2005年 08月 14日

今週の注目新刊(第17回:05年8月14日)

TRCの書誌データにおいて書影が1435号から、小さい画像のみになりました。大きな書影はありません。カバーに何が書いてあるのか、あるいは何が写っているのか、小さなサイズでは明瞭には確認できません。不便です。

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ウィリアム・フォーサイス、武道家・日野晃に出会う
日野晃(1948-)+押切伸一(1961-)著
白水社 本体1800円 252頁 4-560-03594-6
■帯文より:FEEL&CONNECT. 世界屈指の振付家に「新しいダンス」を提示したのは、日本人武道家だった! 素顔のフォーサイスが挑む、7日間のワークショップ。そこではいったい何が行なわれ、何が生まれたのか? 巻末付録:「身体を存在させる」ためのトレーニング。
■目次より:

第1日 フォーサイス、即興の極意に触れる
第2日 フォーサイス、胸骨の操作を学ぶ
第3日 フォーサイス、自宅に日野晃を招く
第4日 フォーサイス、達人の技に感嘆する
休日 プライベート・レッスン
第5日 フォーサイス、「留守」を任せる
第6日 フォーサイス、武道の技に燃える
第7日 フォーサイス、最終日に閃く

●フォーサイス(1949-)の関連書はあまり多くありません。浅田彰監修による『フォーサイス1999』(NTT出版、1999年)くらいです。著書の翻訳単行本もないので、不思議と言えば不思議。


タバカレラ――スペインたばこ専売史1636-1998
フランシスコ・コミン・コミン+パブロ・マーティン・アセニャ編 林屋永吉監修 たばこ総合研究センター
山愛書院(発行) 星雲社(発売) 本体28571円  503頁 4-434-06540-8
●スペインにおけるたばこ専売制の全史、だそうです。図書館向けなんでしょうが、高価な本ですね。
●財団法人たばこ総合研究センターは雑誌『』の発行元でもあることは皆様ご存知の通り。雑誌や書籍などの出版事業を、文化・広報活動の重要な「公共的」支柱にしている団体の中でも、たばこ総合研究センターは珍しく今なお「思想系」のパトロネージュを続けています。傍目にはこうしたパトロネージュは非常に頼もしく、うらやましく見えます。


ロラン・バルト著作集(4) 記号学への夢
ロラン・バルト(1915-1980)著 塚本昌則(1959-)訳
みすず書房 本体5200円  402頁 4-622-08114-8
■帯文より:演劇や「神話」の批評から転じ、衣服や映画や食物など、さまざまな対象を分析しうる知的道具に目くるめく興奮をおぼえた、バルトの1960年代とは? 記号学を求める美しき冒険の軌跡、全52篇。
●第六回配本。80年代の日本の知的流行においては、バルトの方法論は「記号学」ではなく、「記号論」と呼ばれていました。セミオロジーとセミオティクスの混同はいつからどのようにして始まったのでしょうか。かつて別冊宝島の一冊として刊行されたベストセラー『わかりたいあなたのための現代思想入門』(1984年)では、SF評論家の志賀隆生さんが「記号論という新しい波」というパートを担当されており、そこにはこうした注が見えます。

「記号学はソシュールの企てから生まれた。記号論という用語は現代的手法としてはパースによってもちいられた。現代の記号論はソシュールの記号学の計画を再びとりあげ、社会生活の内部における記号の生を研究しようとする。記号学→仏sémiologie 記号論→仏sémiotique」

実はこの箇所を除くと、志賀氏はほとんど「混同」していません。むしろやむを得ず、巷間に広まった「商業的」とも言える語法である「記号論」をごくわずかな箇所にだけ採用している感じです。おそらく編集サイドの要望だったのではないかとさえ思います。日本におけるこの混同の小史は、トリヴィアルな話題ではありますが、興味深くもあります。


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★今週の注目文庫・ライブラリー

見るということ
ジョン・バージャー(1926-)著 飯沢耕太郎監修 笠原美智子訳
ちくま学芸文庫(筑摩書房) 本体1300円 274頁 4-480-08930-6
■帯文より:生と藝術の行間を読み、「見る」ことの本質をえぐる、気鋭の写真・美術評論。
●1993年に白水社より刊行された単行本の文庫化。バージャー(1926-)はロンドン生まれの作家で、フランスはアルプス地方の小村に長く住んでいる。美術評論や美術史の仕事が日本では早くから知られているが、小説も一冊だけ(『G.』)、翻訳されている。『見るということ』のほかの既訳書は以下の通り。

『ピカソ――その成功と失敗』奥村三舟訳、雄渾社、1966年。
『芸術と革命――エルンスト・ニェイズヴェースヌイとソ連における芸術家の役割』奥村三舟訳、雄渾社、1970年。
『G.』栗原行雄訳、新潮社、1975年。
『イメージ――視覚とメディア』伊藤俊治訳、PARCO出版局、1986年。※"Ways of Seeing"の日本語訳。
イメジのとらえ方』松村昌家+大井浩二編注、英宝社、1988年。※"Ways of Seeing"のペリカン版原書をそのまま複刻したもの。


シュルレアリスムと性
グザヴィエル・ゴーチエ(1942-)著 J・B・ポンタリス序 三好郁朗訳
平凡社ライブラリー(平凡社) 本体1900円 413頁+図版16p頁 4-582-76547-5
■帯文より:抜きがたい男根主義。エロスの破壊力に賭けた革命思想の矛盾。
■版元紹介文より:自由と愛を求めたシュルレアリスムはエロスの破壊力に賭けたが、その苦闘とは裏腹に、結局は革命に失敗する。その原因を抜きがたい男根主義と喝破した名著。
●1974年に朝日出版社より刊行された単行本のライブラリー化。彼女(ゴーチエ)の既訳書には、ほかにマルグリット・デュラスとの対話編で『語る女たち』(田中倫郎訳、河出書房新社、1975年)がある。


ボードレールと私
西脇順三郎著
講談社文芸文庫(講談社) 本体1400円 282頁 4-06-198414-4
■帯文より:永遠なるアヴァンギャルド。
■版元紹介文より:戦前の新詩運動のなかで生み出された画期的な処女詩論「超現実主義詩論」から、晩年の詩的自伝ともいえる随想「ボードレールと私」まで、ボードレールの与えた影響とその変容を軸に、代表的詩論4篇を精選。詩的言語により経験生活を超克し、芸術のための芸術を追究してきた、偉大なる学殖詩人・西脇順三郎。そのアヴァン・ギャルドとしての革新的な試みの背景を理解するための貴重な1冊。

***

以上です。(H)
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by urag | 2005-08-14 21:45 | 本のコンシェルジュ | Trackback(2) | Comments(0)
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