ウラゲツ☆ブログ

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2015年 08月 27日

雑談(19)

◆2015年8月27日正午現在。

栗田から「債権届出いただいた金額と弊社認識残高との差異についてのご照会【重要】」が郵送で届きました。伝票に即して計上しているのでそんなに違いが出るはずはないのですけれども、明細書も付いていたので、帳簿と照合したいと思います。

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◆2015年9月1日10時現在。

出版協(一般社団法人日本出版者協議会)の会長・高須次郎(緑風出版)さんによる記事「栗田出版販売の民事再生が意味するもの」(「新刊選」2015年9月号)が昨日ウェブでも公開されました。前号での竹内淳夫(彩流社)副会長の記事「栗田破綻と再生スキーム、その陰の本質的危機」よりいっそう細かい字で3段組2頁にわたって掲載されたものです。この長さは近年では異例のことだと聞きます。現在、栗田と債権者との間では債権額提出後の確定作業に入っています。9月半ばまでにはすべての債権額が確定するものと思われます。

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◆9月2日17時現在。

神奈川県大和市の昨春実施したパブリックコメントに関するまとめ文書「文化創造拠点に関する条例案に対する意見公募手続 市の考え方(意見原文付き) 」が興味深いです。「施設の管理運営を指定管理者に委ねるのではなく、市が直接運営すべきだ」という複数の市民の意見に対して、「本施設は、芸術文化ホールや図書館等、異なる複数の施設によって構成される大型の複合施設であり、これらを一体的に管理運営する必要があること、また、開館日、開館時間を大幅に拡大することを考えると、サービス向上とコスト節減の両面から民間事業者による管理運営が適当であると考えています」と表明しています。つまり、文化創造拠点の意義の何たるかがそもそも市民に示せていないばかりか、市民の意見や反論をほとんど聞いてはいない、ということです。市民のうち、73歳の方が長文の意見を寄せておられ、詳細かつ根本的な疑問を書かれているのですが、これに対する回答が上記だというのは、ほとほと情けないですし、呆気にとられます。しかしこれが現実なのですね。お役所が無能なのだ、とは言わないまでも、民間に丸投げせざるをえない現実というのは、図書館という存在が、特定の企業がつけこむことができる恰好の草刈場でしかないかもしれないことを示しています。73歳の方の意見を引きつつ、私なりに補足を試みたいと思います。

「(1)大和市立図書館条例(案)のうち「指定管理者による管理」条項を撤廃して下さい。(理由)私の所属する上和田団地自治会は、児童館の指定管理を引き受けているので、指定管理イコール民間委託とは言えないと思いますが、全国的には運営経費の削減を目的とした指定管理という名の民間委託は全国の図書館の 20%以上、700館程度にまで広がっているようです。図書館はいかにあるべきかといった理念を抜きにした安易な民間委託は公務員の自己否定にもなると私は思います。行政改革などと旗をふる人もいるようですが、改革に名を借りた行政の責任放棄と思います」。

図書館の社会的存在意義の根本が何なのか、その役割をどう堀り下げていくべきなのかを公務員がどう考えているのか、そこが見えてこないというのがこの73歳の方のご不満ではないかと思います。社会的存在意義や役割というものがあるのは公務員も分かっているのでしょうが、そこを具体的にどう満たしていくか、その理念が分からない、というのが現実ではないかと推測できます。その空虚さがコスト減と集客とあの手この手の文化創造を謳うプロ集団につけこまれる余地となるわけです。

「昨今、指定管理の受け皿としてレンタル大手ツタヤを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の活動が話題になっているようです。確かに武雄市立図書館の運営を委託され、開館時間の大幅延長、スターバックスや書店の併設等のアイディアで、来館者を倍増させた企業努力は認めざるを得ませんが、その成果は従来の自治体による図書館運営の怠慢さの裏返しに過ぎません。図書館を行政機関の一部としか位置づけ出来ず、役所と同じように5時終了、職員も館長を含め2~3年で人事異動し、しかも大半が本に関してはシロウト、専門司書など配置することを怠ってきました。また地元書店に対しても、画一的な入札制度により、過酷な値引納入を押し付け、今や全国的に地元書店は絶滅状態です。公立図書館が2000年~2012年にかけて2700館から3200館に増加した一方、書店は23000店から15000店に激減しました。大和市においても生き残ったのはショッピングセンター内の大型書店のみです」。

