2017年 10月 01日
訳者:岩崎稔、大澤俊朗、小田原琳、柏崎正憲、高橋明史、トリスタン・ブルネ、橋爪大輝、馬場智一、福田雅之、山本裕子、吉田耕太郎。 帯文より:歴史学に衝撃をもたらした伝説の名著。翻訳不可能と言われた問題作が43年を経て遂に邦訳完成! 目次: [日本語版序文]ようやく! そして、メタヒストリーを再考することの意味について [四〇周年記念版への前書き]「きみが手にしているすべてが歴史だ」(マイケル・S・ロス) 四〇周年記念版への序文 一九七三年版への序文 序論 歴史の詩学 歴史学的作品の理論/プロット化による説明/形式的論証による説明/イデオロギー的意味による説明/歴史叙述のスタイルという問題/喩法の理論/一九世紀の歴史意識の諸段階 第Ⅰ部 受け入れられた伝統――啓蒙と歴史意識の問題 第1章 隠喩とアイロニーのはざまの歴史的想像力 はじめに/啓蒙の歴史叙述の弁証法/歴史叙述の伝統的な概念/歴史、言語、プロット/懐疑主義とアイロニー/啓蒙以前の歴史叙述の主要形式/ライプニッツと啓蒙/歴史の場/啓蒙の歴史叙述の到達点/啓蒙の歴史叙述に対するヘルダーの叛乱/ヘルダーの歴史理念/ヘルダーからロマン主義と観念論へ 第2章 ヘーゲル――歴史の詩学とアイロニーを超える方法 はじめに/言語、芸術、歴史意識/歴史、詩、レトリック/可能なプロットの構造/包摂的なプロット構造としての悲劇と喜劇/即自的歴史と対自的歴史/即自かつ対自的歴史 構造としての《歴史の場》/国家、個人、悲劇的歴史観/過程としての《歴史の場》/悲劇から喜劇へ/世界史というプロット 第Ⅱ部 一九世紀の歴史記述における四種類の「リアリズム」 第3章 ミシュレ─―ロマンスとしての歴史的リアリズム はじめに/一九世紀における歴史学の古典/歴史哲学に抗する/歴史叙述/隠喩的様式における「リアリズム」としてのロマン主義的歴史学/「存在の混沌」としての歴史の場/ミシュレ─―隠喩として説明され、ロマンスとしてプロット化された歴史叙述 第4章 ランケ─―喜劇としての歴史的リアリズム はじめに/ランケの歴史学的方法の認識論的基礎/喜劇としての歴史過程/歴史的分析の「文法」/歴史的事件の「構文論」/歴史解釈の「意味論」/ランケにおける歴史的理念(イデー)の保守的含意/喜劇としてプロット化された歴史/歴史的方法として有機体論を本格的に弁護すること/小括 第5章 トクヴィル――悲劇としての歴史的リアリズム はじめに/弁証法に抗って/二つの様式における詩と歴史/自由主義の仮面/社会的調停の歴史叙述/歴史過程の「構文論」/アメリカの歴史の「意味論」/ヨーロッパ史というドラマ/リベラルな視点、保守的な語調/アイロニーの視座から見る悲劇的対立/革命というドラマのアイロニー的解決/アイロニー的視点がもつイデオロギー的意味に抵抗する試み/ゴビノー批判/アイロニーへの転落/小括 第6章 ブルクハルト――風刺劇としての歴史的リアリズム はじめに/ブルクハルト――アイロニー的世界観/世界観としてのペシミズム――ショーペンハウアーの哲学/歴史意識の基盤としてのペシミズム/風刺劇的スタイル/歴史過程の「構文論」/歴史の「意味論」/「風刺(サトゥーラ)」のプロット構造/隠喩に抗って/アイロニーとしてのリアリズム/歴史と詩/小括 第Ⅲ部 一九世紀後期の歴史哲学における「リアリズム」の拒否 第7章 歴史意識と歴史哲学の再生 第8章 マルクス――換喩の様式における歴史の哲学的弁護 はじめに/マルクスについて研究するという問題/歴史をめぐるマルクスの思想の核心/分析の基礎モデル/歴史的実存の「文法」/歴史過程の「構文論」/歴史の「意味論」/具体的な歴史的出来事に適用されたマルクスの方法/茶番劇としての歴史/小括 第9章 ニーチェ――隠喩の様式における歴史の詩的弁護 はじめに/神話と歴史/記憶と歴史/道徳と歴史/真理と歴史/小括 第10章 クローチェ――アイロニーの様式における歴史の哲学的弁護 はじめに/批評としての歴史哲学/「芸術の一般概念のもとに包摂される歴史」という試論について/歴史意識の美学/歴史的知の本性――共通感覚が与える正当化/歴史学的知の逆説的な本性/クローチェの歴史観念のイデオロギー的意味/適用された批評の方法――アイロニーの馴致効果/クローチェ対マルクス/クローチェ対ヘーゲル/クローチェ対ヴィーコ/ブルジョア・イデオロギーとしての歴史学 結論 [日本語版解説]メタヒストリーとは、いかなる問いなのか? (岩崎稔) 本書とヘイドン・ホワイトについて/四つの基本形式について/四つの喩法の意味/相対主義という非難/『メタヒストリー』とホロコースト/翻訳にあたって 参考文献一覧 1.