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2017年 06月 22日

メモ(21)

ヤマト運輸と決裂しそうな雲行きによって、アマゾン・ジャパンの周辺では様々な変化が玉突のように連鎖しています。以下に取り上げる個人運送事業者の囲い込みもそうですし、今月で終了予定の日販へのバックオーダーの件も、業界内では連鎖の中に見る向きがあります(アメリカ本社へのアピール)。なお、バックオーダーの発注終了および版元直取引の慫慂については、予定では本日がアマゾン側の説明会の最終日です。ちなみに昨日は太洋社の債権者集会の第三回目でした。破産債権に対する配当は10月~11月頃の予定と聞いています。12月に計算報告集会が行われ、太洋社の件はようやく終結することになります。

「日本経済新聞」2017年6月22日付記事「アマゾン、独自の配送網 個人事業者1万人囲い込み」によれば、「インターネット通販大手のアマゾンジャパン(東京・目黒)が独自の配送網の構築に乗り出すことが分かった。注文当日に商品を届ける「当日配送サービス」を専門に手がける個人運送事業者を2020年までに首都圏で1万人確保する。ヤマト運輸が撤退する方向のため、代替策を模索していた。大手運送会社の下請けとして繁忙期に業務が集中しがちな個人事業者の活用が通年で進み、運転手不足の緩和につながる可能性がある」(以下閲覧には要登録)。

ポイントは「注文当日に商品を届ける「当日配送サービス」を専門に手がける個人運送事業者」というところ。「メモ(16)」でも言及した、例の「所沢納品センター」も当日配送が売りです。「アマゾンジャパン(東京・目黒)は、出版取次を介さない出版社との直接取引を広げる。自ら出版社の倉庫から本や雑誌を集め、沖縄を除く全国で発売日当日に消費者の自宅に届けるサービスを今秋までに始める。アマゾンによる直接取引が浸透すれば、取次や書店の店頭を経ない販売が拡大。書籍流通の流れが変わる節目になりそうだ。/埼玉県所沢市に1月、設立した「アマゾン納品センター」を直接取引専用の物流拠点として使う」(「日本経済新聞」2017年3月22日付記事「アマゾン、本を直接集配 発売日に消費者へ――取次・書店介さず」)。私は「取次を出し抜くレヴェルの「アマゾン最優遇」を版元や倉庫会社から勝ち取れるでしょうか」と書いたわけですが、アマゾン最優遇へと傾きつつある出版社に対して、取次さんや書店さんはどうお感じになるでしょうか。

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「日経新聞」と同様の記事には、「朝日新聞」2017年6月22日付、奥田貫氏記名記事「アマゾン、「当日配送」維持へ独自網強化 ヤマト縮小で」があります。曰く「通販大手のアマゾンが、「当日配送」ができる独自配送網の拡大に乗り出していることが分かった。宅配最大手のヤマト運輸が人手不足から当日配送を縮小しており、アマゾンはこれまで東京都心の一部で使っていた独自配送網を強化することで、サービスの維持を図る考えとみられる。/今月上旬から、新たに中堅物流会社の「丸和運輸機関」(埼玉県)に当日配送を委託し始めた。23区内の一部から始め、委託するエリアを首都圏に拡大していくとみられる。丸和はこれまで、ネットスーパーの配達などを手がけてきたが、当日配送を含めた宅配事業を大幅に拡大する方針だ」云々。同記事のヤフーニュース版ではコメント欄に興味深い投稿が並んでいます。「結局下請にブラックが増えるだけ」という指摘は、大方の業界人が抱く懸念ではないかと思います。

また、より詳細な記事としては、「DIAMOND online」2017年6月21日付、週刊ダイヤモンド編集部・柳澤里佳氏記名記事「ヤマトが撤退したアマゾン当日配達「争奪戦」の裏側」があります。丸和運輸機関が宅配事業の「桃太郎便」を強化していることを、和佐見勝社長への聴き取りなどから示しています。「5月、軽ワゴンを新車でなんと1万台発注。年内に3500台が納品予定だ。中古車も500台ほど手当てした。「〔・・・〕今がチャンス。ネット通販が伸び盛りの中、大手が運ばない当日配達の荷物を誰が運ぶかで、下克上が始まった」(和佐見社長)と鼻息は荒い」と。