武雄市図書館における蔵書の杜撰な管理とデタラメな図書購入については昨今つとに知られている通りで、指定管理者制度については今後ますます厳密かつ厳正な監視が求められるべきです。入札の名のもとに価格競争を煽ったあげく、価値のない本を大量に調達できる業者が勝つなどという事態は、たちの悪い冗談でしかありません。出版人はこうしたことに激怒して然るべきなのですけれども、本を作っている側の人間のほとんどは図書館の現状を知らないわけで、そうした無知については出版人はお役所ばかりを責めてばかりはいられません。昨今、いわゆる「ヘイトスピーチ本」の製造責任というものが出版社に問われたことがありました。流通責任や販売責任についてはどうでしょうか。出版社がすべての責任を負うのは無理だとしても、自分たちの本がどう市場や図書館で扱われているかについてもっと知ることが必要なのかもしれません。

「今後の図書館は、本を購入できない人たち、ネット等利用できない私のようなアナログ人間、デジタル化と共生する若い人たち、それらすべての人々が集うことのできる知の広場として発展していかねばなりません。イタリア人の図書館アドバイザー、アントネッラ・アンニョリさんは次のように言っています。「図書館は民主主義社会を支える公共の土台です。本を所蔵して提供することは、知を底上げして市民を市民たらしめる、つまり社会に参加するための基本となるサービスです。」行政がその使命をしっかりと把握して、図書館に司書と各分野の専門家を配置し、主体的に運営することこそ、市民にとって最も望ましいかたちです」。

アンニョリさんの著書『知の広場――図書館と自由』(萱野有美訳、柳与志夫解説、みすず書房、2011年5月)は刊行以来様々な反響を呼び、2年前には来日講演が各地で行われました。アンニョリさんが考える図書館の役割については、国会図書館の情報ポータル「カレントアウェアネス・ポータル」に2012年12月20日付で掲載された論考「イタリアの“パブリック・ライブラリー”の現状と課題」が参考になります。高度情報化社会において図書館の存在意義というのはますます重要になるはずで、市民の方が行政を叱咤するのも当然ではあります。

「そして現在大和市内においても商工会議所、商店会等を中心に、様々活性化の試みがなされています。そういった活動と連動し、若い志の高い人たちが新しい書店を起業できれば、素晴らしいここと思います。先日、大木市長は、大和市は60才以上を高齢者と呼ばないと高らかに宣言なさいました。我々人生の練達者(私は73才)は、高齢者と呼ばれようが、老人、年寄り、ジジイと呼ばれようが、どうでもいいのです。後に続く若者たちに少しでも生きがいのある世の中を提供したい。そのために余力を費やすことを厭うものではありません。もはや経済成長のみを追求する時代ではありません。文化創造こそ日本の生きる道です。そのためには地方が独自の文化を発信しなければなりません。そのための拠点となるような図書館を目指しましょう」。

人生の荒波を乗り越えてきた功労者であるご高齢の方々にここまではっきりと声を挙げていただいているのが申し訳なく感じるほどです。私自身は大和市の住民ではありませんけれども、かと言ってまったく無関係とも思えません。こうした課題はこれからも全国で議論されるでしょう。経済問題といい政治問題といっても人間の営みであり、その根本は文化から生い育っています。市民であれ、出版人であれ、若い世代はこの根本に敢然と立ち向かう責務があると感じます。

