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2016年 03月 05日

注目新刊:津村喬、ウィリアムズ、ハーヴェイ、など

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横議横行論
津村喬著 酒井隆史解説
航思社 2016年2月 本体3,400円 四六判上製344頁 ISBN978-4-906738-16-8

帯文より:「瞬間の前衛」たちによる横断結合を! 抑圧的な権力、支配システムのもとで人々はいかに結集し、蜂起するのか。全共闘、明治維新、おかげまいり、横巾の乱、文化大革命、ロシア革命、ナチズムなど古今東西の事象と資料を渉猟し、群衆、都市文化、組織、情報、戦争、身体、所作/作風などあらゆる側面から考証、「名もなき人々による革命」の論理を極限まで追究する。

★発売済。シリーズ「革命のアルケオロジー」第五弾です。単行本未収録論考に、書き下ろしを加えた一冊。目次詳細は書名のリンク先でご覧ください。表題作である第一章「横議横行論」は1980年から1981年にかけて工作舎の『遊』に連載されたもの。その続編である第八章「横議横行論(続)」が書き下ろし。第二章から第七章までは70年代に各誌で発表された論考です。巻末の長編解説「一九六八年 持続と転形」(400字詰で約100枚!)は酒井隆史さんによるもの。津村さんの著書をこんにち読み返すことの意義について熱く語られています。

★「横議横行論(続)」にはこう書かれています。「もはや誰も「左翼」について語らず、考えようともしないが、国家全体がどんどん右傾化していく二度目のプロセスが今進んでいるなかで、「左翼」が踏みとどまって声を上げていくということが何よりも大事だ。しかし、私たちは「戦後左翼」も「新左翼」にももう何事も期待していない。「戦後左翼と「新左翼」に共通した欠点は、「自分の主張だけが正しい」という立場に立ったことである。その背後には、レーニンやトロツキーなど様々な先達の言葉が覆いかぶさり、それぞれが人と違う説を立てて、一党一派を作った。〔・・・〕言葉で自分を定義できる、言葉によって自分は左翼だと思うことが病だったのだ。〔・・・〕私は前衛だ、と思う人は、ただ自分のまなぶことができた知識でそう思っているにすぎなかった。だから人を押しのけて論争し、言い負かすことに自分の存在価値はあった」(277-278頁)。

★猪俣津南雄を参照しつつ議論は続きます。「縦割りにされている産業別と党派別の組織のそれぞれの中に、左翼的な役割を果たせる「個人」がいる。その個人が縦横につながっていくことで不定形の、絶えず変形する「前衛的なもの」が現前していく。前衛党と称する党派のメンバーであるならば前衛なのではなく、その一人一人が現に果たしている役割によって決まる、と〔猪俣は〕考えた。自称前衛党であってもその局面で反動的な役割を果たすこともあるし、右翼組合や中間政党に籍をおいていても、ある時点ではすばらしい積極的な役割を果たすこともある。その者が次の局面ではまた反動的な役割を持つこともある。前衛制度論ではなく、前衛機能論がこれだった。これを横断左翼と呼んだのだ」(279—280頁)。

★「いま横議横行論から横断左翼までを振り返ってみる理由というのは、またしても右翼的反動の時代を迎えつつある中で、タテ社会ではないヨコの抵抗組織、そこからくる新しいヨコ社会のあり方を展望してみようという思いからなのである」(281頁)。これに呼応するようにして酒井さんはこう書いています。「かくして誰もが過去を乗り越え、すべての欠点を克服したはてに、歴史の絶頂に位置することになる。現代は、このような自己愛と高慢の情動で充填された日本語で満ちあふれている。本書がなぜいま読まれなければならないか? そのような日本語空間――津村喬たちが「国=語」と名づけた――の外に脱出し、わたしたちのスタイルをあらためて獲得するためにほかならない」(337頁)。


想像力の時制――文化研究II
レイモンド・ウィリアムズ著 川端康雄編訳 遠藤不比人ほか訳
みすず書房 2016年2月 本体6,500円 A5判上製400頁 ISBN 978-4-622-07815-9

帯文より:「ユートピアとSF」「メトロポリス的知覚とモダニズムの出現」「演劇化された社会における演劇」「文学と社会学」ほか本邦初訳15篇、新訳1篇。ジャンルをこえ展開する「文化唯物論」の地平。

★発売済。「文化研究」全二巻完結です(第I巻『共通文化にむけて』は2013年12月刊)。目次詳細は書名のリンク先でご覧下さい。「歴史・想像力・コミットメント」「アヴァンギャルドとモダニズム」「文学研究と教育」「文学と社会」の四部構成。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。著者のウィリアムズ(Raymond Williams, 1921-1988)が急逝する半年前に行われたイーグルトンとの対話「可能性の実践」(1987年)が末尾に収録されていることにも注目です。20世紀イギリスを代表する左派論客の、新旧それぞれの世代を代表する二人による対談は30年前のものですが、当時よりある意味で危機がいっそう国内外に進行しつつあるこんにち、切実さをもって読むことができます。

