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2015年 09月 27日

ドゥルーズの大長編インタヴュー『アベセデール』日本語字幕版ついに発売

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ジル・ドゥルーズの「アベセデール」
國分功一郎監修
KADOKAWA(角川学芸出版) 2015年9月 本体8,700円 ISBN978-4-04-653344-9

函紹介文より:「身近なことから考える」――ドゥルーズ哲学の面白さがつまった最上級の知的エンターメインメント! 453分の大ボリューム! 「アベセデール」は、フランスの哲学者、ジル・ドゥルーズの貴重なインタビュー映像です。ドゥルーズが語るのは、AからZのアルファベットに寄せた26の多彩なテーマ。豪華メンバーによるわかりやすい字幕付きで待望の日本上陸です。

商品内容:
1)日本語字幕付きDVD3枚セット『ジル・ドゥルーズの「アベセデール」』
 出演:ジル・ドゥルーズ/クレール・パルネ
 監督:ピエール=アンドレ・ブータン
 字幕翻訳チーム:國分功一郎、千葉雅也、三浦哲哉、角井誠、須藤健太郎、岡嶋隆佑)
 DISC1:動物/飲酒/教養/欲望/子ども時代/忠実さ
 DISC2:左派/哲学史/アイデア/喜び/カント/文学/病気
 DISC3:神経科学/オペラ/教師/問い/抵抗/文体/テニス/一者/旅行/ウィトゲンシュタイン/(未知数、言葉にできないもの)/ジグザグ

2)『アベセデール』解説ブック
 解説(國分功一郎)
 各項目解説(國分功一郎)
 対談「アベセデールの地図を作成する」(國分功一郎×千葉雅也)
 ドゥルーズの著作邦訳一覧
 字幕翻訳者および担当項目〔國分:動物/左派/旅行/ウィトゲンシュタイン/ジグザグ、千葉:欲望/子ども時代/忠実さ、三浦:飲酒/教養/神経科学、角井:オペラ/教師/問い/抵抗、須藤:哲学史/アイデア/病気、岡嶋:喜び/カント/文学/文体/テニス/一者〕

★発売済。1988~1989年に撮影され1995年にフランスでテレビ放映、1999年にVHS版、2004年にDVD版が発売された、ドゥルーズ(1925-1995)の約7時間半もの長編インタヴュー「アベセデール」の日本語字幕版がついに発売されました。早くも一時的に版元品切になっているようで、書店店頭かネット書店でお買い求めいただくのがよさそうです。同作は日本では幾度となく活字化が望まれれきましたが、権利関係の問題により果たされませんでした。逐語的な活字化やその翻訳が許されていなかった以上、残る可能性は今回のような字幕版DVDの制作だったわけで、とうとう今回字幕化にたどり着いたことを喜ばずにはいられません。

★解説ブックには國分さんと千葉さんによる対談が掲載されており、たいへん興味深いです。千葉さんは冒頭で「このインタビューはドゥルーズがざっくばらんに喋っていて、本当にわかりやすいんです。ドゥルーズの人となりもよくわかる。ドゥルーズの本は複雑ですけれど、このインタビューを見てから読むと、取っつきやすい。ドゥルーズ入門として最適だと思います」(51-52頁)と紹介されておられます。未公刊のものを除いてドゥルーズの著作はすべて翻訳されています。最後に登場したのが本作ではあるものの、ドゥルーズとの新しい出会いの扉を開けるものとなるのではないでしょうか。



ドゥルーズ 常軌を逸脱する運動
デビッド・ラプジャード著 堀千晶訳
河出書房新社 2015年9月 本体4,000円 46変形判上製382頁 ISBN978-4-309-24730-4

帯文より:最後の愛弟子による絶後のドゥルーズ論。絶対的脱領土化としての「新たな大地」をつくりだすために。すべての根拠を無化する無底=砂漠の哲学としてのドゥルーズの核心からその全軌跡を凝縮させて非人間的な〈外〉を開く思考の戦争機械。

