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URGT-B(ウラゲツブログ)

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2005年 11月 13日

今週の注目新刊(第28回:05年11月13日)

セキュリティ・ソフトの具合がおかしくなって更新が遅れました。マイクロソフトが配布する修正パッチ等にはたまに「副作用」が伴うときがあるように思います。

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本屋さんの仕事
永江朗+北尾トロ+江口宏志ほか著
平凡社 05年11月 本体1,500円 A5判123頁 ISBN4-582-63066-9
■表紙宣伝文より:人気の書店は、どのように誕生し、お客さんの支持を集めているのか。独自のノウハウ、哲学を徹底的に語った「本屋さんの仕事」講座。ビジネスを成功させる秘訣、仕事と人生を楽しむヒントが見つかります。
●お洒落な装丁とカラー図版が楽しい「太陽レクチャー・ブック」の一冊。昨今注目されている個性派書店を紹介しています。タコシェ、ブックファースト渋谷店、ユトレヒト、TSUTAYA TOKYO ROPPONGI、BOOK246、古書日月堂、杉並北尾堂、ハックネット、恵文社一乗寺店。版元の紹介文によれば、「オリジナルで注目を集める書店のノウハウを披露。大好きな本をビジネスにする秘訣、仕事と人生を楽しむヒントを伝えます」とのこと。同時刊行は『アートの仕事』。

感じる脳――情動と感情の脳科学よみがえるスピノザ
アントニオ・R・ダマシオ著 田中三彦訳
ダイヤモンド社 05年11月 本体2,800円 46判413頁 ISBN4-478-86051-3
■帯文より:脳科学と哲学が融合した! 心を生み出す身体と脳の関係。進化は「感情」に何を託したのか。
■版元紹介文より:高等脳を持った多くの生物は、身体の反応を受け脳が感情を生みだす。つまり感情とは、身体の反応無くしては生みだされない。米国の著名な脳科学者である著者が、多くの脳障害・損傷患者の研究から導き出したのが、身体反応(=情動)を脳が受け取り感情を生みだすという考えです。これとほぼ同じ考えを持っていたのが、哲学者・スピノザでした。本書は最新の脳研究とスピノザの哲学的思考がどのようにリンクし、同一の考え方に至ったのかを説いた一冊です。
■目次より:
訳者まえがき
第1章 感情の脳科学とスピノザ
第2章 欲求と情動について
第3章 感情のメカニズムと意義
第4章 感情の存在理由
第5章 心を形成するもの
第6章 スピノザ思想の源
第7章 自己保存としての感情
原著者註
付録1 スピノザの時代とその前後
付録2 脳の構造

●読書欲を大いにそそる詳細目次はこちらでチェック。ダイヤモンド社の販売サイトでは一部立ち読みも可能。
●ポルトガル生まれ、アメリカ在住の神経学者ダマシオの既訳書には以下のものがあります。『無意識の脳 自己意識の脳――身体と情動と感情の神秘』(講談社、03年06月刊)、『生存する脳――心と脳と身体の神秘』(講談社、00年01月刊、版元品切)、『神経心理学と病巣解析』(ハンナ・ダマジオとの共著、医学書院、91年12月刊、品切)。

生命記号論――宇宙の意味と表象〔新装版〕
ジェスパー・ホフマイヤー著 松野孝一郎+高原美規訳
青土社 05年11月 本体2,200円 46判259+13頁 ISBN4-7917-6217-7
■帯文より:メッセージとしての生命。生命の世界を、生物ばかりでなく組織や細胞までもがメッセージを交換しあう〈記号圏〉として捉える「生命記号論」。脳やDNAによる決定論的生命観を乗り越え、〈自然〉と〈文化〉の対立を相対化し、〈意識〉の誕生の謎に迫る。

神学大全 第44冊 第3部 第79問題-第83問題
トマス・アクィナス著 稲垣良典訳
創文社 05年10月 本体5,000円 A5判256+28頁 ISBN4-423-39344-1
■版元紹介文より:本巻では、秘跡の結果および秘跡の現実的な行使・執行をめぐる様々の問題(例えば、聖別されたホスチアをねずみが齧った時はどうすべきかなど)が論じられる。トマスの聖体神学は、超自然的神秘に対しても日常生活で起こる出来事に対しても、驚くべき一貫性をもって考察が進められる。犠牲としてのミサという問題を考察するにあたり取り上げる三つの異論には、16世紀の宗教改革者たちの議論が基本的にすべて含まれている。
●トマスの議論に内在する、単なる瑣末への執着などではない、細部への配慮には本当に驚かされます。重箱の隅をつつく、という批判ではとらえられない何かがあります。

ヒンドゥー教の事典
橋本泰元+宮本久義+山下博司著
東京堂出版 05年11月 本体5,000円 菊判414頁 ISBN4-490-10682-3
■帯文より:現代に息づく宗教の力。仏教を通して日本文化の基層にも多大の影響を与えたヒンドゥー教とその文化について、地域性に配慮し、充分な現地の観察を踏まえて、思想史の流れに沿って俯瞰する。