「最後に蛇足として申し上げます。昨年海老名市が図書館の指定管理を公募したところ、結果的に CCC と図書館流通センター(TRC)の共同事業体のみの応募だったようです。図書取次の大手、トーハン、日販、2強に続く大阪屋などが図書館運営にあまり熱意を示していない現状では、大和も同じようなことになるのではないでしょうか。企業は社会的存在とはいえ、最終的には利益追求が目的です。庇を貸して母屋を取られぬよう、十分御注意下さい」。

この意見を書かれた方はひょっとすると業界にお勤めだったのかもしれません。後塵を拝する私たちは先達の懸念を将来的に払拭できるでしょうか。今春、大和市の「文化創造拠点」(芸術文化ホール、図書館、生涯学習センター、屋内こども広場、を有する複合施設)の指定管理者は、やまとみらい(代表団体:株式会社図書館流通センター、構成団体:サントリーパブリシティサービス、小学館集英社プロダクション、横浜ビルシステム、ボーネルンド、明日香)に決定しました。経過については「文化創造拠点の指定管理者の募集について(募集は終了しました)」で詳細を閲覧することができます。応募者3団体の中にCCCの名はありません。

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◆9月3日(木)13時現在。

朝日新聞出版のニュースサイト「dot.」に9月3日午前7時更新の牧野めぐみ氏記名記事「関連会社から“疑惑”の選書 武雄市TSUTAYA図書館、委託巡り住民訴訟に発展」(「週刊朝日」2015年9月11日号より抜粋)が掲載されています。武雄市図書館(佐賀県)の選書作業についてCCCがまず「ネットオフ」から購入したこと、事前に武雄市に承諾を得たことなどが明かされています。ネットオフからの回答はなし。年度落ちの実用書についてCCCの選書基準は「蔵書の増加にあたっては過去のアーカイブも含めて幅広く選定。結果、『幅広く』を意識しすぎた在庫が一部導入されており、更なる改善の余地があったと反省しています」と答えたそうで、在庫処分疑惑は事実無根だと答えたとのことです。この程度の答えでは疑惑を晴らすには至らないでしょうし、むしろ火に油を注いだ格好かと思います。貴重書や視聴覚資料の大量除籍については記事中にCCCのコメントはなし。「選書をはじめ、図書館運営のずさんさに疑問を持った住民らが、市に対し、樋渡啓祐前市長に1億8千万円の損害賠償を求めるよう、訴えを起こしている」と報じられています。今後各地にできる予定の「ツタヤ図書館」にも厳しい視線が注がれるであろうことは間違いないと思われます。

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◆9月3日(木)13時30分現在。

小田光雄さんが9月1日付で「出版状況クロニクル88(2015年8月1日~8月31日)」を公開されています。

01:2015年上半期の出版物推定販売金額
02:『日経MJ』14年版「日本の卸売業調査」「書籍・CD・ビデオ」部門
03:栗田出版販売7月31日付「7月13日付ご提案にご同意いただけなかったお取引出版社様への大切なお知らせ」
04:日書連声明「栗田出版販売民事再生について」
05:出版協声明「改めて、栗田出版販売民事再生スキームを撤回するように求める」
06:出版梓会・今村正樹理事長提言
07:三洋堂HD加藤和裕社長提言「書店マージン30%に」
08:村上春樹新刊の紀伊國屋書店による初版9割買上
09:トーハンによるアバンティブックセンターの子会社化
10:《資格の学校》TACが出版社「桐原書店」のすべての事業を譲り受け
11:宝島社『月刊宝島』『CUTiE』休刊を発表
12:インプレスによる2014年電子出版市場調査
13:『Journalism』7月号特集「メディアはネットで稼げるか?」
14:武雄市図書館問題
15:ファミリーマート商品本部新業態・サービス部佐藤邦央マネージャーのインタビュー
16:『選択』8月号記事「楽天が『破壊』する出版業界」、『FACTA』9月号記事「又吉『火花』も救えぬ出版危機」
17:出口裕弘さん死去
18:「出版人に聞く」シリーズ〈19〉宮下和夫『弓立社という出版思想』10月刊行予定

