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2006年 03月 17日

オンライン書店におけるデータ誤登録

オンラインかリアルかを問わず、本屋さんにとって書誌データベースというのは欠くことのできない商売のための基本ツールだろうと思います。データの登録は人力で行われるため、当然ながら情報が間違っているというケースがあります。そうした誤登録を見つけた場合、皆さんはそれを本屋さんに教えてあげますか、それとも放っておきますか。

それが例えば品切絶版書の場合でも知らせてあげますか。たとえば紀伊國屋書店BOOKWEBでのこんなケース。

『和声学 理論篇』 ルネ・ジュール・デュボス/平尾貴四男/音楽之友社/1978年04月出版/絶版

この本の著者はルネ・デュボスではなく、テオドール・デュボワです。紀伊國屋BOOKWEBではこの『和声学』がデュボスの作品一覧の中に出てきてしまいます。これを最初に発見した時、私は驚きました。デュボスが和声学の著書を!? そんなことがあるかしらと思って、国会図書館のOPACで検索してみたら、やはり間違っていました。

この本には『実施編』(なぜか「へん」の字が違うのですが、これは版元の表記通りらしい)もあって、紀伊國屋BOOKWEBではこちらもデュボスの本になっています。ひでえなあ。

ちなみに、フランス生まれのアメリカの細菌学者であり生態学者であるデュボス(1901-1982)の本は、70年代までに一種流行と言えるくらいよく翻訳されていたのですが、80年代以降は数えるほどしかなく、今はほとんどの訳書が品切絶版で、中には古書店でもなかなか手に入りにくい書目があります。

松岡正剛さんが「千夜千冊」でデュボスを絶賛していますから、若い読者でぜひ読んでみたいと思っている方もそれなりにいらっしゃるのではないかと思うのですが、復刊ドットコムではあまり票が集まっていません。残念至極!

紀伊國屋書店BOOKWEBに話を戻します。デュボスの著書のひとつに『健康と病気』というのがあってすでに絶版なのですが、これの発行発売元が「角川SSコミュニケ-ションズ」となっています。この情報は正確ではありません。この本は「タイムライフブックス」が発行したものです。

「タイムライフブックス」というのは、タイム・インコーポレイテッドが運営していた書籍出版部門の日本における法人会社でしたが、1983年にセゾングループとタイム・インコーポレイテッドとの合弁によって、「西武タイム」として生まれ変わり、1990年に社名を「SSコミュニケ-ションズ」に変更、翌年にはタイム・インコーポレイテッドが株式を全面譲渡して事実上の撤退、10年後の2001年には角川書店グループの傘下に入り、昨年(2005年)、角川SSコミュニケーションズに社名変更した、という「歴史」があります。 角川SSコミュニケーションズの「会社の沿革」をご参照ください。

紀伊國屋書店BOOKWEBでは、社名変更や新会社に移行した場合は、書誌データの社名表記を過去のものも含め一挙に変えてしまうようです。これは紛らわしい! 絶版書目だから実害は少ないかもしれませんが、先の『和声学』も含め、BOOKWEBでの情報をもとに古書店を探しても混乱するだけです。

似たような例はほかにもあります。今はなきTBSブリタニカが発行していた本の発行発売元は「TBSブリタニカ(阪急コミュニケーションズ)と表示されています。これならまだ分かりやすいですよね。阪急コミュニケーションズも複雑な経緯を持っている出版社ですが、興味のある方はwikiなどで調べてみてください。

最後に一言。皮肉なことですが、紀伊國屋書店BOOKWEBでルネ・デュボスを検索すると、かつて紀伊國屋書店出版部で刊行されたデュボスの数々の訳書はまったくヒットしません。1964年『健康という幻想』、1970年『人間であるために』、1971年『目覚める理性』、1975年『人間への選択』といった本たちで、現在はいずれも品切絶版。これまでに新装版が出た書目もありますから、紀伊國屋書店の名誉のために言えばデュボスを軽視して放っておいたわけではないのです。

松岡正剛さんはこう言っています、「デュボスは20世紀の思想者として十指に入る格別の科学者なのである。はたしていまの日本人がどのくらいデュボスを知っているのかわからなけいけれど、もしこの名を初めて聞くようであるのなら、諸君はまだ科学と理性と生命の関係を知っていないということになる」と。

私から強いて一言、ヒントめいたコメントを付け加えるとすればこうです、こんにち地球規模の環境問題について心を痛めている人は、デュボスの著作から今なお多くのことを学ぶことができるでしょう。
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by urag | 2006-03-17 23:08 | 雑談 | Trackback | Comments(0)
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