近代文学の終り――柄谷行人の現在
柄谷行人著
インスクリプト 05年11月 本体2,600円 46判273頁 ISBN4-900997-12-9
■帯文より:文学から革命へ――柄谷思想の総決算と新展開。
■版元紹介文より:柄谷行人の新たな展開へ向けた重要な論点をすべて含み、わかりやすい言葉で提示する待望の新著。名講義「近代文学の終り」をはじめ、漱石の文学論をめぐる新原稿、座談会やインタビューをも収録し、一貫してラディカルでポジティヴな、岩波版定本著作集以降の思考の全貌を明らかにするクロニクル。
■目次より:
第一部 近代文学の終り
 1 翻訳者の四迷
 2 文学の衰滅 ―― 漱石の『文学論』
 3 近代文学の終り
第二部 国家と歴史
 1 歴史の反復について[聞き手 岡本厚]
 2 交換、暴力、そして国家[聞き手 萱野稔人]
第三部 テクストの未来へ
 1 イロニーなき終焉[聞き手 関井光男]
 2 来るべきアソシエーショニズム[座談会 浅田彰、岡崎乾二郎、大澤真幸]
あとがき

●たいへん美しい本書の装丁は、間村俊一さんによるものです。手にとって、しばらくうっとりしてしまいます。

波状言論S改――社会学・メタゲ-ム・自由
東浩紀編著
青土社 05年11月 本体1,600円 46判347頁 ISBN4791762401
■帯文より:宮台真司、北田暁大、大澤真幸、鈴木謙介と、東浩紀が、メタな理論とベタな現実の往復運動=批評を実践する、画期的鼎談集。
●関連イベントが以下の通りあります。

第28回 新宿セミナー @ Kinokuniya
『波状言論S改』(青土社)刊行記念トークセッション
「ゼロ年代の批評の地平 ―リベラリズムとポピュリズム/ネオリベラリズム」
東浩紀×北田暁大×斎藤環×山本一郎
日時:12月25日(日)18:30開演(18:00開場)
料金:1,000円(全席指定・税込)
前売:11月15日(火)発売開始
会場:新宿・紀伊國屋ホール(紀伊國屋書店新宿本店4階)
主催:紀伊國屋書店(協力:青土社)
前売取扱所:キノチケットカウンター(紀伊國屋書店 新宿本店5F 10:00~18:30)
予約・問合せ:紀伊國屋書店事業部 03-3354-0141(受付時間 10:00~18:30)

「戦時下」のおたく
ササキバラ・ゴウ編
角川書店 05年10月 本体1,900円 46判411頁 ISBN4048839292
■戦争、したいんでしょ。サブカルチャーとナショナリズム。反復する歴史の波の中で、日本のまんが・アニメの現在を問う評論アンソロジー。
■版元紹介文より:世界に進出する日本のおたく産業は着々と体制の道具として取り込まれている。官許サブカルチャーの虚妄を撃つ評論、対談集。
●先月の新刊ですが、店頭で目に留まりました。私は大塚さんがここしばらく示唆されてきた「現在は〈戦時〉である」という認識に共感しています。執筆者および対談者は以下の通り。ササキバラ・ゴウ、上野俊哉、榎戸洋司、大澤信亮、大塚英志、斎藤環、更科修一郎、中塚圭骸。
●大塚英志+大澤信亮の新刊新書『「ジャパニメーション」はなぜ敗れるか』(角川oneテーマ)も併読すべきかと思います。ここでも「戦時下」がキーワードです。

ヴィレル-ボカージュ――ノルマンディ戦場写真集
ダニエル・テイラー著 岡崎淳子訳
大日本絵画 05年12月 本体2,800円 B5判96頁 ISBN4-499-22900-6
■帯文より:1944年6月13日、フランス・ノルマンディ地方の田舎町[ヴィレル-ボカージュ]を舞台に繰り広げられた、イギリス軍戦車部隊とドイツ軍のティーガー戦車の死闘。ここで25両の敵車両を撃破し名声を馳せたのがドイツ軍戦車部隊のエース、孤高の"ティガーの戦士"ミヒャエル・ヴィットマンであった。本書は初の試みとして、ドイツ軍のヴィレル-ボカージュ占領直後に従軍カメラマンによって撮影された100枚の写真を詳細に検証、この戦いに改めて冷静な分析を加えたものである。本書では両軍の戦果を再評価するとともに、過去に発表された多くの関連資料と、従来採り上げられてこなかった当事者の証言を対照し、新たな視点からヴィレル-ボカージュの戦いで起こった事実と、そこで生まれたミヒャエル・ヴィットマンにまつわる伝説の真実に迫る。検証、“ヴィットマン伝説”。
●軍事マニア向けかもしれない表層を剥ぎ取って、本書の「構造」を吟味したいものです。同出版社からは『ヴィットマン――LSSAHのティーガー戦車長たち(下)』も同時刊行したようです。

シュルツ全小説
ブルーノ・シュルツ著 工藤幸雄訳
平凡社ライブラリー(平凡社) 05年11月 本体1,900円 文庫版488頁 ISBN4-582-76557-2
■帯文より:歪んだ創世記。非合法的に創造された世界模型。巻末エッセイ=田中純。
■版元紹介文より:20世紀の悲劇を背負ったヨーロッパ辺境が生んだ一抹の光。クエイ兄弟の映画でカルト的人気を誇る独自の作品世界への扉が開かれる。元本は読売文学賞受賞。
●新潮社より刊行されていた工藤幸雄訳『ブルーノ・シュルツ全集』全2巻をかつて大枚をはたいて(17000円)購入した私の知人は、本書を書店で見かけて気を失いそうになったそうです。全集は、第1巻が創作篇と評論篇で、第2巻が書簡篇と解説篇。友よ、君の買物は間違ってはいなかったと私は確信しているよ。

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以上です。

by urag | 2005-11-13 21:54 | 本のコンシェルジュ | Comments(0)


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