★イーグルトンはこう問いかけます。「社会主義という目標は、現在はるか遠く離れたところにある。これまで政治活動をなさってきた中でも、どの時期にも劣らないくらい、いや、もっと遠くなったとさえいえるかもしれません。まさしくわたしたちが目にしているのは、政治について人びとが記憶しているなかでも労働者階級への悪意を剥き出しにした言語道断の政権です。警察国家の地ならしがなされ、それに対する左翼の対抗はみたところ混乱しています。軍事面でいえば、わたしたちはひどい危険にさらされています。そこでうかがいたいのですが、かくも長き闘争の果てに、どんな意味であれ幻滅を感じておられるのでしょうか? サッチャーの第三期政権が決まった選挙の直後という状況で、政治的な思考と希望をどのようにいだいておられるのか」(355-356頁)。

★ウィリアムズの第一声はこうです。「幻滅はまったく感じていません」。自身の人生を振り返り、様々な現実に出会って落胆と挫折、敗北感を重ねたことを回想しつつも、いっそう社会主義を信じる彼の立場には、単なる理想主義という以上のしなやかさ、「果てしもない打たれ強さ」(368頁)を感じます。「たとえば核戦争を避けられるかどうかを見積もって〈五分五分かな〉と言うとしたら、即座にわたしはあべこべにして五十一対四十九とか六十対四十にしてみせます。希望のために語らなければならないと言うゆえんです――それが危険の本性を隠してしまわないかぎりはね。/思うに、わたしの社会主義はたんなる幼少期の経験の延長ではありません。〔・・・〕それはしっかりと根を張っていて破壊できない、しかし同時に変化を伴いつつ体現された、共通のくらしの可能性なのです」(同頁)。

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★つづいて、作品社さんの3月新刊より3点をご紹介します。

〈資本論〉第2巻・第3巻入門』デヴィッド・ハーヴェイ著、森田成也・中村好孝訳、作品社、2016年3月、本体2,800円、46判上製554頁、ISBN978-4-86182-569-9
ルイ14世期の戦争と芸術――生みだされる王権のイメージ』佐々木真著、作品社、2016年3月、本体6,800円 A5判上製528頁 ISBN978-4-86182-566-8
絶望と希望――福島・被災者とコミュニティ』吉原直樹著、作品社、2016年3月、本体2,200円、46判上製260頁 ISBN978-4-86182-576-7

★『〈資本論〉第2巻・第3巻入門』は発売済。『〈資本論〉入門』(森田成也・中村好孝訳、作品社、2011年)の続編です。訳者解説に曰く「主として『資本論』第二巻の解説を対象としつつ、『資本論』第三巻の核心部分をも大胆に組み込んでいる」と。原書は、A Companion to Marx's Capital Volume 2 (Verso, 2013)です。版元さんによるプレスリリースではこう謳われています。「グローバル経済を読み解く鍵は、〈第2巻〉の「資本の流通過程」分析にこそある」と。訳者解説にはこうあります。「この流通過程論は経済地理学のテーマと多くの重なり合うテーマ(資本の空間的移動、流通時間、資本の回転、時間による空間の絶滅、等々)を対象にしており、経済地理学者たるハーヴェイにとってまさに最も興味をそそる理論領域と言えよう」。資本主義のしくみを誰よりも冷徹に分析したマルクスに近づくためのたいへん有益な解説書です。

★『ルイ14世期の戦争と芸術』は発売済(3月3日取次搬入)。著者の佐々木真(ささき・まこと:1961-)さんは駒澤大学文学部教授で、ご専門はフランス近世史です。近年の著書に『図説 フランスの歴史』(河出書房新社、2011年)があり、同書は今月、増補新装版が発売される予定です。今回の新著は、2013年に駒澤大学から博士(歴史学)の学位が授与された博士論文「フランス絶対王政期の戦争と芸術――ルイ14世期の視覚メディアを中心に」をもとに大幅加筆修正されたものです。版元さんによるプレスリリースの文言を借りると「王宮の室内装飾や絵画、タピスリー、メダル、建築物、版画など、国王像の保存と伝達に大きな役割を果たした視覚メディアを、約160点の豊富な図版を用いて解き明かした」労作です。索引(人名・事項)、文献一覧、図版出典一覧、付表も充実しています。


★『絶望と希望』はまもなく発売(3月9日取次搬入予定)。帯文に曰く「3・11、あれから5年。報道されない“体の不調”と“心の傷”、破壊され、そして新たに創出される人々の絆とコミュニティ――。被災者の調査を続けてきた地域社会学の第一人者による現地調査の集大成」と。「難民化・棄民化する被災者」「被災コミュニティの虚と実」の二部と、結章「不安の連鎖から見えてくるもの――『絶望の情熱』を持ち続けるなかで」から成る本書は、前著『「原発さまの町」からの脱却――大熊町から考えるコミュニティの未来』(岩波書店、2013年)の刊行以降に各媒体へ寄稿したものを再構成したもので、当事者以外にとっては徐々に忘却の闇に埋もれつつある被災者の現実を明らかにし、そこにある絶望と希望をつぶさに描きだしています。著者の吉原直樹さんは社会学者で、現在、大妻女子大学社会情報学部教授、東北大学名誉教授でいらっしゃいます。
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by urag | 2016-03-05 23:42 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
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