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2006年 03月 19日

今週の注目新刊(第43回:06年3月19日)

リベラリズム 古代と近代
レオ・シュトラウス(1899-1973)著 石崎嘉彦+飯島昇蔵=訳者代表
ナカニシヤ出版 06年3月刊 税込4,620円 A5判464頁 ISBN4-88848-831-2
■版元紹介文より:<気概>と<節度>――真のリベラリズム論。古代の哲学的思考の核心を取り出すことにより、疎外された近代的「自由」と近代的合理主義を超克し、現代人に「気概」と「節度」を取り戻させる、有徳的な生のための哲学的リベラリズム論。本邦初訳の論文集。
■目次より:
序文
第一章 一般教養教育とは何か
第二章 一般教養教育と責任
第三章 古典的政治哲学のリベラリズム
第四章 『ミノス』について
第五章 ルクレティウスについての覚え書き
   一 上昇
   二 第一巻について
   三 第二巻について
   四 第三巻について
   五 第四巻について
   六 第五巻について
   七 第六巻について
第六章 いかにして『迷える者の手引き』の研究を始めるか
第七章 パドゥアのマルシリウス
第八章 エピローグ
第九章 『スピノザの宗教批判』への序言
第十章 善き社会に関する諸々のパースペクティヴ
原注
訳注
訳者あとがき
人名索引
●ブッシュの側近のウォルフォウィッツが『アメリカン・マインドの終焉』で著名なアラン・ブルームの弟子で、ブルームがシュトラウスの弟子であることから、遡行的にシュトラウスが「ネオコンの理論的源流」と見なされているらしいことは、私にとってはとても違和感のあることです。シュトラウスは理想主義的であるとは言えても、保守的というのとは違うと私は思っています。
●シュトラウスは間違いなく、20世紀における最高の政治哲学者の一人であり、カッシーラーやフッサール、ハイデガーのもとで学んだ秀才で、カール・シュミットとの「対決」やアレクサンドル・コジェーヴとの交流などによっても知られています。すでに4冊の訳書がありますが、そのうち2点は残念ながら品切。今後も翻訳が続くと耳にしていますが、『専制について』(コジェーヴとの往復書簡を併録。某社より刊行予定と聞きます)や、『迫害と著述の技法』(ナカニシヤ出版より刊行予定)などが待たれるところです。論文・講演集の『ユダヤ哲学と近代性の危機』なども訳されてほしいと思います。
●シュトラウスの既訳書は以下の通りです。
『自然権と歴史』塚崎智+石崎嘉彦訳、昭和堂、1988年(品切)
『ホッブズの政治学』添谷育志+谷喬夫+飯島昇蔵訳、みすず書房、1990年
『政治哲学とは何か』石崎嘉彦訳、昭和堂、1992年(品切)
『古典的政治的合理主義の再生』トマス・L・パングル編序、石崎嘉彦監訳、ナカニシヤ出版、1996年
●このほかに、ハインリヒ・マイアーの『シュミットとシュトラウス――政治神学と政治哲学との対話』(栗原隆+滝口清栄訳、法政大学出版局、1993年)の巻末に、シュトラウスの「カール・シュミット『政治的なものの概念』への注解」および「カール・シュミット宛の三通の書簡」が併録されています。マイアーのこの本はコンパクトですが、よく整理されている良書で、一押しの必読書です。

現代批評理論のすべて
大橋洋一編
新書館 06年3月刊 税込1,995円  A5判286頁 ISBN:4403250874
■帯文より:ポストセオリー時代の批評理論とは何か? 33のテーマ解説、103人の批評理論家紹介、55の用語解説に、コラム、入門書ガイド――現代批評のすべてがわかる文学理論小事典。
●非常に便利な「ハンドブックシリーズ」からの一冊。待ってました!と拍手したくなる労作です。目次内容はとても細かいので、リンク先をご覧ください。一口に批評理論と言っても、文学、哲学、歴史学、社会学、心理学、カルチュラル・スタディーズ等々を横断する広大な領域で、棚作りに苦心されている書店員さんは多いはずです。大書店の人文書担当の方はぜひ読んでみてください。おおいに参考になるはずです。ハンドブックシリーズはバックヤードに資料として必備しておくと便利でしょう。
●ひとつだけ今後の期待をこめて言えば、いつの日か本書が増補される折には、ぜひ美術批評についての項目や人名を増やしてほしいなあと思います。限りある頁数の中であれもこれもというわけにはもちろんいかないとは思いますが・・・。

