ウラゲツ☆ブログ

urag.exblog.jp
ブログトップ
2015年 08月 02日

雑談(9)

◆8月2日16時現在。

「サイゾーpremium」2015年7月31日付の佐伯雄大氏記名記事「出版社6社が書店に謀反!? アマゾンと安売り契約で紀伊國屋書店が大激怒!」で取り上げられている関係者のコメントには貴重なものがあります。

「ある出版社の営業マンはこう見立てる。「紀伊國屋書店の高井昌史社長がそれらの記事を見て、大激怒したようだ。その日のうちに6社が呼び出しを受け、アマゾンで割引販売する110タイトルの書籍全点を、すべての紀伊國屋書店から返品すると通告されたそうです。リアル書店でナンバーワンの紀伊國屋さんを怒らせるのは、営業にとっては絶対のタブー。それで、主婦の友社さんはあれだけ過剰に反応したんですよ。『時限再販契約はしていない』といっても合意はあったんでしょうから、紀伊國屋さんとしては、許せないでしょう」」。

→これは今まで業界内で「公然の秘密」であったはずでしたが、ついに漏れてしまったようです。リアル書店ナンバーワンの座について言えば、『日経MJ』調べの「2014年書籍・文具売上高ランキング」に限ってみれば、トップのCCCに突き放されている状況です。

「また別の出版社の営業幹部が話す。「東洋経済オンラインの初出の記事で、『日販が協力』と書いてあったことで、日販もとばっちりを受けたようです。『紀伊國屋さんから、お叱りの電話をうけた』と聞きました。高井社長のアマゾン嫌いは、業界でも有名な話です。記事が出た翌週の7月1日には、出版流通イノベーションジャパン(紀伊國屋書店と大日本印刷の合弁会社)が新たな出版流通のビジネスモデルを提示する説明会がありました。内容は直取引や時限再販の活用などでした。きっと、自分たちの発表前に、アマゾンに邪魔されたと思ったのでしょう」」。

→アマゾンを嫌っているのは誰か、どの会社(書店であれ、版元であれ、取次であれ、その他の勢力であれ)が対抗や抵抗や介入を試みているのかを押さえておくと色々なものが見えてきます。栗田事案も例外ではありません。

「取次関係者は言う。「この一件は、完全に出版社の勇み足ですね。この6社はすべてアマゾンと優遇マーケティングの契約をしている会社です。古い書籍なら他の書店に迷惑をかけないと思っていたのかもしれませんが、完全に見誤っています。事前に一言、説明しておけば、これほどの大事にはならなかったでしょう。紀伊國屋さんが各社を呼びつけたのも、出版社がアマゾン一社を優遇するような流れにくさびを打ちたかったのでしょうね」」。

→アマゾンに対抗心を燃やしている会社がそうした流れにくさびを打ちたいと思っている、というのは紀伊國屋書店以外の一般論としてもそうかもしれません。ただ、日常の商取引においてすべての取引先を対象にするキャンペーンというのは限られているはずで、その他のたいていのキャンペーンやフェアは個々別々に条件が違うのが大抵でしょう。紀伊國屋書店が割引販売を出版社に持ちかけてもよかったはずです。その場合、他書店さんはどう思うでしょうか。そもそも紀伊國屋書店自体も業界では優遇されている方ではないか、という声も聞こえそうです。アマゾンは優遇マーケティングや直取引など版元とよりいっそう直接的かつ密接に繋がるビジネス・チャンスをふんだんに作ろうとしています。そうした姿勢を魅力的に感じるかどうかは別問題ですけれども、アマゾンに対抗するためには彼ら以上に版元や著者に商談を持ちかける戦略性が必要ではないかと感じます。

「6社のうちのある1社に勤務する人物は話す。「実際、アマゾンの割引販売ですが、それほど売れていません。参考になるデータは取れないでしょう」。

→これを受けて佐伯記者は記事をこう結んでいます、「「売れない本は安くしても、売れない」という業界の定説は覆されることはないのだろう」。確かに安売りだけが増売のポイントではないですね。価格ではなく中味が問題なわけです。この記事対する2ちゃんねるでの反応は「【出版】出版社6社が書店に謀反!? アマゾンと安売り契約で紀伊國屋書店が大激怒 [転載禁止](c)2ch.net」をご覧ください。はてなブックマークでの反応はこちら。redditでの反応はこちらです。

