「ほっ」と。キャンペーン
2015年 11月 28日

注目新刊:「Nyx叢書」創刊、ほか

a0018105_19301956.jpg

神話・狂気・哄笑――ドイツ観念論における主体性
マルクス・ガブリエル+スラヴォイ・ジジェク著
大河内泰樹・斎藤幸平監訳 飯泉佑介・池松辰男・岡崎佑香・岡崎龍訳
堀之内出版 2015年11月 本体3,500円 四六判上製360頁 ISBN978-4-906708-54-3

★発売済。書店さんの店頭にはもうそろそろ並び始めるころかと思われます。「ニュクス叢書」の第一弾で、1980年生まれの俊英ガブリエル(ボン大学教授)の初訳本です。原書は、Mythology, Madness and Laughter: Subjectivity in German Idealism (Bloomsbury Publishing, 2009)で、原書にはないガブリエルによる「日本語版まえがき」と、付録として同じくガブリエルによる主著『なぜ世界は存在しないのか Warum es die Welt night gibt』(Ullstein, 2013)の要約論文が掲載されています。

★本書はガブリエルとジジェクによる緒論「ポスト・カント的観念論への回帰を求めて」に始まり、ガブリエルによる「反省という神話的存在――ヘーゲル、シェリング、必然性の偶然性について」が続き、ジジェクによる二論考「二つの自由をめぐる規律訓練〔ディシプリン〕――ドイツ観念論における狂気と習慣」「フィヒテの哄笑」で構成されています。版元さんによる紹介文が熱いです。「今ドイツでもっとも注目を浴びる若き天才が、ジジェクとともにドイツ観念論(シェリング・ヘーゲル・フィヒテ)の古典再解釈を通じて、現代思想の新潮流に真っ向から取り組む批判の書」。

★ここで言う「現代思想の新潮流」というのは、まもなく主著『有限性の後に』が某社から訳される予定のクァンタン・メイヤスーに代表される「思弁的実在論」で、これに対するガブリエルの立場は「新実在論」と呼ばれているようです。詳しくは訳者解説や監訳者あとがきをご覧いただくのが良いかと思いますが、例えば「日本語版へのまえがき」でガブリエルは次のように述べています。

★「本書において、ジジェクと私は、思弁的実在論に対する反論として、形而上学への回帰の要点は主体とあらゆる理性的秩序の偶然性について単に沈黙することとみなされるべきではないということを展開しました。主体性の理論は無視したところで乗り越えることはできません。どのような観点から見ても主体が存在することなしに生じる宇宙の秩序を記述しようとしているという点で、メイヤスーは批判されるべきなのです。メイヤスーのやり方では、どのようにしてそのような〔主体なき宇宙の〕秩序からそもそも主体が登場することができるのかは理解可能にはなりません」(11頁)。

★なお、来月(2015年12月)9日にはジュンク堂書店池袋本店にて来日トークイベント「ドイツ観念論の現在」が予定されていますがすでに満員御礼とのことです。


記号と機械――反資本主義新論
マウリツィオ・ラッツァラート著、杉村昌昭+松田正貴訳
共和国 2015年12月 本体3,400円 菊変型判並製368頁 ISBN978-4-907986-14-8

★まもなく発売(12月12日頃)。『出来事のポリティクス』(洛北出版、2008年)、『〈借金人間〉製造工場』(作品社、2012年)に続く、ラッツァラートの訳書第三弾です。原書は、Signs and Machines: Capitalism and the Production of Subjectivity (Translated by Joshua David Jordan, Semiotext(e), 2014)です。訳者あとがきによれば、同書のテクストはもともとフランス語で書かれていますが未刊であり、まず松田さんが英語版から訳した上で杉村さんが著者から提供されたフランス語の原稿を参照しつつ綿密に手を入れた、とのことです。目次詳細は訳書名のリンク先をご参照ください。

★資本主義批判を展開する本書の戦略について日本語版序文で著者はこう述べています。「私はガタリの諸概念を現状に即して活用し、つきつめて考えながら、「実在的」次元の再導入だけでは不十分であることに気がついた。ガタリ自身が言明しているように、重要なことは、主観性の断絶、戦略的諸関係、戦争機械、この三つの次元のあいだの関係を考察することである」(9頁)。