目次:
序章 常軌を逸脱する運動
第一章 大地の問い
第二章 根拠の循環
第三章 三つの綜合(あるいは「なにが起こったのか」)
第四章 帰結――超越論的経験論
第五章 倒錯者と分裂症者
第六章 分裂即自然
第七章 大地のトリアーデ
第八章 民衆と人祓い
第九章 モナドを引き裂くこと
第十章 妄想論
結論 限界=哲学
訳者あとがき

★発売済。原書は、Deleuze, les mouvements aberrants (Minuit, 2014)です。ラプジャード(David Lapoujade, 1964-)はドゥルーズの死後に諸論考を年代別にまとめた『無人島』『狂人の二つの体制』の編纂で日本でも知られています。海外の研究者によるドゥルーズ論は数多く刊行され、日本語訳も以下の通り色々あります。

マイケル・ハート『ドゥルーズの哲学』田代真ほか訳、法政大学出版局、1996年
フランソワ・ズーラビクヴィリ『ドゥルーズ ひとつの出来事の哲学』小沢秋広訳、河出書房新社、1997年
ジャン=クレ・マルタン『ドゥルーズ/変奏』毬藻充ほか訳、松籟社、1997年
アラン・バディウ『ドゥルーズ――存在の喧騒』鈴木創士訳、河出書房新社、1998年
ミレイユ・ビュイダン『サハラ――ジル・ドゥルーズの美学』阿部宏慈訳、法政大学出版局、2001年
ルネ・シェレール『ドゥルーズへのまなざし』篠原洋治訳、筑摩書房、2003年
クレア・コールブルック『ジル・ドゥルーズ』國分功一郎訳、青土社、2006年
フランソワ・ドス『ドゥルーズとガタリ――交差的評伝』杉村昌昭訳、河出書房新社、2009年
ライダー・デュー『ドゥルーズ哲学のエッセンス――思考の逃走線を求めて』中山元訳、新曜社、2009年
ピーター・ホルワード『ドゥルーズと創造の哲学――この世界を抜け出て』松本潤一郎訳、青土社、2010年
ジャン=クレ・マルタン『ドゥルーズ――経験不可能の経験』合田正人訳、河出文庫、2013年
モニク・ダヴィド=メナール『ドゥルーズと精神分析』財津理訳、河出書房新社、2014年

★こうした流れの中にあって、ラプジャードによる本書は冒頭から積極的に仕掛けてきます。「ドゥルーズの思想は、出来事の哲学でもなければ、内在の哲学でもなく、ましてや、流れや潜在的なものの存在論でもない。あまりにも学者的なこれらの定義の大半は、問われている事柄にかんする、憶測や先入観にとらわれてしまっているのだ。むしろ必要なのは、たとえあとから修正するにせよ、総体としての印象から出発することだろう。ドゥルーズ哲学を弁別する特徴とはなにか。ドゥルーズがなにより興味を抱くのは、常軌を逸脱する運動である」(9頁)。

★訳者によれば本書は「ラプジャードの四冊目の単著であり、彼がドゥルーズを真正面から論じたはじめての著作」(366頁)です。「ドゥルーズ自身が「常軌逸脱」という語を、術語として意識的かつ集中的に使用するのは、『シネマ2』の時期にほぼ限られる」(367頁)ものの、この言葉は「そのままでは眠ったままになっているドゥルーズの思考の一側面を、アクチュアルなものとして覚醒させるための発見的概念である」(367-368頁)と訳者は評価しています。ラプジャードは本書の結論でこう書いています。常軌を逸脱する運動は「たえず、限界〔=極限〕の問題を提起する」(353頁)。「限界とは、ひとが考えるようななにかではなく、ひとが突き当たってしまうなにかである。そして、限界に突き当たらなければ、ひとが思考することなどない。この問いが、ドゥルーズ哲学全体を貫いている。〔・・・本書は〕『ドゥルーズ 限界=哲学』と名付けることができただろう」(同)。

★このほかにも本書には印象的な言葉がいくつも出てきますが、最後に一つだけ引用しておきたいと思います。「なにか寛容しえないもの、耐えがたいもの、不正なもの、スキャンダラスなものを「見ること」から、そのつどすべてがはじまるのだ。こうした出来事は、個人を触発するだけではない。社会野全体が、寛容しえないものを「見て」、立ち上がるのだ。わたしたちは、あらゆる政治行動が不可能な世界に生きているわけではない。私たちは、不可能性こそがあらゆる行動の条件であるような世界、不可能性が可能性の新たな創造一切の条件であるような世界に生きている。これこそ、行動の逆説である。ただ不可能性のみが行動させるのだ」(308頁)。