さらに記事ではこうも報じられています。「近年、企業の物流業務を一括して請け負うサードパーティーロジスティクス、通称「3PL」企業がインターネット通販大手と組み、宅配に手を広げているのだ。/中でも注目されるのが、アマゾンと地域限定で提携する配達業者、通称「デリバリープロバイダ」で、丸和もこれに参画した。/先行者はアマゾンと二人三脚で急成長している。例えばアマゾンの倉庫業務や宅配が売上高の7割を占めるファイズは2013年に創業し、わずか4年で上場を果たした。他にはTMGやSBS即配サポートなどが取引を拡大中だ。/後発の丸和は、生協や大手ネットスーパーの宅配を長年手掛けてきたノウハウを生かし、接客の質で差別化を図る。「早く、丁寧に運べば、大逆転も狙える」(和佐見社長)」。

接客の質で差別化を図る、というのは重要です。というのも、アマゾン・ジャパンが利用している「デリバリープロバイダ」については、ウェブで目にする購入者からの評価には、ヤマト運輸に比してまだまだ厳しいものがあるものからです。「バズプラスニュース」2016年8月9日付、yamashiro氏記名記事「【激怒】不満爆発! Amazonの配送業者「デリバリープロバイダ」をできるだけ避ける方法――デリバリープロバイダが不評」や、「NAVERまとめ」2016年8月10日更新「【デリバリープロバイダ】Amazonの“TMG便”がひどいらしい・・・【届かない】」。残念ながらこれらは過去の話とは言えません。「デリバリープロバイダ」よりも、ヤマト運輸への信頼感が強いのが現状ではないでしょうか。ヤマトが当日配送から撤退となれば、「デリバリープロバイダ」側のサービスが向上しない限り、混乱は続きますし、アマゾンへの悪評も消えないでしょう。

先述の「DIAMOND online」の記事では次のような指摘もなされています。「「アマゾンに食いつぶされてたまるか」と拒絶反応を示す企業もある。「最初は頼み込まれて始めても、力関係は早晩変わるはず」(3PL企業幹部)。〔・・・〕アマゾンは宅配大手と同じように新興勢とも荷物1個当たりの成果支払いを要望。一方、新興勢からすれば、当日配達は再配達が多く、燃料費も人件費も掛かるので、料金を保証してほしい。水面下では、こうした攻防が繰り広げられている。〔・・・〕そして最大のネックは、やはり人手だ。すでに物流倉庫ではアジア系の労働力が欠かせない。外国人労働者が宅配ドライバーになる日も近いかもしれない」。3PL幹部の本音は小零細出版社の本音でもあります。色々と嫌な予感がしますが、同記事のヤフーニュース版のコメント欄も非常に興味深いです。例えば「犠牲者になる対象が変わっただけだよ。物流業はマンパワー以外手段はない。魔法があるなら大手はとっくに使っている」との声。まったく同感です。

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「日本経済新聞」では本日、加藤貴行氏・栗原健太氏記名によるこんな記事も配信しています。「アマゾンの荷物、一般人が運ぶ時代」によれば「アマゾンジャパン(東京・目黒)が日本国内で独自に配送網を構築することになった。アマゾンは個人事業者を活用し、宅配便首位ヤマト運輸を事実上中抜きする。実は親会社の米アマゾン・ドット・コムの目線はもっと先にある。究極の姿は、時間のある一般人に委託したり、ロボットを使ったりする手法だ。アマゾンが世界の物流のあり方を変えようとするなか、欧米企業も対応を進めている」(以下要登録)。記事では米国で2015年から始まっている、個人に宅配を委託する事業「アマゾンフレックス」や、2016年に英国で始めたドローンによる自動配達試験「アマゾン・プライム・エアー」のほか、目下アマゾンが研究中のとある技術、またドイツのダイムラーの「危機感」にも言及しており、必読です。

このほか参考すべき記事には「ITmedia NEWS」2017年6月17日付記事「Amazon、一般人に荷物運びを依頼? 新アプリ開発中か:外出のついでにAmazonの荷物を運んで小遣い稼ぎ──こんなことができるようになるかもしれない」があります。「日経新聞」が参照している「Wall Street Journal」の記事について触れたものです。曰く「Amazon社内で「On My Way」と呼ばれているというこのサービスは、「配達のクラウドソーシング」だ。都市部の小売業者に依頼して荷物を集積しておき、一般人はどこかへ行くついでに荷物を配達する仕組みになるようだ。こうした仕組みを実現するモバイルアプリを開発中という」。

