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URGT-B(ウラゲツブログ)

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2005年 11月 28日

ウェーバー「破壊と拡散」:プロダクション・ノート(1)

今週中には大方の書店さんが店頭に並び終えているはずの弊社最新刊『破壊と拡散』について、刊行までの道のりをかいつまんでご紹介しようと思います。

サミュエル・ウェーバーの『破壊と拡散』は、「暴力論叢書」の第一弾として刊行されました。この「暴力論叢書」は、実は月曜社の創業(2000年12月)当時からその原型をめぐって思案を重ねていた企画で、五年越しの練磨を経て、ようやくこのたび第一弾を出版する運びとなったのです。

「暴力論叢書」は現代社会においてさまざまなかたちで噴出している〈暴力〉の諸相と変容を根本的に再考するために、月曜社が読者の皆様に提起する新しいシリーズです。デリダ/ハーバーマス以後の未紹介の最重要思想家たちをフィーチャーし、〈9・11〉以後の現代思想の最前線を暴力批判の視点から展望します。

第一期は全5巻を予定しており、ウェーバーのあとには、ヴェルナー・ハーマッハー(ドイツ)、ヘント・ド・フリース(オランダ)、ピーター・フェンヴズ(アメリカ)、ルイ・サラ=モラン(フランス)が続きます。第二期企画もすでに始動していますが、これはまた別の機会に発表させていただくこともあるかと思います。

五年越しの実現と書きましたが、準備中に〈9・11〉が起き、イラク戦争が勃発し、諸国ではナショナリズムと排外主義がいよいよ顕著になるなど、次々に「現実」に企画が追い越されていきました。当初私は、暴力をテーマに海外の思想家に直接書き下ろしを依頼しようと企んでいました。先日「[本]のメルマガ」で書きましたが、海外の書き手と直接コンタクトを取れるチャンスが近年増えてきたこともあり、そうしたこともあるいはチャレンジできたのです。

しかしなにぶん月曜社は創業間もない出版社で実績もなく、直接依頼するための「信用」に足る土台がまだ出来上がっていませんでした。創業当時すでにじかにやりとりすることが可能になっていた著者は複数いましたが、直接発注となるとそれはよりフォーマルな「交渉」になるわけですから、そのテーブルにつくためにも、信用の基盤をまずはどう構築するか、ということを考えました。

企画に大きな進展があったのは、米国同時多発テロ事件のあとの2001年12月でした。

〔以下、プロダクション・ノート(2)へ続きます〕

by urag | 2005-11-28 20:06 | Comments(13)
Commented by じゅん at 2005-11-29 11:37 x
はじめまして
デュットマン『友愛と敵対』とブランショ『政治論集』の愛読者です
このたび『破壊と拡散』を書店で見かけ、早速購入しました
これからじっくり読んでみます
デュットマンやハーマッハーの続刊も大変楽しみにしております
Commented by urag at 2005-11-29 12:02
じゅんさんはじめまして。ご購読ありがとうございます。デュットマンの大著『思惟の記憶』を来年刊行できそうです。近刊告知はまたブログなどで公表させていただきます。
Commented by くま at 2005-12-21 11:06 x
サミュエル・ウェーバーの初の邦訳単行本ということで、早速購入した者です。フランス現代思想の勉強をしております。これは自戒もこめての発言なのですが、いわゆる「現代思想」はドイツ語で書かれたテクストの(再)読解から出発しながら、日本のデリダやラカンの翻訳者・読者たちはあまりドイツ語というものへのこだわりが少なすぎるのではないでしょうか。自分もまだフランス語だけで手一杯で、ドイツ語については初学者もいいところなのですが、初学者ゆえに、デリダの邦訳などで訳文中に挿入されたドイツ語に誤植が多く見られることがひどく気にかかるのです。今回手にしたウェーバーの著書も、あまりドイツ語への配慮が感じられず(とりわけ書誌)、少々残念に思っております。揚げ足をとるのが目的ではありません。著者・翻訳者と編集者のみならず、読者も含めて書物に関わる者たちがインタラクティヴに交流することによって、誤植に限らず、正確さに欠ける情報も少しずつ匡正され、書物の質の向上につながるのだと信じています。編集者の方に率直な意見をお伝えしたく、あえて書き込みをさせていただいた次第です。
Commented by urag at 2005-12-21 11:14
くまさん、こんにちは。ご購入いただきまことにありがとうございます。「ドイツ語への配慮が感じられず(とりわけ書誌)」とのこと、もう少し詳しくご指導いただけませんでしょうか。ブログへのコメントでもメールでもどちらでもお伺いいたします。

