2005年 12月 11日

今週の注目新刊(第32回:05年12月11日)

今週の注目書は大泉実成さんの『萌えの研究』(講談社)です。 帯文によれば、「フロイト、ウィトゲンシュタイン、ノルウェイの森、菊地秀行、エヴァンゲリオン、江戸春画、家族への回帰、ハーレム感などのキーワードを使って、「萌え」の本質に迫る! 非オタクが覗いた、史上最強のオタク解読書」とのことです。

大泉さんと言えば、「消えたマンガ家」 シリーズが一番有名でしょうか。一口に「萌え」と言ってもそれはさまざまな「属性」にしたがって細分化されていきますから、広大な領域への探究にならざるをえません。「萌え」はもはや日本経済において無視できない市場の牽引力です。CSにせよ哲学にせよ、このテーマは避けて通れなくなるような気がします。

ちょうど時期を同じくして、岡田斗司夫さんの『プチクリ 好き=才能!』が幻冬舎から刊行されました。プチクリとは「プチ・クリエイター」の略だそうです。版元の紹介文によれば、本書の趣旨は「自分にはどんな才能があるの?」そんな悩みを抱えるあなたも、隠れた能力を発見できる“才能マップ”と表現力を引き出す“プチクリマップ”で、今日から楽しくプチ・クリエイターになろう!」というものだそうです。

正直に言うと、「好き=才能」という題名や、「今日から楽しくプチ・クリエイターになろう!」という謳い文句には、「騙されたくないなあ」という反応がまずあります。金持ちのママゴトや趣味人の自己満足を助長したいがための本ではないでしょうけれど、営業用のこうした表向きでは、実際の内容がどうであれ、クリエイトすることをめぐる現実問題の所在が巧みに隠蔽されてしまうような感じに見えてしまいます。

「プチ・クリ」はあるいは実業的諸問題を引き受けるのではない一種の脱出回路を示唆するものなのでしょうか。例えば、浜野保樹さんの最近の記事「日本のアニメーターは、どれほど貧しいか」が示しているような「現実」と、「好き=才能」という定式はどう絡んでくるでしょうか。興味深いところです。


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萌えの研究
大泉実成著 / 講談社 / ¥1,575

ワールド・ストリートアート
ルイス・ボウ編 / グラフィック社 / ¥2,625

ニヒリズム 上
岩波 哲男著 / 理想社 / ¥2,940

ドイツ観念論を学ぶ人のために
大橋 良介編 / 世界思想社 / ¥2,415

アナ・ボル論争
大杉栄+山川均著 / 大窪一志編集・解説 / 同時代社 / ¥3,675

ピアジェの教育学
J・ピアジェ著 / S・P・ダヤン他編 / 三和書籍 / ¥3,675

人類は絶滅する
マイケル・ボウルター著 / 朝日新聞社 / ¥2,310

★今週の注目文庫、新書

親鸞の告白 / 梅原猛著 / 小学館文庫 / ¥650
一般相対性理論/ P・A・M・ディラック著 / 江沢洋訳 / ちくま学芸文庫 / ¥945
幾何学基礎論 / ヒルベルト著 / 中村幸四郎訳 / ちくま学芸文庫 / ¥1,155
数学史入門 / 佐々木力著 / ちくま学芸文庫 / ¥1,050
実存から実存者へ / E・レヴィナス著 / 西谷修訳 / ちくま学芸文庫 / ¥1,155
ペンと剣 / E・W・サイード+D・バーサミアン著 / ちくま学芸文庫 / ¥1,260
涅槃への道 / 渡辺照宏著 / ちくま学芸文庫 / ¥1,260
賃貸宇宙 (上・下) / 都築響一著 / ちくま文庫 /¥1,785
君はレオナルド・ダ・ヴィンチを知っているか / 布施 英利著 / ちくまプリマー新書 / ¥798

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以上です。筑摩書房では「ちくま学芸文庫Math&Science」が今月から創刊され、慶賀に堪えません。入手困難な古典を続々文庫化してくれることを切に願います。(H)
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by urag | 2005-12-11 14:44 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
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