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2005年 11月 07日

ちくま文庫創刊20周年記念復刊

ちくま文庫の復刊書目がついに決まりました。9点14冊。私が期待していた書目『ヒロシマわが罪と罰――原爆パイロットの苦悩の手紙』(哲学者ギュンター・アンダースとエノラ・ゲイ号の気象観測員クロード・イーザリーの往復書簡集、原題は『良心の立入禁止区域』)は残念ながら選外。落胆。

復刊されるのは次の書目。

ギリシア喜劇 I/II
アリストパネス著 高津春繁他訳
I 4-480-02061-6 1155円
II 4-480-02062-4 1313円

短篇集 妖精族のむすめ
ダンセイニ著 荒俣宏編訳
4-480-02151-5 924円

妖精詩集
W・デ・ラ・メア著 荒俣宏訳
4-480-02231-7 777円

もつれっ話
ルイス・キャロル著 柳瀬尚紀訳
4-480-02345-3 630円

ザ・ベスト・オブ・サキ I/II
中西秀男訳
I 4-480-02229-5 945円
II 4-480-02230-9 924円

骨董屋 上/下
C・ディケンズ著 北川悌二訳
上 4-480-02341-0 1155円
下 4-480-02342-9 1155円
 
火星の笛吹き
レイ・ブラッドベリ著 仁賀克雄訳
4-480-02562-6 1050円

ウォー・ゲーム
P・K・ディック著 仁賀克雄訳
4-480-02650-9 777円

東京百話 天の巻/地の巻/人の巻
種村季弘編
天 4-480-02101-9 1313円
地 4-480-02102-7 1260円
人 4-480-02103-5 1260円

正直に感想を言えば普通の重版でもよかったんじゃないかというくらいの、「在庫してて当たり前では?」なレベルの書目だ(そうはいかないのが昨今の現実だろうけれども)。以下、あくまでも一読者の立場からの「理想論」として感想を述べたい。

岩波文庫と同様に、通常の重版と「一括重版」、そして季節ごとの「復刊」の三本柱をたてて、今後、ちくま文庫およびちくま学芸文庫の重版と復刊に邁進して欲しい。そうでもしないと筑摩書房の文庫の「格」はあがらないと思う。

既刊書に品切がままあり、供給に安定感がないとなれば、どうして読者は信頼できるだろうか。他社の悪口など言いたくはないが、一読者としては、がっかりだ。もっと読者の要望にふだんから耳を傾けて欲しいものだ。

しかしともかくも今回、いくつかの書目の復刊は叶った。今後の復刊および一括重版事業の第一歩になることを信じるしかない。

文庫の場合は、その存在意義からして、新刊を作らねばならない、というのを第一義とするのではなく(出版界の現実はそうではないが)、まずは既刊書を大事にし、できるかぎり在庫点数を増やして品切がなくなるようにしてほしい。売り切っておしまい、というのは文庫にふさわしくない。

他社文庫の場合にはたしかに読み棄てられることを前提としているかのような娯楽ものが多いのも確かだけれども、そうしたいわば「ブックオフ向け」の文庫とは一線を画しているのがちくま文庫であり、ちくま学芸文庫なのだと信じたい。

ずいぶんとナイーブな意見だし、同業者として天に唾する愚を冒したわけだけれども、案外、筑摩書房の社内でも私と同意見の人がいそうな気がするのは妄想だろうか。(H)

by urag | 2005-11-07 19:18 | 本のコンシェルジュ | Comments(0)


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