2015年 11月 14日

水声社さんより「[叢書]人類学の転回」が刊行開始、ほか

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◎水声社さんより「[叢書]人類学の転回」が刊行開始

部分的つながり
マリリン・ストラザーン著 大杉高司・浜田明範・田口陽子・丹羽充・里見龍樹訳
水声社 2015年11月 本体3,000円 四六判上製349頁 ISBN978−4−8010−0135−0
帯文より:今日もっとも大きな影響力をもつ人類学者の理論的主著。メラネシアのイニシエーション儀礼、カヌー、笛、小屋、仮面、編み袋、樹木、ヤム畑などの事例をもとに、私たちが自明視する人・事物・自然の対立に揺さぶりをかける。メラネシアの「社会性」とサイボーグに満ちた世界が部分的につながりあう地平を鮮やかにえがきだす。現代人類学の最高の精華。

インディオの気まぐれな魂
エドゥアルド・ヴィヴェイロス・デ・カストロ著 近藤宏・里見龍樹訳
水声社 2015年11月 本体2,500円 四六判上製212頁 ISBN978−4−8010−0136−7
帯文より:「人類学の存在論的転回」を主導する著者の初期の代表作。16世紀、ブラジル沿岸部に住んでいたインディオ・トゥピナンバは、当時のイエズス会宣教師たちには御しがたく、耐えがたい民であった。彼らが見せる「気まぐれさ(インコンスタンシア)」ゆえに……。宣教師たちによって残されたテクストを丹念に読みながら、彼らとはまったく異なる方法で、インディオ・トゥピナンバの社会哲学や〈存在論〉を鋭く読み解く。

★水声社さんの新シリーズ「[叢書]人類学の転回」の第一回配本がまもなく発売になります。海外の新しい人類学の潮流をまとめて紹介するもので、個人的には今年一番の収穫としたい、ワクワクしてくるシリーズです。内容見本が完成しており、書名のリンク先でPDFにてご覧いただけます。推薦者のひとり、中沢新一さんは次のような言葉を寄せておられます。「人類学はふたたび現代思想の最前線に踊り出そうとしている。この叢書はいま人類学に生まれつつある新しい胎動を、世界に先駆けて紹介しようとしている」。

★内容見本にある「刊行にあたって」と題された紹介文にはこんな言葉があります。「かつて、世界各地のエキゾチックな事物を記録し、比較・分析する学としてあった文化・社会人類学は、一九八〇年代以降、ポストモダニズム/ポストコロニアリズムの流れにもまれるなかで著しい変貌を遂げてきた。しかし、そこから立ち現れてきた人類学の現代的相貌は、これまで一部の専門家以外にはほとんど知られてこなかった。本叢書は、そうした変化を主導してきた人類学者たち――その多くは、今回が実質的な本邦初訳となる――を紹介することで、これまでの知的空白。を埋め、新たな展望を指し示そうとするものである。[・・・]これらの多様な場所とテクストから立ち現れる、新しい〈人類=人間〉の姿とはいかなるものか。またそこにおいて、人類学と哲学、文学や美術のあいだには、どのような布置=星座〔コンステレーション〕が新たに描き出されるのか。この叢書は、そのような問いへと読者を誘っている」。

★第一回配本の二冊はいずれも翻訳が待たれていたものです。イギリス・ケンブリッジ大学名誉教授の社会人類学者ストラザーン(Marilyn Strathern, 1941-)による『部分的つながり』の原書は、Partial Connections (Up-dated edition, Altamira Press, 2004)で、ストラザーンの著書の本邦初訳になります。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。一方、ブラジル国立博物館教授を務める文化人類学者ヴィヴェイロス・デ・カストロ(Eduardo Viveiros de Castro, 1951-)による『インディオの気まぐれな魂』は、A inconstância da alma selvagem (Cosac Naify, 2002)所収の論考「O mármore e a murta: sobre a inconstância da alma selvagem」を訳出したものです。ヴィヴェイロス・デ・カストロについては先月、洛北出版さんから『食人の形而上学』が刊行されているのは御承知の通りです。それぞれの本の目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。

★第二回配本は12月下旬予定で、アルフォンソ・リンギス『変形する身体』小林徹訳、が予告されています。続刊予定にはタウシグ、モル、ジェル、デスコラなど非常に楽しみな名前が並んでいます。人類学の棚が賑やかになりそうですね。

★水声社さんのここ数カ月の新刊には、以下の書目が含まれていました。

ジョルジュ・バタイユの反建築――コンコルド広場占拠』ドゥニ・オリエ著、岩野卓司・神田浩一・福島勲・丸山真幸・長井文・石川学・大西雅一郎訳、水声社、2015年9月、本体4,800円、A5判上製378頁、ISBN978−4−8010−0126−8
1914』ジャン・エシュノーズ著、内藤伸夫訳、水声社、2015年10月、本体2,000円、4/6判上製144頁、ISBN978-4-8010-0127-5
『フランケンシュタイン』とヘルメス思想――自然魔術・崇高・ゴシック』田中千惠子著、水声社、2015年11月、本体4,000円 A5判上製360頁 ISBN978−4−8010−0128-2

