 04日

問題作?ドキュメンタリー映画「ザ・ブリッジ」予告編

エリック・スティール Eric Steel 監督によるドキュメンタリー映画『ザ・ブリッジ』(2006年、93分)は、サンフランシスコにあるゴールデンゲートブリッジ(金門橋)を2004年に一年間定点撮影を続けたことによってカメラが捉えた、投身自殺の現場映像と、遺族の証言から構成されている実写作品である。

時事通信によれば「上映会では「暗い問題に光を当てた」と称賛する声が上がる一方、市議会には「猟奇的」「模倣者が増える」との批判が殺到している」とのことで、共同通信でも「自殺のほう助に当たるか防止効果があるかで議論を呼んでいる」と報道されている。

撮影された投身自殺(suicide jump)は計23件。トライベカ映画祭のサイトで予告編が公開されているけれども、飛び降りる直前の2名の映像がフィーチャーされていて、何とも言えず濃密な暗さがそこにある。随分と話題になっているようだから、遠からずきっと本編の海賊版がネット上でも出回るようになるのだろう。

私はこの映画全編を見ているわけではないので何とも言えないけれど、予告編のフィルムからですらにじみ出てくるあの異様なまでに静かに張り詰めたタナトスは、見る者の模倣や共振を生まないとは限らないと思う。ほう助に当たるか防止効果があるかはまさに見る側の受け止め方でかなり変わるだろう。

ゲームや映画、小説や漫画、音楽などが現実の事件や犯罪に対して影響が「ある」というのはウソだ、と仰る評論家や学者先生が世間にはいるわけだけれども、私はそんな意見を聞くたびに噴飯物だなと思う。影響のない作品やメディアなど存在しない。それが好影響であれ悪影響であれ、私たちは作品やメディアから何かしらの影響や刻印を必ず蒙る。

むしろ何かしらの影響を必ず及ぼすからこそ文化や経済活動が成り立ち、評論家だの学者だのが活躍できるのである。書籍や雑誌も然り。出版活動というのはアナロジカルに言えば爆弾の製造に等しい。だからこそ公安は国内の思想活動を監視している。「国家の安寧」のために。やれやれ。

私たちの意識は完全なスタンドアローンであることが物理的にできない。物理的に外界から人間を遮断することはむしろ「拷問」であることが軍事的にも科学的にも知られている。この手の研究の古典『暗室のなかの世界――感覚遮断の研究』(ヴァーノン著、みすず書房、1969年)などを参照されたし。

なお参考までに、ABCのニュースでは、ゴールデンゲードブリッジから2000年に身投げして生還した、双極性障害をわずらっている25歳の男性が、映画『ザ・ブリッジ』の上映をどう受け止めているのかが報道されており、スティール監督のコメントも読める。

by urag | 2006-05-04 23:04 | 雑談 | Comments(1)
Commented at 2006-09-27 23:41 x
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