横割り世界史
武光誠編著
ナツメ社 06年4月刊 税込1,523円 46判271頁 ISBN:4816340807
■カバー宣伝文より:わかりやすく簡潔な文章と豊富な図版を使って、全世界の歴史を同時代で捉える横割りで解説。これまでにない、あたらしい世界観に触れてください。
■版元紹介文より:各文化圏(ヨーロッパ、アジア、日本)別に歴史を解説するのではなく、ある地域で重要な事件がおきたとき、そのほかの地域はどの時代にあったのかを理解できる構成にした、世界史の本です。最近のセンター試験の世界史問題などでは、各国の通史だけではなく、ある歴史的な事件がおきた同時期、日本では何時代であったかのような問題が常設されています。本書は、そうした受験対策としてのみならず、世界史の大局的理解にも役立つように解説しています。見開き見本はこちら
●「図解雑学」シリーズの一冊。地域別、国別の通史と違って、洋の東西を問わず同時代に何が起こっていたかを見る視点というのは、実に様々な発見がありますし、ブックフェアのネタ探しに最適。同時代史のダイナミズムをまざまさと見せてくれたのは、松岡正剛さんらによる未曾有の大年表『情報の歴史』(NTT出版、1996年増補版刊)でしたが、今回の新刊はそれを補完する読み物として有効活用できるのではないかと思います。
●なお今月刊行される「図解雑学」は本書のほか、『複雑系』『建築のしくみ』『ローマ帝国』『社会学』『心理学』などがあります。

心と身体(からだ)の世界化
港道隆(1953-)編
人文書院 06年3月刊 税込2,625円 A5判220頁  ISBN:440934031X
■版元紹介文より:「ウイリアム・バロウズは地域通貨の夢を見るか?――紙幣に見るアメリカのグローバリゼーションとオルタナティヴ」、「グローバリズムとアメリカの精神分析」、「もうひとつの世界はほんとうに可能なのか?――オルター・グローバリゼーション運動の現在」などの論考を収録。甲南大学人間科学研究所叢書「心の危機と臨床の知」シリーズ第7巻。

嘘と貪欲――西欧中世の商業・商人観
大黒俊二(1953-)著
名古屋大学出版会 06年3月刊 税込5,670円 A5判244+46頁 ISBN:4815805326
■版元紹介文より:商人・商業への蔑視が肯定へと転換していくトポスの変容を、スコラ学文献・教化史料・商人文書に表れた徴利、為替、公正価格論などをめぐる逆説的な展開からたどり、中世経済思想の隠された水脈を捉え直す。徴利禁止から近代的銀行の源流・モンテ設立へといたる、壮大な商業の精神史。
●現代人の「ビジネス」観を批判的に省察する必要を常々感じている自分にとっては、こうした歴史書は非常にありがたい存在です。トップビジネスマンの「啓発書」を読むより断然重要です。

哲学者広松渉の告白的回想録
廣松渉著 小林敏明編
河出書房新社 06年3月刊 税込2,100円 46判221頁 ISBN:4309243746
■帯文より:幼少期、そしてコミュニストとしての青春を経て、ニュー・レフトの理論家へ――はじめて明かされる事実とともに廣松渉の新たな姿が浮かび上がる。ただ一度だけ自ら語った、生涯の軌跡。希有な思想家はいかにして生み出されたのか――。
●「知性」という言葉はこの人にこそ相応しいもので、この先達に比べると後続の世代はアマチュアにすら見えます。20世紀後期の日本を代表する「知性」の歩みは、時代の証言としても貴重でしょう。
●なお、河出書房新社さんでは、「創業120周年記念出版」として、『[増補新版]骰子の7の目』全6巻(5月より毎月刊行)と、『[新装版]ゲオルク・ビューヒナー全集』全1巻(5月下旬刊行)の発売が予定されています。注目です。

世界の図書館百科
藤野幸雄編著
日外アソシエーツ 06年3月刊 税込14,910円 A5判845頁 ISBN:4816919643
●一般読者向けに作られたものではないでしょう。図書館が購入するのかな?

