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URGT-B(ウラゲツブログ)

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2006年 04月 23日

今週の注目新刊(第48回:06年4月23日)

世界共和国へ――資本=ネーション=国家を超えて
柄谷行人(1941-)
岩波新書(岩波書店) 06年4月刊 777円 新書判236頁 ISBN4-00-431001-6
●装いを一新した岩波新書ですが、カバーがぺらっとした紙で何となく安っぽい感じがしてしまうのが残念。柄谷さんのこの本は『トランスクリティーク』で述べた事を一般読者向けに平易に書き直したもの。全体的に分かりやすくなっているとはいえ、多少の教養や予備知識がなおも必要であることは確かです。分からない用語を気にしすぎているとかえって読みにくいかも。
●まず結論部分である第IV部第4節の「世界共和国へ」を読んでみて、それから「序」にかえります(逆でも可)。著者の言いたいことをつかんでおいてから、次には第I部から読んでもいいし、第III部第4章「アソシエーショニズム」へ飛ぶのもいいと思います。
●結論としては、新しい交換様式に基づくグローバル・コミュニティをつくること、そして各国の軍事的主権を国連に譲渡すること、これが「戦争」「環境破壊」「経済的格差」を解決する方途だと、本書は述べています。
●新書ではありますが、この春までに刊行された人文書の中で特筆すべき一冊であることは間違いありません。この本以上の「分かりやすさ」と「分析」と「理念」の提示を目指せるかどうかというのが、これからの若い書き手の課題になるのではないでしょうか。

愛と暴力の現代思想
矢部史郎+山の手緑著
青土社 06年4月刊 1,890円 46判252頁 ISBN:4-7917-6263-0
●この本は素晴らしい。しかし矢部氏の書いた路上喫煙論は私には全くいただけない。

今週の注目新刊(第48回:06年4月23日)_a0018105_1818081.jpg芸術と生政治――現代思想の問題圏
岡田温司(1954-)著
平凡社 06年4月刊 3990円 A5判298頁 ISBN:4-582-70261-9
■帯文より:フーコーの提起からアガンベンやエスポジトの議論まで、「生政治」の閾を「芸術」の側面から鮮やかに照射する。私たちを取り巻く問題圏をその近代的な根源にまで遡る。生殺与奪の権を握られ、生を剥き出しにされた現代。生命はだれのものか。
■目次より:
プロローグ
I ミュージアムとパノプティコン
II 絵画の「衛生学」――保存・修復をめぐる「生政治」
III 芸術の身体、生政治の身体
IV 芸術作品は有機体か?
V 鑑定と鑑識――芸術的同一性と司法的同一性
VI 生政治/死政治の彼岸へ

あとがき
事項索引・人名索引

建築 触媒 身体
矢萩喜従郎(1952-)著
エクスナレッジ 06年4月刊 2,730円 A5判332頁 ISBN:4-7678-0523-6
●『平面 空間 身体』(誠文堂新光社、2000年)、『多中心の思考』(誠文堂新光社、2001年)、『空間 建築 身体』(エクスナレッジ、2004年)などに続く、最新著。本屋さんでたいていは建築書か芸術書に置いてあるのだろうけれど、この著者の多彩な才能と越境的思考を評価すると、日本の現代思想の棚にもあったほうがいいかもしれない。

グラフィックデザイナーのブックデザイン――モダニズムの時代にさっそうと出現した日本のデザインコンシャスなグラフィカルブック
小柳帝著
ピエ・ブックス 06年4月刊 A5判194頁 ISBN:4-89444-515-8
■目次より:
はじめに
巻頭特集 日本民話グラフィック
第1章 人物編
 先駆者の時代 (亀倉雄策/河野鷹思/橋本正/原弘)
 パイオニアの時代 (杉浦康平/粟津潔/田中一光/細谷巌/福田繁雄)
 イラストレーションの時代 (久里洋二/真鍋博/柵原良平/灘本唯人/堀内誠一/葵・フーバー・河野)
第2章 雑誌編
 グラフィックデザイン/リビングデザイン/デザイン+デコラ/奥様手帖/新宿プレイマップ
第3章 出版社(団体)編
 草月アートセンター/美術出版社
書名索引
●眺めているだけでうっとりできる数々の秀作本を一堂に会しています。掉尾を飾る「美術出版社の黄金時代」のページは、まだ版元が存続しているだけに物寂しい感じです。3ページしかないので、掲載されている本はわずかですが、これ以外にも確かに数々の名作があります。

ノアの方舟
シュペルヴィエル(1884-1960)作 三野博司訳
論創社 06年4月刊 1,575円 46判158頁 ISBN:4-8460-0446-5
●表題作のほか「エジプトへの逃避」など6篇を収録とのこと。『海の上の少女――シュペルヴィエル短篇選』(綱島寿秀訳、みすず書房、2004年)でも 「ノアの方舟」は読めます。ハヤカワ文庫版『ノアの方舟』(嶋岡晨訳)は品切の様子。

by urag | 2006-04-23 19:17 | 本のコンシェルジュ | Comments(0)


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