2015年 12月 19日

注目新刊:批評誌『ゲンロン』創刊、ほか

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ゲンロン1 特集=現代日本の批評
東浩紀編
ゲンロン 2015年12月 本体2,300円 A5判並製276+E16頁 ISBN978-4-907188-12-2

★発売済。目次詳細や入手方法については誌名のリンク先をご覧ください。書店向けの内容紹介文に曰く「批評誌『ゲンロン』新創刊!『思想地図β』のゲンロンが、2年の沈黙を破り、この秋より年3回批評誌を刊行します。/特集:現代日本の批評……創刊号特集は『季刊思潮』『批評空間』を受けた大型企画「現代日本の批評」。東浩紀・大澤聡・市川真人・福嶋亮大の4人が1975年から1989年までの批評史を語り尽くします。佐々木敦・安藤礼二も論文で参加。大澤渾身の制作の折込年表は必見!」と。

★東さんによる「創刊にあたって」は東さんの現在の立ち位置を端的に示すもので、71年~81年生まれの四氏による共同討議「昭和批評の諸問題 1975-1989」はこの世代の歴史認識を明確にしています。また、巻頭の鈴木忠志さんと東さんの対談「演劇、暴力、国家」はゲンロンカフェの意義を明かす内容ともなっています。おそらく世代が違ったり異なる文化的背景を持っていれば別の現況認識や歴史記述が生まれるでしょうから、それぞれのコンテンツには賛否両論があるのでしょうけれども、新たに磁場=媒体を立ち上げる苦労を厭わず、特集や討議などを通じて一視角を打ち出し、啓蒙的であることを恐れない姿勢に共感を覚えます。これらはこんにちではすべて面倒臭い作業と思われているであろうことだからです。

★一般書店で同誌を扱っているのは、オンラインではアマゾンと楽天ブックス、リアル書店では紀伊國屋書店、青山ブックセンター、丸善/ジュンク堂書店、ブックファースト、三省堂書店、有隣堂書店、リブロ/パルコブックセンター、大垣書店、戸田書店、といったチェーンのほか、個別の店舗では東京大学生協駒場書籍部、ちくさ正文館、スタンダードブックストア、ブックスキューブリックなど。書店への案内によれば「『ゲンロン』の委託販売は特約店に限定させていただいています。特約店以外のみなさまには、買切でのご注文をお願いしています(1冊より、送料別。5冊以上は送料弊社負担)。卸正味70%」とのことです。

★なお、来年2月には東さんによる書き下ろし/語り下ろし作『観(光)客の哲学』が「ゲンロン0」として発売予定とのことです。さらに3月予定の「ゲンロン2」ではメイン特集「慰霊の思想(仮)」が予定されているほか、共同討議の続編と思われる「現代日本の批評2(平成批評の諸問題 1989-2001)」や、千葉雅也さんが思弁的実在論を語る特別対談などが掲載されるそうです。

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★また、まもなく以下の新刊が店頭発売開始と聞いています。

吉本隆明全集11[1969‐1971]』晶文社、2015年12月、本体6,500円、A5判変型上製640頁、ISBN978-4-7949-7111-1
戦略とスタイル 増補改訂新版』津村喬著、高祖岩三郎解説、航思社、2015年12月、本体3,400円、四六判上製360頁、ISBN978-4-906738-14-4
1945 予定された敗戦――ソ連進攻と冷戦の到来』小代有希子著、人文書院、2015年12月、本体3,500円、4-6判上製372頁、ISBN978-4-409-52062-8
貧困大国ニッポンの課題――格差、社会保障、教育』橘木俊詔著、人文書院、2015年12月、本体1,700円、4-6判並製216頁、ISBN978-4-409-24105-9

★『吉本隆明全集11[1969‐1971]』は12月19日発売予定。第8回配本となる第11巻には「大学紛争をひとつの背景とする『情況』と、国家の思想としての天皇および天皇制論、そして重要な講演「南島論」」などを収録、と帯文にあります。「〈書物〉を著述するもの書きとしてのわたしが、いちばん大切にかんがえている声や視線は、けっしてわたしの〈書物〉を読まない人々の声や視線である」(584頁)という「書物の評価」の一節が個人的に印象に残ります。届かない人々、不可視の人々への畏怖。付属の「月報8」は、磯崎新さんによる「「東京原人」吉本隆明」と、ハルノ宵子さんの「でたらめな人、文を書く」(『midnight press』第8号より再録)が掲載されています。次回配本は第12巻、来年3月刊行予定とのことです。なお、他社の近刊になりますが、吉本さんの南島論に関連する論考をまとめた『全南島論』が作品社さんより来年2月刊行と予告されています。予価5,000円。

★津村喬『戦略とスタイル 増補改訂新版』は12月22日取次搬入予定。シリーズ「革命のアルケオロジー」の第4弾です。親本は田畑書店、1971年刊。当時津村さんは弱冠23歳、わずか1ヶ月で書き下ろしたという伝説の本です。同書についての回想を津村さんのブログ記事「戦略とスタイル その1」(「津村喬の気功的生活」2012年7月4日付)で読むことができます。今回発売される増補改訂新版では巻頭に「新版まえがき」を置き、新版補遺として「風俗と文化の革命――日本民俗学批判の実践的諸前提」が追加され、「あとがき」では旧版のそれに続いて「新版追記」が足され、巻末には高祖岩三郎さんによる長文解説「「遥か彼方からの通信〔コミュニケ〕」をいま読むために」が配されています。「新版まえがき」にある「本書は、国家を離脱した人にこそ読んでほしい本です。まだそこまでいかずとも、意識の上で離脱した人々に」(23頁)という呼びかけが鮮烈です。同シリーズでは津村さんの新著『横議横行論――名もなき人々による革命』が続刊予定と記載されています。

★人文書院さんの新刊2点、小代有希子『1945 予定された敗戦』と橘木俊詔『貧困大国ニッポンの課題』はともに12月18日取次搬入済で、すでに書店店頭に並び始めているようです。両書とも目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。前者は、著者のImperial Eclipse: Japan's Strategic Thinking about Continental Asia before August 1945 (Cornell University Press, 2013)を著者自身が日本語で書きなおしたもののようです。日本語の単著としては本書が初めてのものになります。アメリカによる「太平洋戦争史観」の克服を企図する試みで非常に興味深いです。「正体がつかめないものは、終わらせることはできないし、その遺産を処理することもできない」(25頁)という著者の鋭い指摘が胸に響きます。長らく海外で教鞭を執られ、2006年からは日大国際関係学部教授をおつとめの小代さんの業績はご自身の公式ウェブサイトに詳しく、本書についても言及されています。

★橘木俊詔『貧困大国ニッポンの課題』は「日本はすでに貧困大国だ。しかし、消費増税による社会保障と教育改革で再生する!」と帯にあって、一見すると人文書院さんのこれまでの本のキャッチコピーにはなかったような空気感があるのですが、同社では橘木さんの共著書を2点刊行しています。『貧困を救うのは、社会保障改革か、ベーシック・インカムか』(山森亮共著、2009年)、『来るべき経済学のために』(根井雅弘共著、2014年)です。帯文の意味するところは巻頭の「序 「脱成長」から福祉国家の構築へ」でも明らかですが、橘木さんは日本が福祉国家になるための財源を「消費税で賄うしかない」(3頁)とする立場で、詳しくは本書第II部「福祉」で詳しく論じられています。消費税に懐疑的だというピケティさんとのやりとりも序で簡単に紹介されています。なお生活必需品については橘木さんは課税なしや軽減税率が不可欠とのご見解です。
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by urag | 2015-12-19 22:52 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
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