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2006年 03月 24日

アマゾンの版元直取引が本格化

「新文化」「文化通信」などの業界紙によれば、アマゾン・ジャパンは「出版社から商品を委託条件で直接預かる「e託販売サービス」を近く開始する」ようです。

これは「24時間以内に発送」できる商品を増やすことが目的だそうです。アマゾンはこれまでも、「AMP(アマゾン・マーケット・プレイス)に出品しませんか」と版元に打診してきた経緯があります。AMPに参加する際にかかる手数料やら発送の手間やら何やらを考えるとさほどおいしい話ではなく、弊社の場合は結局ペンディングになったままでした。ほぼ同様の判断をした他社版元さんもいらっしゃることでしょう。

それを今度は年会費9450円を払ってくれれば品を預かるというのです。AMPで「プロマーチャント登録」をした場合に毎月支払わねばならない金額と比べて、この会費は格安です。また、AMPでは本が売れたらコミッションとして一冊あたり定価のほにゃらら%(高い)を徴収されますけれども、今回の直接委託制ではアマゾンの取り分を何%に設定しているのか、興味深いところです。※

 ※業界紙の続報によれば、「年間20冊を正味60%程度で」預かるとのこと。[06年3月29日]

直接委託制に参加すると、リアルタイムの販売データを提供してもらえるそうです。なるほど、大手書店チェーンから販売データをもらうためにそれなりの金額を支払っている版元が多く存在するのですから、アマゾンが提示している契約内容はひとつのモデルケースになるでしょう。

いずれにしても、あの手この手で版元との直取引を模索してきたアマゾンはいよいよ本腰を入れて版元を取り込もうとしているわけです、取次をすっとばして。取次がどう思っているかは知りませんが、今までAMPでプロマーチャント登録をした版元にしてみれば今回の直接委託制は「なんじゃそりゃ」というあたりでしょう。これまで支払ってきた手数料の差額を返せ、とも言いたくなるだろうことは、想像に難くありません。

「24時間以内に発送」可能な商品を増やせば、客はおそらく喜ぶでしょう。顧客満足度を追求するためには、流通の円滑化や効率化や迅速化の邪魔になったり足かせになったりするような「旧態」を、どんどん不要のものとしなければなりません。なるほどそれはビジネスとしては正しい。

アマゾンが業界の旧態に挑戦しているところには見るべきものがあるとは思います。ただ、業界全体の課題として、この先、「フェアで合理的な取引」という看板を掲げてどの勢力がどんな論理を持ち出してくるのかについては、よくよく見極めなければならない、とも思っています。

アマゾンの話ではなくあくまでも一般論として述べますが、私は「顧客満足度」という大義の陰に潜むある種の胡散臭さを忘れたくありません。大義の美名のもとに何をやっても取引先との「力関係の範囲内」で正当化されてしまう危険性が、そもそも市場においては常に充満しているし、実際に力ずくの正当化が横行している。私はそうしたビジネスが本当の意味で「フェア」だとは思いません。現代における公正という概念の虚しさ。

***

・・・話は分かりますが、「国民一人当たりの借金」に関するニュースについて、最後に一言。

ちょうど二年前、日本の借金は約670兆円で、国民一人当たりに換算すると約525万円でした。それが今では国全体で約813兆円、国民一人当たりでは637万円になってしまいました。これが貯金だったらものすごい利率で歓喜雀躍といったところですが、いかんせん借金なのです。

格差増大社会がますます進展し、一方では高級車や高級マンションが売れ、他方では借金苦で自殺する人が増えています。私たちの未来はますますすさんでいくような気がしてなりません。そんなとき出版人は、書店人は何ができるでしょうか。出版社への就職を希望しているあなたなら、どんなことを考えますか。
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by urag | 2006-03-24 17:59 | 雑談 | Trackback(1) | Comments(0)
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Tracked from 歩行と記憶 at 2006-03-26 12:14
タイトル : [本屋編]あちら側からのビジネス
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