この「On My Way」をめぐる同様の記事には、「TCトピックス」」6月17日付、Jordan Crook氏記名記事「Amazonが一般人が商品配送に参加できるアプリを開発中との情報」や、「ITpro」6月17日付、小久保重信氏記名記事「Amazon、一般の人が商品を配達する新たな仕組み「On My Way」計画中」があります。前者では「WSJの記事によれば、On My Wayプロジェクト〔への〕参加者はこうしたロッカーやAmazonの商品を預かるコンビニなどでパッケージをピックアップし、最終目的へ届けるのだろうという」と。 後者では「Wall Street Journalによると、Amazonがこの計画を実現させれば、同社は「クラウドソース・デリバリー」と呼ばれる、一時的な契約職員を使った配達サービス事業に参入することになる。ただし、この分野では大手運送業者などと競合する規模でサービスを展開した企業はまだない」と紹介されています。

画期的とも言える一方で、様々な配送トラブルが見込まれることは否応ないように感じます。

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アマゾン・ジャパンの書籍事業本部による「商品調達および帳合取次との取引変更に関する説明会」についてごく簡単に書いておきます。この説明会の内容は「confidential」と銘打たれていましたから詳細には言及しませんが、いつも通りのご高説でアマゾン側から見た論理としてはたいへん筋の通った話でした。むろんそこに取次や出版社の視点をさしはさむ余地はなく、その意味ではツッコミどころ満載ではありました。

本日6月22日付の「新文化」では1面に「日販「在庫見える化」「出荷確約」を推進/「アマゾン問題」をどう捉えるか」が掲載されています。リードはこうです。「アマゾンジャパン(以下、アマゾン)が日販へのバックオーダー発注を終了すると発表してから約2カ月が経過した。アマゾンは説明会を繰り返し行い、出版社に直接取引を推奨しているが、日販との関係を鑑みていまだ結論を出せない出版社も少なくない。この問題解決には「日販の在庫拡充」か「出版社の直接取引」の2択しかないというアマゾンの主張を、日販はどう受け止めているのか。日販の安西浩和専務と大河内充常務に話を聞いた。(聞き手=本紙・丸島基和)」。

アマゾンの説明会を聞いた印象では、彼らは日販のこれまでの労苦を多としつつも「限界がある」と見ており、私の印象で言えば、完全に日販を見限っている様子が窺えました。また、アマゾンの皆さんは各種マスコミやネットでアマゾンがどう批評されているかを逐一チェックされているとのことで、内心の苛立ちを隠さないお話しぶりでした。スタッフの皆さんはそうしたアマゾン批評を見ても、立場上一切リプライを返せないのでしょう。その辺はもっと風通しが良くなってもいいのではないか。

そもそも業界関係者がネットでアマゾンに物申している背景には、アマゾンに直言したとしてもこれといった「話し合い」にはならないという、繰り返されてきた悲しい現実があります。彼らは良くも悪くもチームワークで対応するため、一対一の関係でとことん話し合うという企業風土がないように見えます。さらに、アマゾンの方針から外れる案件にはどんな種類の問い合わせであれまったく答えようとしない合理主義というものが徹底されているようにも見受けます。要するに出版社にとってはそもそも人的コミュニケーションが取りづらい相手なのです。そうじゃないよ、誤解だよ、交流できるよ、というアマゾン内部の方がいるとしたら、ぜひ直接話を聞いてみたいものです。

一言で言えば、アマゾンの説明会は不愉快なものでした。アマゾンの言いようは総じて日販に対して否定的なニュアンスがあり、「新文化」記事で紹介されているような日販側の言い分とは相容れないように思えました。以前私は「このままでは日販は言われっぱなしだ」と書きましたが、実際にその通りになっていました。彼らが掲げる「お客様第一主義」という御旗には、日販の苦労も、出版社の思いも、ヤマト運輸のそれと同様、残念ながら届かないと思います。大したイノベーションですよ、まったく。

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by urag | 2017-06-22 10:40 | 雑談 | Trackback | Comments(0)
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