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2006年 01月 15日

今週の注目新刊(第34回:06年1月15日)

年末と年始の発売分を併せてのピックアップになりますので、少々多めの点数です。今回の一番の注目は何と言っても、ディディ=ユベルマンの大著『残存するイメージ』(人文書院)です。高価ですが、そんなことを気にしていられません。縦横無尽に展開されるヴァールブルク論。内容、ヴォリューム、造本、何を取っても素晴らしいです。しばらくは頬ずりしたり撫で回したり、座右に置いておくことでしょう。こうした行為もまた読書の愉楽の一環。

***

残存するイメージ
ジョルジュ・ディディ=ユベルマン(1953-)著 / 人文書院 / ¥10,290
●ディディ=ユベルマンはデリダ以降のフランス現代思想においてもっとも注目されている思想家です。美術史の仕事がメインですが、芸術書売場だけでなく、人文書としてもキチンと扱われるべきです。
●訳書は以下の通り。『アウラ・ヒステリカ:パリ精神病院の写真図像集』谷川多佳子+和田ゆりえ訳/杵渕幸子解説/1990年9月/リブロポート、『ジャコメッティ:キューブと顔』石井直志訳/1995年5月/PARCO出版、『フラ・アンジェリコ:神秘神学と絵画表現』寺田光徳+平岡洋子訳/2001年5月/平凡社、『ヴィーナスを開く:裸体、夢、残酷』宮下志朗+森元庸介訳/2002年7月/白水社、『イメージ、是が非でも』平凡社近刊。

色彩の本質◎色彩の秘密
ルドルフ・シュタイナー著 / イザラ書房 / ¥2,625

天体の図像学
藤田治彦著 / 八坂書房 / ¥3,990
■版元紹介文より:古代ギリシア・ローマから20世紀のモダン・アートに至るまで、ヨーロッパだけでなく西アジアや新大陸までを視野に含めつつ、太陽・月・星・地球などの天体が、絵画や彫刻にどのように描き表されて来たかを、豊富な図版でたどり、独自の視点で考察する。気鋭の学者渾身の刺激に満ちた新しい美術史!!
●図版多数。主に西洋におけるそれが研究されています。まさに読みたかった主題。

音楽する脳
ウィリアム・ベンゾン著 / 角川書店 / ¥2,310

みるきくよむ
クロード・レヴィ=ストロース著 / みすず書房 / ¥3,045

図書館の政治学
東条文規著 / 青弓社 / ¥1,680
■版元紹介文より:戦前・戦中期の図書館界は、文部省などの行政組織の意向を受け、検閲や思想善導、選書を積極的におこないながら、天皇制を利用して全国に図書館を設置しようと試みていた――。図書館界発展の欲望の高揚と挫折の歴史から、彼らの戦争責任・戦後責任を問う。
●政治(ここで言う政治は文化と背中合わせの社会的な力関係や権力構造のことを指しています)から無縁な本というのは実際には存在しません。すべての本は政治の磁場に何かしらの形でかかわったりからめ取られたりしているわけです。そして、特定の本を集める行為もまた政治的です。政治の現状が蒐集には反映されるものです。例えば戦時が顕著な例でしょう。そうした関心から、この本にはぜひ目を通しておきたいのです。

言葉と建築
エイドリアン・フォーティー著 / 鹿島出版会 / ¥5,775

大杉栄訳ファーブル昆虫記
ジャン=アンリ・ファーブル著 / 明石書店 / ¥6,300
●これは親本がずいぶん古い本ですが、当時のベストセラーということもあってか、まだ古書市場でさほど高価でもなく手に入ります。大杉栄が昆虫記に熱中していたことは有名ですよね。ちなみにファーブルのひ孫のヤン・ファーブルはアーティストとして有名。ベルギーの出版社IMSCHOOTからヤンのアーティスト・ブック"FABRE'S BOOK OF INSECTS"の第一巻が刊行されたのは1999年でしたね。アメリカの某大学の構内にある書籍購買部で一目ぼれして買ったのを思い出します。

越境者の思想
ツヴェタン・トドロフ著 / 法政大学出版局 / ¥5,985

文芸学入門
ヴォルフガング・カイザー著 / 而立書房 / ¥9,450

江戸の英吉利熱
タイモン・スクリーチ著 / 講談社 / ¥1,785

衝撃のグラフィックデザイン
ミルトン・グレイザー+ミルコ・イリッチ編 / グラフィック社 / ¥3,990
●「社会問題や政治問題に焦点をあてたグラフィックデザイン作品を一堂に集め、これを分析」したものだそうです。カルチュラル・スタディーズ棚に置かれても違和感がなさそう。

横尾忠則Y字路
横尾忠則著 / 東方出版 / ¥5,250
●横尾さんの本はどれもさすがにデザインが素敵で、手に取る喜びがありますね。

ドゥルーズ
松本潤一郎著 / 白水社 / ¥2,310

娘と話す哲学ってなに?
ロジェ=ポル・ドロワ著 / 現代企画室 / ¥1,260

議論された過去
ヴォルフガング・ヴィッパーマン著 / 未来社 / ¥3,990

アメリカのヒスパニック=ラティーノ社会を知るための55章
大泉光一編著 / 明石書店 / ¥2,100

ジハードとフィトナ
ジル・ケペル著 / NTT出版 / ¥3,360

キリスト教神秘主義著作集 2 ベルナール
教文館 / ¥6,300
●クレルヴォーのベルナルドゥス(ベルナール/聖ベルナルド)の著書は、大著『雅歌について』をはじめ、あかし書房や中央出版社から訳書が出ているのですが、代表作が一冊にまとまるというのは今回が初めてですね。中沢新一さんの著書に『蜜の流れる博士』(せりか書房)というのがありますが、この称号はもともと、ベルナールに与えられたものです。

三島由紀夫全集 補巻
三島由紀夫著 / 新潮社 / ¥6,090
●補巻には、近年に発見された未発表原稿や日記、そして全作品の索引が付されています。早いうちに買っておかないと品切になりそうな予感。

転回期の科学を読む辞典
池内了著 / みすず書房 / ¥2,940

科学の未来
フリーマン・ダイソン著 / みすず書房 / ¥2,730

障害のある人がいる家族の肖像(かたち)
ステェン・ランゲ文・写真 / 明石書店 / ¥2,625

自らがん患者となって
杉村隆(1926-)著 / 哲学書房 / ¥1,800
●著者は国立がんセンターの名誉所長さんです。モンシロチョウの体液からアポトーシスを惹き起こす物質ピエリシンを世界で初めて発見したというエピソードは偶然と必然があいまった成果で、心躍るお話。ガン克服のために大きな一歩ですね。

***

以上です。(H)
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by urag | 2006-01-15 20:23 | 本のコンシェルジュ | Trackback(2) | Comments(0)
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