本文内で分析された著作/2.歴史学・歴史哲学・批判理論に関する本文内で言及した著作/3.ヘイドン・ホワイトの著作(単著、共著、共編著)/4.ヘイドン・ホワイトの著作・論文の翻訳/5.ヘイドン・ホワイト論 索引 ★まもなく発売(9月28日トーハン搬入済、10月2日日販および大阪屋栗田搬入予定)。この翻訳は、おそらく2017年における人文書における最大の事件の一つとなるでしょう。アメリカの歴史家ホワイト(Hayden White, 1928-)の主著であり、歴史を記述することそのものの《歴史》、すなわちメタヒストリーを精緻に分析したあまりにも高名な本書は、現代の古典として長らく翻訳が待望されていましたし、その昔、別の版元から近刊予告が出たこともありました。そうした過去を知っている方々にとっては今回の刊行はまさに夢のような出来事であり、私自身、現物を手に取りながら「これは本当のことなのか」とただただ震えるばかりです。原著は『Metahistory: The Historical Imagination in Nineteenth-Century Europe』(Baltimore: Johns Hopkins University Press, 1973)で、2014年に刊行された40周年記念版で追加された新たな序文や思想史家ロスの前書き、さらに日本語版のために2010年3月に書き下ろされた序文などが訳載されています。2段組700頁を超える大冊(監訳者解説や参考文献、索引を含む)にはずっしりとした重みがあります。 ★日本語版序文でホワイトはこう説明しています。「わたしは、歴史叙述に関わりをもつ言説それ自体がいったい何であるのかということに取り組んだのであり、「歴史学」を発明、研究、記述し、そこに意味を与えている文化的生産の様態と方法を問題にしたのです。もっと言うなら、記録に残っている過去の出来事は後のひとびとの営みを通して、その発生時点ではけっしてもちえなかった意味を帯びるように変化するものですが、まさにその変化の過程を論じようとしたものです」(9頁)。「本書は、歴史に関わるあらゆる作品をどのように開かれた姿で読むことができるかを考えています。だから、「歴史」ないし「歴史」の一部を科学的ないし客観的に研究し考察したと主張する歴史学者や歴史哲学者のテキストを、まずは体系的に読解することから始めています。そして、こう問い尋ねるのです。これらのテキストのなかで、過去について、特有の意味での「歴史学的な」説明を生み出すために用いられる文学的、修辞的、象徴的、あるいは端的に言語学的なメカニズムや手段や技術、それに概念や形象や喩法は、はたしてどのような特性をもっているのか、と」(10頁)。 ★ホワイトの教え子だったこともあるというロスは師の業績を端的に「歴史的リアリズムの批判的分析」と約し、こう紹介しています。「『メタヒストリー』やさまざまな論考のなかでホワイトが明らかにしているのは、歴史記述がいかにして指示対象や記号システムを作り出しているのかということである。読者は、この記号システムを必然的なもの、あるいは客観的なものとして、あるいは自然なものとして見なすよう定められている。これらは、リアリズムの装いをとったイデオロギー的な処置なのだ」(28頁)。ホワイトの重要論文は、今春発売された日本語版独自アンソロジー『歴史の喩法』(上村忠男編訳、作品社、2017年3月)で読むことができます。また同じく上村さんの監訳で今月27日発売で『実用的な過去』が岩波書店から刊行される予定と聞いています。歴史における「証言」の重要性を説いたカルロ・ギンズブルグとの鋭い対峙がスリリングに展開された論集『アウシュヴィッツと表象の限界』(ソール・フリードランダー編、上村忠男/小沢弘明/岩崎稔訳、未來社、1999年)も必読です。 ★同書の刊行を記念して今週末、以下のシンポジウムが行なわれます。 ◎国際シンポジウム「『メタヒストリー』の射程で考える歴史叙述と記憶の問題系」 趣旨説明 岩崎稔(東京外国語大学教授・訳者代表)13:00-13:15 第一部 《ホロコーストと表象の限界》 13:00-14:45 モデレーター:岩崎稔 「『メタヒストリー』とアウシュヴィッツのアポリア」林志弦〈韓国・西江大学教授〉 「ホロコーストをどう表象するか――「実用的な過去」の見地から」上村忠男〈東京外国語大学名誉教授〉 第二部 《思想家、ヘイドン・ホワイト》 15:00-15:45 「インタビューのなかのヘイドン・ホワイト」岡本充弘〈東洋大学名誉教授〉 第三部《『メタヒストリー』論争の現在》 16:00-17:30 モデレーター:成田龍一 「物語論的転回2.0 『メタヒストリー』と現代歴史学」長谷川貴彦(北海道大学教授) 「『メタスヒストリー』から『実用的過去』へ」ステファン・タナカ(カリフォルニア大学サンディエゴ校教授) 内容:ヘイドン・ホワイトによる『メタヒストリー』は、ながく歴史叙述と歴史学の在り方をめぐる論争の震源地のひとつとなってきました。とくに、ナショナルヒストリー批判や集合的記憶に関する議論において、旧態依然たる素朴な歴史理解の擬制を揺るがす役割を果たしてきたように思います。もっとも、その難解な文体のために、他方で『メタヒストリー』は、翻訳不可能な名著の筆頭に挙げられてきた厄介なテキストでもありました。/しかし、このたび同書の翻訳が、作品社のご尽力により、岩崎稔と総勢11名のチームによって平易な日本語で公刊される運びとなりました。待ちに待ったこの翻訳が、現代における歴史叙述と記憶の語りに関する論争にとって、アクチュアルな方法論的な枠組みをひとつ付け加えてくれることを期待しています。たまたま本年の春には、上村忠男氏によるホワイト・アンソロジーの翻訳『歴史の喩法』(作品社)が公刊され、またその上村氏の手でホワイトの近著『実用的な過去』もこの10月末に公刊される運びです。ヘイドン・ホワイトラッシュとでもいうような議論状況が突然現出しました。そこで、東京外国語大学では、この機会に以下の表題の国際会議を開催することにいたします。会議には日-英語の同時通訳が付きます。参加は無料、予約も必要ありません。ぜひご参集ください。主催=科研費基盤A「記憶論的転回以後の集合的記憶論の学際的再検討」、共催=WINC (Workshop in Critical Theories)。 +++ ★さらに、以下の新刊にも注目したいです。 帯文より:「盗まれた手紙」(E.A.ポー)から「文字の国」(リチュラテール)へ――「リチュラテール」は、『エクリ(Écrits)』以後に書かれた短文、論考を集めた『オートルゼクリ(Autres écrits)』の巻頭を飾る文である。その内容を原文とともに平易な訳文と詳しい評注によって紹介し、最後の地平(現実界)に向かって進むラカン思想の歩みを、四つの定式(マテーム)を克明に辿りながら解明する。「日本」と「精神分析」を包む深い暗闇に新たな光を投げかける探究の書である。 目次: 第1部 大意と評注 第2部 本論 Ⅰ 文字まで 第一章 欲動と表象 第二章 表象からシニフィアンへ 第三章 四つのマテーム A.シェーマL B.欲望のグラフ C.四つのディスクール D.性別化の論理式 第四章 文字のステイタス A.シニフィアンと文字 B.文字と現実界 C.文字と無意識 Ⅱ 文字の国へ 第一章 沿岸的ということ 第二章 「見かけでないようなディスクールについて」 第三章 漢字の多義性 第四章 音読みと訓読み 第五章 翻訳の日本語 第六章 「お前」(二人称)の大他者化 第七章 言語活動と慣習 第八章 無意識への問い あとがき 「Lituraterre」テキスト〔フランス語原文〕 ★『ラカン『アンコール』解説』(佐々木孝次/林行秀/荒谷大輔/小長野航太著、せりか書房、2013年7月)、『ラカン「レトゥルディ」読解』(佐々木孝次著、せりか書房、2015年10月)に続く、日本におけるラカン研究の重鎮である佐々木孝次(ささき・たかつぐ、1938-)さんによるラカン読解本第3弾です。「リチュラテール」というのはラカンの造語で、ラルース社の雑誌『文学(リテラチュール)』第3号(1971年秋)の「文学と精神分析」特集に寄稿した論文の題名です。訪日後に書かれたもので、日本語の音読みと訓読み、書道、文楽、そしてバルトの日本論『表徴の帝国』が言及されています。巻末に収載されている通り「リチュラテール」の原文は13頁ほどの論文ですが、その大意と評注に70頁、その解説(本論)に250頁強が費やされた研究書です。様々な意味が圧縮されたラカンの論文は一見して難解で、たいていの読者はうんざりするほかないのですが、佐々木さんはその内容と背景を解凍するようにして展開図を作り、読者に提示しておられます。