いずれも興味深い記事ばかりですが、特に注目したいのは以下の点です。まず、06に関連して「今村は書協の沈黙について不満を述べているが、それ以上に不自然なのは公取委である。取次の動向に対して、再販制も含め、こと細かに監視しているのは公取委で、取次の様々な改革も、公取委の許認可なくしてはできないと、取次の幹部から聞いたことがある。/今回の栗田民事再生スキームに関して、管見の限り、公取委の発言と声明を目にしていない。ひょっとすると、このスキームは公取委に事前に相談した上で提案されたことになるのだろうか。もしそうだとすれば、返品を巡る問題は再販制の弾力運用とでもいえるものであり、自家撞着状況を招来してしまうのではないだろうか」と。公取にとって出版界の混乱など取るに足らない小さいものなのだろうか、とつくづく落胆します。

07に関して「しかし加藤の「提言」は現実的には不可能に近いというべきだろう。出版社が定価を1割上げることはできても、それをそのままどのようにして書店に還元できるのか。スリップ報奨金として出版社から書店へと戻すことぐらいしか考えられないが、現行の再販委託制ではとても無理であろう。/やはり30%マージンを確保するためには、時限再販、非再販を多くの書店に導入し、最初からその粗利、もしくはそれ以上の設定で買切仕入れを実行し、それぞれの店のマーチャンダイジングに基づき、責任販売することしかないと思われる」と。まったく同感です。

再販制護持のもとで書店のマージンを10%近く上げるためには、実際には2つしか道はないように思えます。1つは版元が正味を下げること。2つは取次を外すことです。1つ目はおそらく無理でしょう。印刷製本費は組版作業の社内化によって数十年前よりかは下がっていますが、限界があります。在庫リスクも小さくありません。10%下げればたちまち破綻する版元が出てくるでしょう。高正味や好条件の一部版元にしてもそうした「厚遇」や既得権が商売の前提=当たり前になっているので、そうした体質から脱却することはほとんど無理でしょう。彼らの業績が高水準を維持しうるのは既得権によって自転車操業が可能だからです。この業界では自転車操業というのは貧乏会社がやるものではなく、高給取りの会社がやることです。彼らは自転車から降りることができないでしょう。

2つ目の取次外しについては、そうした試みが今後増えることでしょうけれど、外せるのはごく一部の書店でしょうし、ごく一部の書籍でしょう。版元との直取引は取次依存度の高い書店にとっては手続きが面倒な「例外」としての扱いに留まり続けざるをえないと思われます。大書店の本店クラスですら、直取引の窓口というものは貧弱な体制で不十分な人員しか配置されていないのが現実ではないでしょうか。再販制が撤廃されて書籍が自由価格になれば書店は毎日数百点の新刊の値段を設定しなければなりませんし、そもそもその前に厳密な仕入判断を日々下し、書目によっては条件交渉をしなければなりません。そうしたことが書店さんの現状でできるとは到底思えません。再販制のもとで定価を一割上げれば書店の取り分の増加に直結するとも思えません。書籍の値段上昇にそもそも読者が追随できないリスクがあります。

ただし三洋堂さんの危機感というのも当然ではあります。小田さんが仰る通り、時限再販や非再販を増やすことが業界として必要でしょう。あるいは新刊書籍と比べて利益率が高い商材(例えば古書)を導入すれば売上が上がるのかといえばそうでもないわけで、消去法でいくと八方ふさがりに思えてしまいます。

最後に08に関して「出版流通イノベーションジャパン(PMIJ)を通じてのDNPグループ書店、紀伊國屋の高井昌史社長が会長の「悠々会」(書店25法人)の加盟店を合わせた450店は紀伊國屋から直接仕入れるか、取次経由を選択できる。前者の場合、製本会社から発売日に合わせ、書店へと直送。他の書店は事前注文に応じて取次より配本」と。取次危機と相俟って書店界の再編が加速しそうな予感がします。

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by urag | 2015-08-27 12:21 | 雑談 | Trackback | Comments(0)
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