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2005年 09月 04日

今週の注目新刊(第18回:05年9月4日)

ジョルジュ・バタイユの《不定形》の美学
江沢健一郎(1967-)=著
水声社 2005年8月刊 本体価格:4,500円 A5判上製394頁 ISBN:4891765623

■帯文(宇野邦一氏推薦文)より:バタイユの美術論は、彼のエロティシズム論と直結しており、いまも生々しい挑発であり続けている。この本は、バタイユの図像や造形に関する思索の一貫性を精緻に読み解いた、はじめての試みである。

■目次:
序論 ジョルジュ・バタイユと造形芸術の問題をめぐる地図
第1章 割れた鏡の中から、亀裂を抉りながら――『ドキュマン』における写真使用法
第2章 『ドキュマン』における不定形の美学――イデアリスムに抵抗する唯物論
第3章 芸術の誕生をめぐって――『ラスコーあるいは芸術の誕生』、芸術の生成的価値と内在性
第4章 人間の形象――『ラスコーあるいは芸術の誕生』『マネ』『エロスの涙』を結ぶ線
第5章 表象の抹殺、口を開く裂け目――『マネ』と現代絵画の誕生
結論 形態の下にあるもの

●本書は、小社より刊行予定の、ロザリンド・クラウスとイヴ=アラン・ボワとの共著である『アンフォルム:無形なるものの事典』と共通の主題を扱っている本です。本書のひとつ前に水声社さんが刊行した上田和彦さんの『レヴィナスとブランショ』もそうですが、類書のない貴重な研究書で、基本図書として長く残って欲しい本です。

***

bk1の「本日入荷の新刊」をいちおうチェックはしていますが、24時間以内に出荷可能な在庫品が壊滅的につまらない書目ばかりなので(と苛立ち紛れに大げさに書いていますが)、TRCの今はなき「週刊新刊案内」と比べて全く役に立ちません。それでもここ一週間の入荷で目立ったものを2点だけ挙げます。

君主の統治について――謹んでキプロス王に捧げる
トマス・アクィナス=著 柴田平三郎(1946-)=訳
慶応義塾大学出版会 2005年9月刊 本体価格2,500円 46判上製216+5頁 ISBN : 4-7664-1187-0

■帯文より:中世政治思想の第一級古典の邦訳。〈君主〉とは、いかにあるべきか。クセノフォン『キュロスの教育』からマキアヴェッリ『君主論』にいたる帝王学の系譜のなかでも最も著名なものの一つで、中世政治思想の特質のみならず、トマス思想全般の理解にも不可欠の書。

■版元紹介文より:"De Regno Ad Regem Cypri"の全訳。あるべき君主像、統治の形態などを、伝統的な「君主の鑑」の文芸ジャンルの体裁に則って論じる。

■目次:
献辞

第一巻
 第一章 生活を共にする人びとは誰か王によって慎重に統治されるのが必要であること。

 第二章 生活を共にする人びとにとっては、一人の人間によって統治されるほうが、複数の人間によって統治されるよりも、いっそう有益であること。

 第三章 一人の支配が正しいがゆえに、最善であるように、その反対は最悪であること、それは多くの理由および論拠によって証明される。

 第四章 ローマ人の間で支配権はいかに変遷したか、またかれらの間ではむしろ多数者支配の国家がしばしば発達したということ。

 第五章 多数の支配においては、一人の支配におけるよりも、しばしば僭主制的支配が生じること、したがって一人の支配のほうが優ること。

 第六章 一人の支配が確かに最善であるとの結論。民衆はその人に対してどのような態度をとるべきか、を示す。それは僭主制に陥る機会をかれから取り除くことが必要だからである。そしてより大なる悪を避けるためにこの支配が認容されるべきであること。

 第七章 本章で聖博士は、現に王の統治において主要な動機となるのは名誉か栄光のいずれであるか、そしてさらにそれらのいずれかを守るべきか、について見解を示す。

 第八章 本章で博士は、王をして善き統治へと促す真の目的とは何か、について説き明かす。

 第九章 本章で聖博士は、王侯君主の報酬が天上の浄福において最高の位置を占めることを説き明かし、そのことを数多くの理由と実例によって指し示す。

 第一〇章 王侯君主はそこより生じる自己自身の善と利益のために善き統治を熱心に求めねばならないこと。その反対から僭主制的支配が生じること。

 第一一章 富、権力、名誉、名声のごとき世俗的善は僭主のもとによりも王のもとにより多く訪れること、およびこの世において僭主たちの陥る悪について。

 第一二章 王の職務とは何か、を進んで明らかにする。自然の道理により、王国における王はあたかも肉体における魂、現世における神と同じようなものである。

 第一三章 この類似性から統治の方法を学ぶ。神がそれぞれの事物をその秩序、固有の作用および場所によって区別し給うように、王もまた王国において人民を同様に扱う。魂に関しても同じである。