2001年にスイユより刊行された『オートルゼクリ(Autres écrits)』はまだいっこうに翻訳が出る気配を感じませんけれども、重要論文やセミネールについては今後もこのように読解本が出るのか、注目したいです。 ★また、ここ二か月ほどに次のような注目新刊もありましたが、懐具合によりまだ購読できていません。 『図説 ゲルマン英雄伝説』アンドレアス・ホイスラー著、マックス・コッホ挿画、吉田孝夫訳、八坂書房、2017年8月、本体2,400円、A5判上製228頁、ISBN978-4-89694-239-2 『自由の哲学』ルドルフ・シュタイナー著、森章吾訳、イザラ書房、2017年8月、本体3,000円、四六判上製288頁、ISBN978-4-7565-0135-6 『マッド・トラベラーズ――ある精神疾患の誕生と消滅』イアン・ハッキング著、江口重幸/大前晋/下地明友/三脇康生/ヤニス・ガイタニディス訳、岩波書店、2017年8月、本体5,400円、A5判上製360頁、ISBN978-4-00-024822-8 『これがすべてを変える――資本主義 vs. 気候変動』上下巻、ナオミ・クライン著、幾島幸子/荒井雅子訳、岩波書店、2017年8月、本体各2,700円、四六判上製各384頁、ISBN978-4-00-022956-2/022957-9 『ロラン・バルト著作集(8)断章としての身体――1971-1974』ロラン・バルト著、吉村和明訳、みすず書房、2017年9月、本体6,400円、A5変型判392頁、ISBN978-4-622-08118-0 『ポチョムキン都市』アドルフ・ロース著、鈴木了二/中谷礼仁監修、加藤淳訳、みすず書房、2017年9月、本体5,800円、A5判上製336頁、ISBN978-4-622-08567-6 『メイキング――人類学・考古学・芸術・建築』ティム・インゴルド著、金子遊/水野友美子/小林耕二訳、左右社、2017年9月、本体3,100円、四六判上製332頁、ISBN978-4-86528-179-8 『図像の哲学――いかにイメージは意味をつくるか』ゴットフリート・ベーム著、塩川千夏/村井則夫訳、法政大学出版局、2017年9月、本体5,000円、四六判上製320頁、ISBN978-4-588-01066-8 『ヘーゲルとハイチ――普遍史の可能性にむけて』スーザン・バック=モース著、岩崎稔/高橋明史訳、法政大学出版局、本体3,600円、四六判上製294頁、ISBN978-4-588-01064-4 ★こうやってほんの少し見ただけでも、まだ辿り着いていない本が多いことに嘆くほかはありません。ロースはアセテート版著作集の装丁の名残を思わせるもので好感が持てます。インゴルドの『メイキング』は『ラインズ――線の文化史』(工藤晋訳、左右社、2014年)に続く邦訳第2弾。左右社さんでは7月にレベッカ・ソルニットの好著『ウォークス――歩くことの精神史』(東辻賢治郎訳)も刊行されています。一方、法政大学出版局さんには思わず「すごい」の三連発です。ベームの新刊は「ガダマーの薫陶を受け、ブレーデカンプと並ぶイコノロジーの第一人者による最新の成果」と帯文に謳われており、100点以上ある図版は「ウニベルシタス初のオールカラー」とのこと。すごいです。バック=モースの新刊の訳者である岩崎さんと高橋さんは上述の『メタヒストリー』の共訳者でもあり、重要書の同時発売には讃嘆するばかりです。すごい。なお叢書・ウニベルシタスでは今月ついに、ドゥルーズ/ガタリの『カフカ〈新訳〉――マイナー文学のために』が宇野邦一さんによる新訳で発売となる予定だそうです。これもすごい。 +++ ★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。 『パンツァー・オペラツィオーネン』ヘルマン・ホート著、大木毅編訳・解説、作品社、2017年9月、本体3,600円、四六判上製464頁、ISBN978-4-86182-653-5 『トーキョー・レコード――軍国日本特派員日記』上下巻、オットー・D・トリシャス著、鈴木廣之/洲之内啓子訳、作品社、2017年9月、本体各1,300えん、各448頁、ISBN978-4-12-206459-1/206460-7 『たいへんな生きもの――問題を解決するとてつもない進化』マット・サイモン著、松井信彦訳、インターシフト発行、合同出版発売、2017年9月、本体1,800円、46判並製328頁、ISBN978-4-7726-9557-2 ★『パンツァー・オペラツィオーネン』は発売済。