★河出書房新社さんでは来月下旬に(2015年10月22日発売予定)『ドゥルーズ』(河出書房新社編集部編、本体予価1,300円、A5判224頁、ISBN978-4-309-24735-9)というアンソロジーを刊行される予定です。紹介文に曰く「没後20年を迎える20世紀最大の哲学者の新たな姿。宇野邦一×鵜飼哲、小泉義之×千葉雅也、江川隆男×堀千晶、檜垣立哉、廣瀬純、マスミ、ソヴァニャルグ、ペルバルト、全著作ガイド他」。

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★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。「ファッション批評誌」を標榜する年刊誌「vanitas」は4号目からアダチプレスさんが発行元になり、特集形式を取るとのことです。4号の刊行を記念して、10月17日(土)にスタンダードブックストア心斎橋にてトークイベントが行われるとのことです。

vanitas』No. 004「特集=アーカイブの創造性」蘆田裕史・水野大二郎責任編集、アダチプレス、2015年9月、本体1,800円、四六判変型並製256頁、ISBN978-4-908251-01-6
ナチスの戦争1918-1949――民族と人種の戦い』リチャード・ベッセル著、大山晶訳、中公新書、2015年9月、本体960円、352頁、ISBN978-4-12-102329-2
ロラン・バルト――言語を愛し恐れつづけた批評家』石川美子著、中公新書、2015年9月、本体800円、232頁、ISBN978-4-12-102339-1
米軍医が見た占領下京都の600日』二至村菁著、藤原書店、2015年9月、本体3,600円、四六上製440頁、ISBN978-4-86578-033-8
心の平安』アフメト・ハムディ・タンプナル著、和久井路子訳、藤原書店、2015年9月、本体3,600円、四六上製576頁、ISBN978-4-86578-042-0
人類を変えた素晴らしき10の材料――その内なる宇宙を探険する』マーク・ミーオドブニク著、松井信彦訳、インターシフト発行、合同出版発売、2015年10月、本体2,100円、46判上製272頁、ISBN978-4-7726-9547-3
〈日本哲学〉入門講義――西田幾多郎と和辻哲郎』仲正昌樹著、作品社、2015年9月、本体2,000円、46判並製432頁、ISBN978-4-86182-545-3
標準問題精講国語特別講義 読んでおきたいとっておきの名作25』渡辺憲司・加藤十握・小林実・児玉朝子編著、旺文社、2015年7月、本体1,300円、四六判並製312頁、ISBN978-4-01-033969-5

★『読んでおきたいとっておきの名作25』は高校生向けの文章読本で「本格的な受験勉強を始める前の準備段階に読み、あらゆる学習の基礎となる「読解力」を身につけることを主眼」(版元紹介文より)とし、「高校生に「文章を読む楽しさ」にふれ、それを通して「多様な考え方、表現」があることを知ってもらうことを重視し厳選した25作品を収録したアンソロジー」で、「海外文学を含め、小説・エッセイ・詩・古文など、あらゆるジャンル・文体の文章を読むことで、「読解力」を高め、入試問題への「対応力」を」養成するとのこと。選ばれた25作のうちには、勉強をほっぽらかしてドはまりしてしまうであろう吉村昭さんの『羆嵐(くまあらし)』(新潮文庫)のような実話に基づく怖すぎる名作や、2000年前の言葉がなぜこうもグサリと胸に突き刺さるのか、読むごとにその人間観察の鋭さに驚きを新たにするセネカ『人生の短さについて』(茂手木元蔵訳、岩波文庫、1980年)のような古典が紹介されていて、興味深いです。なおセネカの同作は引用されているのは先述の茂手木訳ですが、現在は絶版で、岩波文庫の最新版は大西英文訳『生の短さについて』(2010年)が流通しています。
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by urag | 2015-09-27 19:27 | 本のコンシェルジュ | Trackback | Comments(0)
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