 第一四章 いかなる統治方法が、神の統治方法にしたがったものとして、王に適合するか。その方法は船の舵取りに端緒を発する。そして時に聖職者の支配と王の支配との比較が試みられる。

 第一五章 王がその人民を徳にしたがった生活へと導くのは終局目的を目指すためであること。その中間的目的についても同様であること。また善き生活を整えるものと、それを阻害するものとは何か、そしてその阻害するものに対して王はいかなる対策を講ずるべきか、を論じる。

第二巻

 第一章 王は名声を博すべくいかにして都市もしくは陣営を建設すべきか。そしてそのために気候温暖な土地を選ぶべきこと、およびそのことから統治上、どのような便益が生じ、その反対にどのような不利益が生じるか。

 第二章 王や君主は都市あるいは陣営を建設すべくいかにして空気が健康に良い地方を選ぶべきか。そしていかなる点において、またいかなる徴候においてこのような空気が感知されるかを明らかにする。

 第三章 君主にとって建設されるべき右のような都市はどのようにして食糧の豊富を確保すべきかであるか。豊富な食糧なしには都市は完全なものとはなりえないがゆえに、そしてその豊富を確保する二つの方法を区別する。第一のほうをとくに推奨する。

 第四章 都市や陣営を建設する場合、王が選ぶべき地方は風光明媚な場所であるべきこと。ただし市民はこれを適度に用いられるようにすべきこと。というのも風光明媚な景観は往々にして惰弱の原因であり、国を滅ぼすことになるからである。

訳注
訳者解説「トマス・アクィナスと西欧における〈君主の鑑〉の伝統」
訳者あとがき
索引

●ちなみにトマスの主著『神学大全』が創文社で翻訳出版され始めたのは1960年5月。以来、45年間にわたって、1~28巻、41~43巻の合計30点が刊行されました。すごいことです。その不屈の持続力はまことに崇敬すべきものがあり、同業者として見習いたいものです。今月(2005年9月)には、稲垣良典さん(1928-)による訳で第44巻「第3部 79-83問題(聖体の秘跡(執行))」が刊行予定。本書を含め稲垣さんは実に、 大全のうち13点の翻訳出版に四半世紀をかけて関わってこられました。ただただその偉業に賛嘆の念を深くするばかりです。


テレビのエコーグラフィー――デリダ〈哲学〉を語る
ジャック・デリダ(1930-2004)+ベルナール・スティグレール(1952-)=著 原宏之(1969-)=訳
NTT出版 2005年9月刊 本体価格2,800円 46判上製267頁 ISBN : 4-7571-4058-4

■帯文より:アクチュアリティはつくられる――デリダはテレビでなにを伝えようとしていたのか。デリダによるデリダ哲学の読解。

■版元紹介文より:マスメディアによるアーカイブ(記憶)とアクチュアリティ(時事性)の間断なき創出により我々は全く新しい「経験」を埋め込まれようとしている。それは「人為的時事事実性」ともいわれるべき現象である。我々もしくは歴史家が出来事をきちんと記述する以前にメディアは選別し、同時代的に地域という出来事の枠を広げて共有されてしまう。今一度「われわれは何を記憶すべきでなにを思考すべきなのか」が問われる。

■目次:
第一部 「人為時事性」 ジャック・デリダ
第二部 「テレビのエコーグラフィー」 ジャック・デリダ+ベルナール・スティグレール
 視線の権利
 アーティファクチュアリティ、ホモヘゲモニー
 記憶の証書――地政とテレテクノロジー
 遺産相続とリズム
 「文化例外」――国家の状態、出来事
 アーカイヴ市場――真理、証言、証拠
 フォノグラフィー:意味――遺産相続から地平へ
 幽霊的な記録(分光写真[spectorographie])
 無意識の警戒
第三部 「離散的イマージュ」 ベルナール・スティグレール

●共著ではありますが、スティグレール(シュティグレールとも表記されることがあります)の単行本が日本語訳されるのは初めてですね。今後ますます紹介されていくはずの哲学者です。まもなくフランスでは、ガリレ社の叢書デバから、2巻本の"Constituer l'Europe"が刊行される予定。第1巻は"Dans un monde sans vergogne"、第2巻は"Motivations, performances et singularités des Européens"と題されています。なかなか面白そうですね。

***

以上です。(H)
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by urag | 2005-09-04 22:45 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
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