訳者解説「知られざる作戦の名手――その明と暗」によれば、本書は「第二次世界大戦において重要な役割を果たしたヘルマン・ホート将軍の回想録にして唯一の著書である『装甲部隊の諸作戦』〔Panzer-Operationen: Die Panzer-gruppe 3 und der operative Gedanke der deutschen Führung Sommer 1941, Heidelberg, 1956〕に、ドイツの軍事専門誌『国防知識』(Wehrkunde)に発表された諸論文を加えて翻訳刊行するものである」とのこと。帯文には「貴重な原書オリジナル図版全収録」と謳われています。『国防知識』からの所収論文は以下の7本です。「ハンス=アドルフ・ヤーコプセン博士『黄号作戦』への書評」「1940年の西方戦役に対するマンシュタインの作戦契約と1940年2月27日付OKH開進訓令」「1940年2月24日の鎌の一撃計画成立について(ハンス=アドルフ・ヤーコプセン)」「1940年の西方戦役第一段階におけるフタンス機甲部隊の運命」「「1940年の西方戦役に対するマンシュタインの作戦計画と1940年2月27日付OKH開進訓令」について」「戦史の実例にみる、船体として運用された装甲師団の戦闘」「防御における戦車の運用と1959年のドイツ軍NATO式師団の新編制」。巻末には「ホート年譜」が併載されています。 ★『トーキョー・レコード』は発売済。文庫オリジナル版の訳書で、原書は『ニューヨーク・タイムズ』の記者トリシャス(Otto David Tolischus, 1890-1967)が東京特派員時代(1941~1942年)における日本での出来事や印象、個人的体験を綴った記録『Tokyo Record』(New York: Reynald and Hitchcock, 1943)です。著者自身による巻頭の特記には、「記録の元になったのは、日本の官憲に押収された著者の原資料の複製、『ニューヨーク・タイムズ』紙に送った特電、そして著者の記憶である。これらすべての事物は、六か月にわたる日本の官憲の尋問によって、また、独房監禁の間の著者自身の省察によって、払拭できないほど深く心に刻み込まれた」と記されています。「日米開戦前後の日本を伝える貴重な証言」(カバー紹介文より)で、全40章からなります。スパイ容疑で逮捕された著者は尋問と拷問を課せられました。訳者が強い印象を受けたというその実態は第38章「拷問」や第39章「日本の正義」で綴られています。上巻巻末に「訳者あとがき」、下巻巻末に佐藤卓己さんによる解題「伝説のスター記者、オットー・D・トリシャスがいま再び」と人名索引、事項索引が配されています。 ★『たいへんな生きもの』は発売済。原書は『The Wasp That Brainwashed the Caterpillar: Evolution's Most Unbelievable Solutions to Life's Biggest Problems』(Penguin Books, 2016)です。読んでいる最中に自然と声が出てしまう本。昆虫や動物、菌類たちの数々の戦略を紹介してくれます。生殖、子育て、住居、生き残り、捕食する方法やされない方法、等々、じつにアレな(繊細な方は要注意)、興味深い話が満載です。登場する生物は以下の通り。アアンテキヌス、チョウチンアンコウ、扁形動物、ヒゲガエル、ガマアンコウ、アリ断頭バエ、グリプタパンテレス属のハチ、アスプキャタピラー、マンボウ、シマテンレック、ピパピパ、カクレウオ、ウオノエ、テッポウエビ、シャカイハタオリ、ヒーローアリ、クマムシ、ミズグモ、ゾンビアリ、ヒメアルマジロ、ハダカデバネズミ、ヌタウナギ、アホロートル、コウイカ、エダハヘラオヤモリ、センザンコウ、タテガミネズミ、アフリカマイマイ、アイアイ、シャコ、ホネクイハナムシ、ハンミョウ、ナゲナワグモ、カギムシ、アンボイナガイ、ヤツメウナギ、サシガメ。本書が学校での生物の授業の教材だったら絶対に退屈しないでしょう。ひとつずつにイラストが付されていますが、スマホなどで画像検索、動画検索しながら読むとよりいっそう感心できると思います。 +++
by urag
| 2017-10-01 17:43
| 本のコンシェルジュ
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