「著者・翻訳者と編集者のみならず、読者も含めて書物に関わる者たちがインタラクティヴに交流することによって、誤植に限らず、正確さに欠ける情報も少しずつ匡正され、書物の質の向上につながるのだと信じています」とのご意見は私もまったく同感です。
Commented by くま at 2005-12-21 11:30 x
ウムラウト記号の脱落が目に付きます。便宜的に[ae]のように表記すると、vollst[ae]ndig [ue]berarbeitete Ausgabe, unver[ae]nderte Ausgabe の箇所など。また、ドイツ語では序数は 2. Auflage などのように表記するのが正式かと思われます。ほんのささいな例ばかりですが、なくもがなの誤植ですので。。。
Commented by urag at 2005-12-21 12:24
くまさんのご指摘は、225頁のウェーバーの著作リストにかんすることでしょうか。たしかにVolltändigとすべき箇所(10行目)がVollstendigになっていますね。校正時の訂正漏れかと思います。あとの二つはウムラウトは消えていないと思いますが、1行目のUnveränterteというのが、Unveränderteの誤植ということかと思います。お手元の本ではどうでしょうか。

序数については原出版社の目録やドイツの国立図書館のデータなどを参照して判断しました。表記の仕方はさまざまあるという認識です。

有益なフィードバックをありがとうございます。ほかにはどうでしょうか。
Commented by くま at 2005-12-21 13:24 x
たびたび失礼いたします。フロイトの訳文中に挿入された語句で、sich etwa[s] vorstellen の [s] が脱落している箇所がありました。序数の簡略表記については、序数と名詞との間にあやまって点が印刷されているものと勘違いしておりました。2te Ausgabe あるいは 2. Ausgabe、どちらもあり得るかと思います。Passagen-Verlag / Deutsche Bibliothek のカタログで検索してみたところ、Freud-Legende (2., durchgesehene Auflage / 2. Aufl., vollst. überarb. und erw. Ausg.), Rückkehr zu Freund (2., unveränderte Ausgabe / Dt. Erstausg., 2. Aufl.) となっております。表記のしかたはさまざまあります。さまざまなデータを比較考量したうえで、その結果をあやまつことなく記述するための指針(しかしそれはなによりも正確な知識なのですよね)のようなものがあればよいのですが。
Commented by urag at 2005-12-21 19:46
くまさん、今度は113頁の部分かと思いますが、etwaはウェーバーの引用のママです。フロイト論文Instincts and Their Vicissitudesの原典に返って再確認するようにします。書誌情報については最終的には現物を確認し、著者にも各版の違いを問い合わせるするのが一番かと思います。今回もそうしましたが、それでも誤植が残っているのは恐ろしいことです。いろいろありがとうございました。
Commented by urag at 2005-12-22 17:46
くまさん、etwaの件ですが、フロイトの原典を再確認したところ、ママでした。etwasではありません。
Commented by くま at 2005-12-23 09:03 x
uragさんが確認されたのはフロイトのテクストの英語版でしょうか。とはいえ、sich etwa vorstellen (想像する) では意味が通じないように思われます。etwa は副詞、etwas は代名詞ですので。
Commented by urag at 2005-12-23 11:53
くまさん、'Triebe und Triebschicksale' (1915), in "Studienausgabe" III, S.93-94. をご参照ください。 'Dann kann man sich etwa vorstellen,...' とあるこのetwaはvielleichtと同義かと思います。
Commented by くま at 2005-12-23 17:45 x
Dann kann man sich etwa vorstellen, のあとは、daß節ないしzu不定詞 が続くのでしょうか。であれば、了解できます。しかしとなると、sich etwa vorstellen とだけ抜き出されても、意味が通じないわけですね。
Commented by urag at 2005-12-23 22:09
くまさん、わかりやすいかどうかは別として、ウェーバーの意図がそこにはあるものと思います。「戦時」論文をはじめ、本書全体を見直してみると見えてくるものがあるように私は思っています。機会があれば、ウェーバーのこれまでの著書にも触れてみてください。くまさんのご研鑽がいっそう進みますよう祈念しております。


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