2005年 12月 18日

今週の注目新刊(第33回:05年12月18日)

今週の注目書は、ナカニシヤ出版より発売された、奥田敏広(1956-)さんの『トーマス・マンとクラウス・マン――《倒錯》の文学とナチズム』です。一次資料からマン親子の著書が時代とどう切り結んできたかを読み解くもののようです。奥田さんは京都大学大学院人間・環境学研究科助教授で、専攻は近代ドイツ文学です。読み応えのある研究書だろうと思います。版元のウェブサイトで、「まえがき」の抜粋を立ち読みできます。

トーマス・マンとクラウス・マン――《倒錯》の文学とナチズム
奥田敏広(1956-)著
ナカニシヤ出版 06年1月刊 本体2,800円 A5判314頁 ISBN4-88848-989-0
■帯文より:ナショナリズムと同性愛エロスの共犯関係。創作メモをはじめとする最新の一次資料を渉猟し、マン父子の作品を精緻に解読、時代の狂気と交錯する作家の欲望をえぐり出す。

唐草抄――装飾文様生命誌
伊藤俊治著
牛若丸=発行 星雲社=発売 05年12月 税込2,940円 ISBN4-434-07164-5
●モルフォロジー好みの読者にとっては嬉しい一冊。また牛若丸さんが美しい本を作ってくださいました。同時期にMPCより出版された『図案の原典 花と植物編』(グレアム・レスリー・マッカラム著、税込2,940円)もチェックしておきたいところ。

いっぽうで、やはりさいきん出版された『ヴォイニッチ写本の謎』(G・ケネディ+R・チャーチル著、青土社、税込2,940円)をひもとけば、草木のような不思議な読解不能の記号がいったいどうやって「人間の心のうち」から生まれたのか、 興味深いエピソードを覗くことができます。

自然にある形態を図像化したものと、人間の想像力が生んだものとのあいだには、かたちの上でどこが似通っていて、どこが違うのか。好奇心が沸いてくる領域です。

ポスト構造主義
大城信哉著 小野功生監修
ナツメ社 06年1月 税込1,470円 46判222頁 ISBN4-8163-4044-0
■帯文より:あなたの生きる「いま・ここ」にある思想がわかる。
■目次より:頁見開きサンプル
1.ポスト構造主義とは?
2.現代思想としての条件
3.構造主義の衝撃
4.構造主義の彼方へ
5.ポスト構造主義の思想(1)
6.ポスト構造主義の思想(2)
7.ポスト構造主義の多様性
8.男性と女性:フェミニズム
9.西洋近代と国家
10.ポスト構造主義批判
11.日本のポスト構造主義

●「絵と文章でわかりやすい!」が謳い文句の「図解雑学」シリーズの一冊。帯文は「いま・ここ」の思想と書いていますが、本音を言えばなぜ今頃「ポスト構造主義」なのかがよくわかりません。しかし、遅れてきた入門書だからこそ書けること、回顧・展望できることがあるはず。サンプルページを見ると、ネグリの『帝国』が論じられています。

現代思想系の気になる新刊ではこのほかに、『記号学を超えて』(ナイオール・ルーシー著、法政大学出版局、税込3,465円)、『ロラン・バルト著作集(5)批評をめぐる試み』(みすず書房、税込5,775円)、『マルクスパリ手稿 経済学・哲学・社会主義』(カール・マルクス著、山中隆次訳、 御茶の水書房、税込2,940円)などがありました。

また、今週は講談社の「現代思想の冒険者たち」シリーズから三冊が新装再販。川本隆史『ロールズ』、 篠原資明『ドゥルーズ』、飯田隆『ウィトゲンシュタイン』。税込各1,575円。

「要チェックな再販」のつながりでいえば、『絵画の準備を!』(松浦寿夫+岡崎乾二郎著、朝日出版社、税込2,940円)と、サイモン・マースデン写真集『幽霊城』(平石律子訳、エディシオン・トレヴィル、税込3,990円)は旧版を持っている読者も中味や造本を確認しておきたいところ。

建築と破壊――思想としての現代
飯島洋一(1959-)著
青土社 06年1月刊 税込2,940円 46判467頁 ISBN4-7917-6247-9
■帯文より:人びとはツインタワーの消滅を見たいと密かに願っていた。ロシア革命に端を発し、テロル・粛清・暗殺など、20世紀の黙示録的大事件に脈々と通底する感情が、新世紀劈頭の9・11に収斂した――。自意識の分裂と言う強迫観念に囚われたドストエフスキーからA・ウォーホル、D・アーバスらの果敢な営為に、空虚で寄る辺ないわれらの時代の気分を抉る、大胆で意欲的な文化批判。

●『現代思想』連載に加筆修正を加えたものだそうです。『現代建築・アウシュヴィッツ以後』『現代建築・テロ以前/以後』(いずれも青土社)と併せ、必読書かと思います。

このほかに目に留まった建築関連書には、『リノベーションの現場』(五十嵐太郎編、彰国社、税込2,730円)がありました。個人的にリノベーションが好きだからですが、古い建造物を甦らせることは社会的にもっともっと評価されてもいいことなのになあと思います。 どうも世間やお役所はそう思っていないらしい。

***

上記以外で気になった新刊には、『ジャイナ教』(渡辺研二著、論創社、税込3,990円)、『脳・身体性・ロボット』(土井利忠編、シュプリンガー・フェアラーク東京、税込4,200円)などがありました。特に前者は読まねばと思っています。(H)
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by urag | 2005-12-18 10:22 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
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