グローバル企業をターゲットにしているというジョマンゴの話題とはたて分けておくが、なぜ出版人や書店員が「万引」一般を強く否定するのか、その背景の一端について触れたいと思う。
書店員経験のある
葉っぱ64さんが指摘されているように、書店の万引は、ただただ書店側の損益となる。盗まれた本の代金は、書店が肩代わりし、取次や版元にはきちんと代金が支払われる。つまり、買われようが盗まれようが、取次や版元には全く関係ないのだ。もちろん著者の印税にもまったく響かない。
しかし、関係ないからどうだっていい、などとは私は一出版人としてとうてい思えない。どうでもいいわけがない。
書店員さんに万引の話を聞くのはけっして気楽なものではない。売上の実情にもかかわってくる話題だし、万引犯の「プライバシー」の問題もある。けれども業界人としては「現実」を知らないままで済ませるわけにはいかない。
某書店の店長が万引問題について、匿名で語った記事がある。一読して暗澹たる思いに襲われるが、「現実」の一端を知るうえでは読んでおきたい。長文になるので、リンク先をご覧頂こう。ペンネーム「本屋一郎」さんの「万引犯、許すまじ――現役店長の立場から」(
「[本]のメルマガ」217号所収)である。
また、当ブログにたびたびコメントを寄せてくださっている現役書店員の「秋嶋」さんのブログ、「
秋嶋書店日記」での、万引に関するエントリーもご参照頂きたい。たとえば、
2005年4月3日の記事など。
書店に限らず、小売業における万引問題には深刻なものがある。東京都が行った世論調査によれば、万引に対する犯罪意識は若年層において薄まりつつあるようだ。道徳やモラルや倫理について、私たち現代人はまずどこから考え始め、語り始めることができるのだろうか。(H)