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2006年 02月 13日

別冊「本」RATIO(ラチオ)01号

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本自体には、編集後記や創刊の辞などがないので、講談社BOOK倶楽部の該当ウェブサイトにある、「刊行の辞」などをチェックしなければなりません。表紙にはなかった謳い文句もこのサイトで見れます、「画期的本格派! まったく新しい思想誌、ついに発刊!」と。

誰が誰に向けて考えたコピーなのかは分かりませんが、「まったく新しい」という表現は使わないほうが信頼性が高まるような気もします(全く余計なお世話でごめんなさい)。それはともかくとして、内容は充実していますし、リチャード・ローティの特別寄稿(「予測不能のアメリカ帝国」)があるし、本体1700円は安い。さすが最大手。

詳しい目次は講談社の上記の該当ページを見ていただくとして、私が楽しみにしていたのは、連載「イタリア現代思想の最前線」です。第一回として掲載されたのはロベルト・エスポジトの論文「生政治、免疫、共同体」多賀健太郎訳と、ジョルジョ・アガンベンの論文「人間の仕事」土肥秀行訳、そして岡田温司さんの長文解説「イタリア現代思想への招待」です。

エスポジトの場合、既訳書には『政治の理論と歴史の理論―マキァヴェリとヴィーコ』(堺慎介=訳、芸立出版、1986年)があるばかりですが、こうやって最大手の版元の雑誌に載ったことで、今後注目が高まるのではないかと思います。

エスポジトの当該論文では「911」を論じており、「マンハッタンのツインタワーと同時に崩落したものとは、今日にいたるまで世界を支えつづけてきた二重の免疫システムにほかならなかったのだ」と述べています。弊社から刊行したサミュエル・ウェーバーの『破壊と拡散』の日本語版序文で、ウェーバーはデリダを参照しつつ「自己-免疫化」について言及していますが、エスポジトの議論との交点が想像できます。

アガンベンの論文は弊社より刊行予定の『思考の潜勢力』に収められているものです。ダンテにおける「マルチチュード」の形象を論じています。「人間の仕事は、本質的に可能態=潜勢力であり、(……)マルチチュードを必要とする。(……)人間の仕事は、特定の一民族でも一都市でも一共同体でもないマルチチュードをして政治の真の主体=主題となすのである」(訳文を一部書き換えました)。

「マルチチュードは潜勢力の一般的な存在形態である」、「マルチチュードはあらゆる特定の共同体を超えていく」というくだりもあります。ぜひ皆さんもお読みください。

岡田温司さんの解説の小見出しを追ってみます、「ネグリvs.カッチャーリ」「否定的なるものの到来――1970年代」「政治の脱構築と「弱い思考」をめぐって――1980年代」「共同体と生政治――1990年代以後」「女性の思想家たち」「宗教をめぐって」「エスポジトの三連画――コムニタス、イムニタス、ビオス」「アガンベンと「潜勢力」」。

多数の思想家が扱われていて、小見出しごとに名前を書き出してみようと思ったのですが、そこまでする時間が残念ながらありません。

風の噂によれば、次号は今年の秋だとか。楽しみです。(H)
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by urag | 2006-02-13 18:46 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
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