★オリエの有名なLa prise de la Concorde (Gallimard, 1974)がついに翻訳されました。底本は、アメリカ版 Against architecture (October Books/MIT Press, 1989)への序文「人生の日曜日」を巻末に収録した1993年版です。帯文に曰く「バタイユの第一作「ランスのノートルダム大聖堂」〔ちくま学芸文庫〕。建築をめぐるこのテクストを永遠に抹殺し続けること、それこそがバタイユにとっての「書く」ということだった……。ベルナール・チュミなど「脱構築主義」の建築家たちにも絶大な影響を与えた、反建築論。バタイユ研究の必携書」と。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。オリエ編『聖社会学』(工作舎、1987年)が翻訳されてから約30年、単独著がようやく初訳されたことになります。

★エシュノーズ『1914』は第一次世界大戦下のフランスの片田舎を舞台にした小説です。原書は、14 (Minuit, 2012)。巻末には訳者による著者インタヴューを含むあとがき「小説と映画――ジャン・エシュノーズにきく」が添えられています。「もし映画化されるとしたらどんなキャスティングを想像しますか」という訳者の問いかけに著者が何と答えているか、現物をご確認いただけたらと思います。

★田中千惠子『『フランケンシュタイン』とヘルメス思想』は首都大学東京に昨春受理された博士論文が元になっている労作です。帯文に曰く「メアリー・シェリーはなぜ19世紀に〈自然魔術〉を再登場させたのか? 錬金術・魔術、科学、自然の崇高、二重の生、ゴシックなどの主題をめぐり、ヘルメス思想を淵源とするさまざま学や思想の観点から、現代エソテリシズム研究文献、文学批評を渉猟しつつ、『フランケンシュタイン』を読み解き、ロマン主義的な科学と思想の未踏の領野を照らしだす分野横断的研究」と。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。第2章でアグリッパ『隠秘哲学について』への論及があることに惹かれます。


◎ディディ=ユベルマンの連作『歴史の眼』の日本語訳が刊行開始

魔法使いの弟子』ジョルジュ・バタイユ著、酒井健訳、景文館書店、2015年11月、本体520円、四六判並製72頁、ISBN978-4-907-10505-1
歴史の眼3 アトラス、あるいは不安な悦ばしき知』ジョルジュ・ディディ=ユベルマン著、伊藤博明訳・解説、ありな書房、2015年11月、本体6,000円、A5判上製416頁、ISBN978-4-7566-1541-1
人間という仕事――フッサール、ブロック、オーウェルの抵抗のモラル』ホルヘ・センプルン著、小林康夫・大池惣太郎訳、未来社、2015年11月、本体1,800円、46判上製140頁、ISBN978-4-624-93264-0

★バタイユ『魔法使いの弟子』は発売済。『ヒロシマの人々の物語』に続く、バタイユ論文の酒井健さんによる新訳の第二弾です。表紙に使われている写真はキリンジのPVから採ったもの。古典と現在を交差させる柔軟な発想による造本が心地よいです。「魔法使いの弟子」は1938年7月に雑誌「新フランス評論」に発表されたもの。帯文には「バタイユの〈恋愛論〉」とあります。なお、訳者の酒井さんによるトークセッション「文学者と恋愛――漱石・カフカ・バタイユ」が、12月9日(水)19時~20時30分、神楽坂の「本のにほひのしない本屋・神楽坂モノガタリ」(新宿区神楽坂6-43 K's Place 2F)で開催されるそうです。料金は1,500円(1ドリンク付)。お申し込みは書店店頭もしくは電話03-3266-0517まで。

★ディディ=ユベルマン『アトラス、あるいは不安な悦ばしき知』は発売済。バタイユの小説『眼球譚 Histoire de l'oeil』をひっくり返した『歴史の眼 L'Œil de l'histoire』は美術史、イメージ人類学、哲学などのジャンルで活躍するディディ=ユベルマンによる連作で今回訳された『アトラス』は2011年にMinuitから刊行されたその第三作です(原著は2015年現在第五作まで刊行)。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。2009年の第一作『イメージが位置を取るとき』、2010年の第二作『受苦の時間の再構築』はいずれもありな書房さんより続刊予定です。さらに訳者の伊藤博明さんはいよいよ同版元から『バロック期の寓意と表象(仮)――チェーザレ・リーパ『イコノロジーア』研究』を上梓されるようです。予価32,000円という、『ムネモシュネ・アトラス』を上回るお値段から推察するに、リーパの『イコノロジーア』のファクシミリ版を含む大冊になるのかも、と想像が膨らみます。

