2015年 12月 05日

注目新刊:デランダ『社会の新たな哲学』、メッザードラ『逃走の権利』、ほか

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社会の新たな哲学――集合体、潜在性、創発』マヌエル・デランダ著、篠原雅武訳、人文書院、2015年11月、本体2,800円、4-6判並製238頁、ISBN978-4-409-03089-9
逃走の権利――移民、シティズンシップ、グローバル化』サンドロ・メッザードラ著、北川眞也訳、人文書院、2015年11月、本体3,400円、4-6判並製370頁、ISBN978-4-409-24103-5
カドモスとハルモニアの結婚』ロベルト・カラッソ著、東暑子訳、河出書房新社、2015年11月、本体5,500円、46判上製548頁、ISBN978-4-309-23096-2
哲学者の自己矛盾――イスラームの哲学批判』ガザーリー著、中村廣治郎訳注、東洋文庫、2015年12月、本体3,100円、B6変判上製函入380頁、ISBN978-4-582-80867-4

★人文書院さんの新刊2点、デランダ『社会の新たな哲学』と、メッザードラ『逃走の権利』は発売済。前者『社会の新たな哲学』の原書は、A New Philosophy of Society: Assenblage Theory and Social Complexity (Bloomsbury Publishing, 2006)です。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。巻頭の「はじめに」を立ち読みすることもできます。デランダ(Manuel DeLanda, 1952-)の著書が訳されるのは、『機械たちの戦争』(杉田敦訳、アスキー出版局、1997年)に続いてようやく2冊目。後者『逃走の権利』の原書は、Diritto di fuga: migrazioni, cittadinanza, globalizzasione (ombre corte, 2006)です。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。巻頭の「序論」を立ち読みすることもできます。メッザードラ(Sandro Mezzasra, 1963-)の単独著は単行本としては本邦初訳。既刊にはフマガッリとの共編書『金融危機をめぐる10のテーゼ――金融市場・社会闘争・政治的シナリオ』(以文社、2010年)があります。メッザードラの新刊は昨今日常的にニュースで見聞きする移民問題について考える上で非常に示唆的です。人文書院さんでは来月末にいよいよ、カンタン・メイヤスー『有限性の後で――偶然性の必然性についての試論』(千葉雅也・大橋完太郎・星野太訳、人文書院、2016年1月、本体2,200円、4-6判236頁、ISBN978-4-409-03090-5)が発売されると聞きます。ガブリエル=ジジェク『神話・狂気・哄笑――ドイツ観念論における主体性』(堀之内出版、2015年11月)も発売されたことですし、ガブリエルの論考「形而上学の根本的問いに対するシェリングの答え――『啓示の哲学 初稿』における」の翻訳と解題を掲載した『ニュクス』第2号もまもなく発売(12月10日頃)になるので、新刊台が賑わいますね。

★『カドモスとハルモニアの結婚』は発売済。原書は、La nozze di Cadmo e Armonia (Adelphi, 1988)です。カラッソ(Roberto Calasso, 1941)は、『ニーチェ全集』やカッチャーリの主要著作などの出版で著名なイタリア・ミラノの人文系版元の名門アデルフィの社長であり、編集を務めるかたわら、本書のような、23カ国で発売されているベストセラーも上梓しています。岡田温司さんが日本語版解説「神話の想像力――ロベルト・カラッソの言語的宇宙」を寄稿されておられます。イタリア現代思想が気になる方にはカラッソやメッザードラの新刊が要チェックです。なお、カラッソさんは現在来日中で、今週は東京で講演を終え、来週は京都で講演があります。リンク先の情報をご覧ください。また、河出書房新社さんの注目新刊には、同社編集部編『長渕剛――民衆の怒りと祈りの歌』(河出書房新社、2015年11月、本体1,300円、A5判並製256頁、ISBN978-4-309-97876-5)というムックがあります。これは普通は長渕剛さんのファンの方が買うのでしょうけれども、ファンでない方にとっても武田砂鉄さんによるロングインタビューや、藤原新也さん、柳美里さんとの対談は一読(と言わず二読三読)の価値がある、ど直球の圧倒的名篇です。和合亮一さん、栗原康さん、マニュエル・ヤンさん、杉田俊介さん、森元斎さんらによる多彩な寄稿も眼を惹きます。