★宗利淳一さんによる「共和国」本の装丁はいつもエッジがきいていて素晴らしいですが、今回もかなり攻めています。版元さん曰く「初版のみ社会を転覆させるための装幀」。どうなっているかというと、帯が地側ではなく天側についているのです。と言ってもズリ落ちたりはしません。黒いカバーの内側にもう一枚カバーが掛っていて、それを天側で黒カバーの外に折り返して出している部分が帯になっているのです。説明だけでは分かりにくいかもしれませんが、かなり凝っています。ぜひ店頭で現物をご確認ください。


スペキュラティヴ・デザイン:問題解決から、問題提起へ。――未来を思索するためにデザインができること
アンソニー・ダン+フィオナ・レイビー著 久保田晃弘監修 千葉敏生訳
BNN新社 2015年11月 本体3,000円 A5判並製280頁 ISBN978-4-8025-1002-8

★発売済。原書は、Speculative Everything: Design, Fiction, and Social Dreaming (The MIT Press, 2013)です。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。著者はイギリスの「ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)のデザイン・インタラクティブ学科で10年にわたって教鞭を執り、「スペキュラティヴ・デザイン」の提唱者として世界的に注目を集めて」(版元紹介文)おり、来日も果たしています。下段の動画は京都工芸繊維大学での一年前の講義です。



★巻頭の「はじめに」で著者はこう述べています。「本書の内容は、コンセプチュアル・デザインとは何か、という一般論から始まり、科学技術の進歩の影響について批評的に考察するツールとしてデザインを用いる方法、そしてスペキュラティヴ・デザインの表現形態へと話を進めていく。最後にスペキュラティヴ・エブリシング〈思索的なすべて〉という概念、そしてソーシャル・ドリーミング〈社会的夢想〉を促すデザインの役割について俯瞰的に考察する」(8頁)。

★また、第一章ではこうも述べています。「デザインを、物事の可能性を“思索”[speculate]するための手段として用いるのだ。これがスペキュラティヴ・デザインである。スペキュラティヴ・デザインは、想像力を駆使して、「厄介な問題」に対する新しい見方を切り開く。従来とは違うあり方について話し合ったり討論したりする場を生みだし、人々が自由自在に想像を巡らせられるよう刺激する。スペキュラティヴ・デザインは、人間と現実との関係を全体的に定義しなおすための仲介役となるのだ」(27頁)。

★誤解を恐れずに言えば、本書は書店や図書館の未来を考える上でも有効です。様々な情報の編集と集積を担うそれらの空間は、いずれ美術館や博物館、遊園地や公民館などと接続しうる創造的な挑戦を必要とすることでしょう。想像力を解放するためのレッスンを本書は教えてくれている気がします。


大変を生きる
小山鉄郎著
作品社 2015年11月 本体2,600円 46判上製432頁 ISBN978-4-86182-425-8

★発売済(11月27日取次搬入済)。著者の小山さんは共同通信の記者を長年お勤めで、数々の著書を上梓されています。本書は「日本で起きた古代・中世から現代までの自然災害(大変)が描かれている文学作品と、その災害の姿を追ったものだ。地震や噴火のことばかりでなく、洪水や台風のことを描いた作品」(あとがきより)も取り上げておられます。あとがきではさらに次のようにも特記されています。

★「自然災害をテーマにした本はたくさんある。情報として必要なものは、知識として頭の中に入ってきて、それは大切なことだが、ともすると、心の中に深く残らない場合も多いのではないかと思う。だが文学作品で自然災害が描かれた場面を読んでいくと、その文章の見事な描写力によって、災害のことが深く心に残る。もし読者が災害に遭遇した時に、印象深い文章の記憶が、その人の生死を分けるかもしれない。それだけの喚起力を文学作品は持っている。私がここに紹介した作品は、災害と日本文学についてのほんの一部にすぎないが、もっともっと多くの人たちによって「災害と文学」について、まとまったものが記されてもいいのではないかと思う」(423-424頁)。

★帯文はこうです。「日本人は災害をどう生きたか。宝永大地震・富士山大爆発、安政東南海地震、関東大震災、阪神大水害……。日本人は各時代時代の天災とどのように向き合い、どのように受け止め、どのように生きてきたか。「日本人と災害」を文学作品から読み解く初めての試み」。災害と文学、というテーマは書店さんでのブックフェアにもってこいのテーマで、本書は大いに参考になると思います。
[PR]

by urag | 2015-11-28 19:30 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : http://urag.exblog.jp/tb/21877175
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。


<< 本日取次搬入済:シュティーグラ...      備忘録(11) >>