ユトレヒト詩篇挿絵研究――言葉の織りなしたイメージをめぐって
鼓みどり(1957-)著
中央公論美術出版 06年2月刊 税込42,000円 A4判520+60頁 ISBN:4805505184
■版元紹介文より:九世紀初頭に作成されたカロリング朝ランス派の代表作である『ユトレヒト詩篇』の見出し挿絵の画面を作りあげている仕組みに注目し、その発想の源泉を探る。一六六点の見出し挿絵と詳細な図様分析表を付録として併載し、広く中世キリスト教美術研究に寄与する労作である。
●初版は300~500部くらいでしょうか。近くの区立図書館が購入することは期待できそうにないなあ。

変身
フランツ・カフカ著 池内紀訳
白水uブックス(白水社) 06年3月刊 税込599円 新書判147頁 ISBN:4560071527
●池内紀さん個人訳による『カフカ小説全集』が二年半前に完結して、今度はuブックスで「カフカ・コレクション」というのが始まりました。『変身』はそれの第一弾。第二弾は来月、『失踪者』の予定だそうです。

メタモルフォーシス――ギリシア変身物語集
アントーニーヌス・リーベラーリス著 安村典子訳
講談社文芸文庫(講談社) 06年3月刊 税込1,155円 文庫判234頁 ISBN:4061984365
■版元紹介文より:見果てぬ夢か?終わりのない罰か? 名前の意味から解放奴隷の出身とされるリーベラーリスが、神話やフォークロアに材を求め創造した41の変身物語。厳しい自然の中で人が神や妖精と共に生き、愛を交わし、闘った古典世界。死すべき身の人間の見果てぬ欲望を、神は憎み、時に憐んで、人を鳥や獣や星へと変身させる。善悪の判断や装飾を一切加えない素朴で力強い物語は、まさに文学の豊かな源泉。ギリシア語原典からの本邦初訳。
●古代ローマの大詩人オウィディウスによる『変身物語』(全2巻、岩波文庫)に先行する変身譚です。読み比べしたいですね。

クリスタル☆ドラゴン (24)
あしべゆうほ著
秋田書店 06年3月刊 税込410円 コミック判186頁 ISBN:425309550X
●漫画かよ、と思わないでください。大好きなんです。そろそろ物語も佳境に・・・と思っていいのかなあ。
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by urag | 2006-03-19 00:34 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(4)
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Commented by けん at 2006-03-21 00:41 x
レオ・シュトラウスに関する意見に同感です。小生、わけあってレオ・シュトラウスを毎年読んでいますが、おそらく、多分にネオコンの片思いというのが現在のところの小生の見解です。月曜社の暴力批判論選集に期待しています。サミュエル・ウェーバーやハマハーなどは、やっと日本での紹介が始まり、うれしい限りです。
Commented by urag at 2006-03-22 01:04
けんさんこんにちは。温かい共感と激励のお言葉をありがとうございます。暴力論叢書は今年中にあと数点は刊行したいなと思っています。頑張ります!
Commented by 佐藤 at 2006-04-03 11:59 x
暴力論叢書のラインナップについておうかがいしたいのですが、ハーマッハー、フェンヴズはなにが翻訳されるのでしょうか。ベンヤミン『暴力批判論』を論じた Afformativ, Streik の邦訳を期待しているのですが。
Commented by urag at 2006-04-03 13:54
佐藤様こんにちは。お問い合わせをありがとうございます。暴力論叢書で刊行されるハーマッハーの訳書にはAfformativ, Streikは収録されていませんが、この論文を含むハーマッハーのベンヤミン論集を以前から準備していますので、遠くない将来、刊行できることでしょう。暴力論叢書で翻訳されるのは"Heterautonomien"という論考です。フェンヴズの巻にも彼のベンヤミン論が収録されるのですが、詳細はそのうち公開できるのではないかと思います。


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