★ガザーリー『哲学者の自己矛盾』はまもなく発売。帯文に曰く「ヘレニズム哲学の深奥を究めた上で、人格的唯一神への帰依を説くイスラーム神学の立場から、哲学の不信仰を批判するガザーリーの代表的著作。西洋思想とイスラームとの最も深い亀裂が浮き彫りになる」と。イスラーム神学を代表する隠れもなき名著の、待望の初訳です。中村さんによるガザーリーの訳書は『誤りから救うもの』(ちくま学芸文庫、2003年)、『中庸の神学――中世イスラームの神学・哲学・神秘主義』(東洋文庫、2013年)に続いて3冊目。平凡社版『中世思想原典集成(11)イスラーム哲学』に収録されているガザーリーの『イスラーム神学綱要』『光の壁龕』の翻訳と解説を担当されているのも中村さんで、ガザーリーの翻訳紹介において大きな足跡を遺されておられるのは周知の通りです。なお『哲学者の自己矛盾』へのイブン・ルシュドによる批判書はラテン語訳からの日本語訳書がかつて刊行されたことがあります。アヴェロエス『《(アルガゼルの)哲学矛盾論》の矛盾』(田中千里訳、近代文藝社、1996年)です。東洋文庫の次回新刊は、イブン・ジュバイル『メッカ巡礼記――旅の出会いに関する情報の備忘録1』(家島彦一訳註、東洋文庫、2016年1月、本体3,100円、B6変判上製函入380頁、ISBN978-4-582-80868-1)とのことです。また、平凡社さんの来月新刊には、アンリ・ベルクソン/ジークムント・フロイト著『笑い/不気味なもの――付:ジリボン「不気味な笑い」』(原章二訳、平凡社ライブラリー、2016年1月、本体1,500円、B6変判並製392頁、ISBN978-4-582-76836-7)や、E・トゥーゲントハット/A・M・ビクーニャ/C・ロペス『ぼくたちの倫理学教室』(鈴木崇夫訳、平凡社新書、2016年1月、本体800円、新書256頁、ISBN978-4-582-85801-3)といった注目書が控えており、たいへん楽しみです。

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このほか、最近では以下の新刊との出会いがありました。

トッド 自身を語る』エマニュエル・トッド著、石崎晴己編訳、藤原書店、2015年11月、本体2,200円、四六変上製224頁、ISBN978-4-86578-048-2
オーソン・ウェルズ』アンドレ・バザン著、堀潤之訳、インスクリプト、2015年12月、本体1,700円、四六判変型上製192頁、ISBN978-4-900997-61-5
語られた自叙伝』遠山一行著、長谷川郁夫編、作品社、2015年11月、本体1,400円、46判上製194頁、ISBN978-4-86182-562-0)

★『トッド 自身を語る』は発売済。日本語版オリジナル編集の新刊です。編訳者あとがきによれば、藤原書店さんの『環』誌に掲載されたトッドさんの近年のインタビューで単行本に収録されていないものを一冊にまとめた本で、巻頭には書き下ろしの「〈日本の読者へ〉私を形成したもの――フランス、英米圏、そして日本」が収められています。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。藤原書店さんではさいきん、二つの記念出版物を発売されています。鶴見俊輔『まなざし』(藤原書店、2015年11月、本体2,600円、四六変上製272頁、ISBN978-4-86578-050-5)は追悼出版、紅野謙介・富岡幸一郎編『文学の再生へ――野間宏から現代を読む』(藤原書店、2015年11月、本体8,200円、菊大判上製784頁、ISBN978-4-86578-051-2)は野間宏生誕100年記念出版です。ともに目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。

★バザン『オーソン・ウェルズ』は発売済。巻末の訳者解説によれば本書は「ジャン・コクトーの序文つきでアンドレ・バザン(1918-1958)が1950年に上梓したオーソン・ウェルズ論(Orson Welles, Editions Chavane, 1950)の全訳に加えて、『市民ケーン』(1941年)をめぐって戦後のフランスで交わされた論選の要諦を紹介すべく、サルトル、サドゥール、レーナルト、そしてバザンが同作品を論じた四篇の雑誌記事を「資料」として訳出したもの」とのことです。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。バザンは今年、代表作評論集『映画とは何か』の新訳が岩波文庫で刊行されたばかりです。インスクリプトさんの新刊では、10月に刊行されたジョナサン・スターン『聞こえくる過去―─音響再生産の文化的起源』(中川克志・金子智太郎・谷口文和訳、インスクリプト、2015年10月、本体5,800円、A5判上製590頁、ISBN978-4-900997-58-5)も話題になっています。

★遠山一行『語られた自叙伝』は発売済。帯文に曰く「音楽批評七十年。戦後日本の音楽界をリードし、真の演奏の意義を求め続けた著者。常に現状への批判を内に秘め、言葉による文学的音楽批評を貫いた。芸術、人間、家族への深い愛をこめ、初めて人生を語り綴った遺稿集。晩年の未刊エッセイ20篇を併録」と。音楽批評家の遠山一行(とおやま・かずゆき:1922-2014)さんはちょうど一年前の12月10日に92歳でお亡くなりになっています。本書は表題作となる聞書きを第一部、『芸術随想』(彌生書房、2003年)以後の未収録エッセイ20篇を第二部として収録したものです。本書の編集実務を担当されたTさんは、ほぼ同時発売の小説、岳真也『真田信幸――天下を飾る者』(作品社、2015年11月、本体1,800円、46判上製290頁、ISBN978-4-86182-560-6)も手掛けておられます。
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by urag | 2015-12-05 17:09 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
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