★センプルン『人間という仕事』は発売済。「ポイエーシス叢書」の第64弾です。底本は、Métier d'homme. Husserl, Bloch, Orwell: Morales de résistance (Frammarion, 2013)です。センプルンが2002年3月に行った講演録で、フランス国立図書館のウェブサイトで動画が公開されており、2002年に同図書館から刊行されてもいます。訳書では活字版では削除されているものの講演では読みあげられていた言葉を補足している個所もあって、好感が持てます。小林康夫さんがフランスから日本への帰路に機内で読んだ折、「おもしろくてやめられない」ほどだったそうです。センプルンは連続講演の最後の方でこう述べます、「多くの点で対照的な三人の人物の間に、何か共通する一筋の糸が走っているとするなら、それは全体主義的野蛮に抵抗するという同じ精神、同じ信念であります」(105頁)。PR誌「季刊 未来」2015年秋号に掲載された予告に依れば、同叢書の次回配本はミシェル・ドゥギー『ピエタ ボードレール』です。さらには年末年始にかけてはダニエル・ベンサイド『時ならぬマルクス』や、シュライアマハー『ベルリン大学論』などの続刊が予告されています。

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★このほか、最近では以下の新刊との出会いがありました。

具体性の哲学――ホワイトヘッドの知恵・生命・社会への思考』森元斎著、以文社、2015年11月、本体2,600円、四六判上製320頁、ISBN978-4-7531-0328-7
眠っているとき、脳では凄いことが起きている――眠りと夢と記憶の秘密』ペネロペ・ルイス著、西田美緒子訳、インターシフト発行、合同出版発売、2015年12月、本体2,100円、46判上製208頁、ISBN978-4-7726-9548-0
偽書『本佐録』の生成――江戸の政道論書』山本眞功著、平凡社選書、2015年11月、本体2,800円、4-6判上製280頁、ISBN978-4-582-84233-3
蝦夷志 南島志』新井白石著、原田信男校注、東洋文庫、2015年11月、本体3,300円、B6変判上製448頁、ISBN978-4-582-80865-0
江戸詩人評伝集2――詩誌『雅友』抄』今関天彭著、揖斐高編、東洋文庫、2015年11月、本体3,200円、B6変判上製448頁、ISBN978-4-582-80866-7

★森元斎(もり・もとなお:1983-)さんの第一作『具体性の哲学』はまもなく発売(11月17日頃予定)。大阪大学へ今春提出された博士論文「A・N・ホワイトヘッド形而上学における具体的なものへ」をもとに加筆修正したのが本書です。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。「具体的なもののほうへ」「形而上学のほうへ」「生成のほうへ」「アナキズムのほうへ」の四部構成で、特筆すべきは第IV部「アナキズムのほうへ」かと思われます。ホワイトヘッドと大杉栄が交差する風景というのは非常に鮮烈で、2015年に人文書担当者が必ず押さえておかねばならない瞠目すべき若手のデビュー作です。「私たちは人間であるとともに、自然である、生である。曖昧で何が悪い。この世界は曖昧にしかできていない。複雑にしかできていない。明晰判明であればあるほど信用ならない。抽象的なものは信用ならない」(268頁)。躍動感溢れる文体が同時代人の胸に刺さります。

★マンチェスター大学「睡眠と記憶の研究所」所長を務める脳神経科学者ペネロペ・ルイスさんによる第一作『眠っているとき、脳では凄いことが起きている』はまもなく発売(11月20日頃予定)。原書はThe Secret World of Sleep: The Surprising Science of the Mind at Rest (St.Martin's Press, 2013)です。目次詳細と第1章「なぜ眠るのか」と解説の立ち読みは書名のリンク先へどうぞ。個人的には第7章「なぜ夢を見るのか」や第11章「眠りのパターン、IQ、睡眠障害」などに惹かれますが、そのほかにも各章の節の中には「悪いことが記憶に残りやすいわけ」「目覚めていても、脳の一部は居眠りしている」「年齢による変化」「ぐっすり眠れても疲れているわけ」「脳が働いて寝付けないとき」等々、なるほどなと思わせる明快な解説が魅力です。

★日本思想史・倫理学がご専門で現在学習院大学などで教鞭を執られている山本眞功(やまもと・しんこう:1949-)さんによる『偽書『本佐録』の生成』はまもなく発売(11月20日頃予定)。版元紹介文に曰く「「慶安御触書」と並んで幕府成立期の農民収奪政策を証すものとされてきた『本佐録』が、書かれた時期も意図もまるで別のものであることを実証。偽書として生成するこの政道論書の意義を細部まで明らかにした画期的論考」と。作者も、家康の側近である本多佐渡守正信ではないそうで、「下敷きとなった諸書をつきとめ、諸本を調査し、書誌学・文献学的検討と、テキストの厳密な読解によって」(カバー紹介文より)偽書の真実に迫る力作です。

★東洋文庫865『蝦夷志 南島志』、同866『江戸詩人評伝集2』はまもなく発売(11月20日頃予定)。前者は江戸時代の北海道と沖縄の歴史・地理・文化をまとめた「白石晩年の二つの古典的地理書」(帯文より)であり、後者は江戸漢詩の詩人列伝で全2巻完結となります。次回配本は12月、ガザーリー『哲学者の自己矛盾――イスラームの哲学批判』中村廣治郎訳注、とのことで大いに注目すべき古典の新訳の登場となりそうです。
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by urag | 2015-11-14 23:06 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
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