+++

◆8月2日17時現在。

書店の閉店に立ち会った方は先に紹介した声のほかにこんなことを呟いておられました。「最後に全国の書店および書店主さんと従業員さん、栗田出版の配本に携わっている方々に「ありがとう」と「おつかれさま」を!。私は明日、このように客観的に記録できるのか、わからないので先に書いておきます」。「明日や旧盆明けや8月末には、街中の店が畳まれるのが全国で散見するのかもしれません。街中の書店について、この栗田出版の事実上の倒産宣言から1ヶ月間に何があったのかを、どうしてこうなったのかを振り返る参考資料になれば幸いです」。

→とても貴重なドキュメントではなかったかと感じています。ツイ主さんに感謝します。さらに次のご発言も胸に刻みたいと思います。「今日の着荷品も「奇跡的」であることを想起するべきだろう。栗田出版は、残存戦力で最期の撤退戦の最終局面であることを実感。最後までトラブルが絶えなかったと共に、全国で大小さまざまの混乱を残して、最後の営業日を迎えた店が多かったのだろう」。「いつものようにいきつけの書店に行った。今日も店主が昼休み兼宅配中でおかみさんが店番をしているのではないかと思ったが、シャッターに正式に閉店の告知の紙が貼られていた。悪夢なら覚めて欲しいと思った」。

→ツイ主さんが特記されている閉店されたお店の告知文にはこうあったそうです。「願わくは、ここに小さな本屋があったことを思い出していただければ、幸せです」と。

+++

◆8月3日午前11時現在。

栗田の再々提案に掛る7月31日付返品明細書の商品は弊社の場合、実際にはまだ返品されていないもので、SKRに滞留させていることが窺えます。現物が確認できないものを債権から相殺しろって言われても無理です。7月29日の「話を聞く会」で質問が出た、「返品を意図的に止め(てい)るのか」という疑惑はこれで深まりました。先方の弁護士は「返品しないのも自由だ」と答えていましたが、あまりにも自由すぎです。栗田の印象は悪くなる一方です。返品を拒否したり保留したりしている版元にも断じて近々に購入させるという「再々提案」は版元を激怒させるものでしかなかったですし、委託削減どころか取引中止も視野にいれざるをえないという版元が増えています。新提案を呑んだ版元からも案の定「これでは再生計画を否決されようとも擁護しきれない。お粗末だ」という嘆息が聞こえてきました。要するに版元と真摯に話し合おうという姿勢がないですし、「版元に不利益を与えない」という栗田サイドが示した大原則は有名無実もいいところです。再生を強力に推進しようとする最大手版元への批判も飛躍的に高まっています。どう考えても火に油を注いだとしか思えません。

片面的解約権は書店も有しているというのが栗田の見解(債権者集会レジュメ)なのですから、書店はもはや逆送を許容するいわれはなく、版元に入帳依頼を出す必要もありません。一方、版元はこれまでの長年の取引の中であまりにも理不尽で不明朗な返品に対しては拒絶権を行使してきた「実態」がありますから、先方がこの時とばかり都合よく持ち出してきた「片面的」という解釈にはそもそも無理があります。そうでなくても一方的に返品を押しつけるというのは強要・恐喝・脅迫に累することです。当然ながら出版社はこうしたモラルなき取引を受けなければならない合理性はなく、大方の版元にとって数パーセントのシェアしかない栗田の方が多数の版元から切られるリスクがあるわけです。栗田としては何とか資金繰りを良くして早く大阪屋と一緒になりたい、という思いなのでしょうが、今回の蛮行の数々は決して見過ごせるものではありませんし、版元の厳しい目はすでに大阪屋やその大株主たち(楽天・DNP・講談社・小学館・集英社・KADOKAWA)にも向いています。結論的に言えば、栗田代理人の「大ナタ」はあまりにも色々な副作用を惹起しすぎたし、今も引き起こし続けている、ということでしょう。債権者との協議のテーブルにつこうとしないやり方に、多くの出版社は強烈な不信感を覚えています。

+++

◆8月3日13時現在。

栗田代理人の再々提案=最後通牒に対して「社長へ報告して月曜日に顧問弁護士に相談となったけど、あまりの一方的な言い分に来月から取引全部止めたくなっちゃったよ。帳合の書店さんへ直接連絡して売れ行き好調な看板雑誌の配本無くなるかもとお伝えしなくちゃならんかね」と仰っていた版元さんに対して、別の版元さんがこんなリプライをされています。

リプAさん「弊社はこれですっぱり配本をやめます。来週は帳合書店さんにお邪魔して、今後の対応を相談させていただくつもりです。あの規模の配本で再生、、、、ちょっと信じ難いです」。

版元Bさん「ここに至るまで書籍も雑誌も部課長職の方々とやり取りして、その都度分からないとか個別対応はしないと言う返事だったので、最後通牒のような内容をギリギリでファックスするからとか言ってくるなら、初めから返品は必ず引き取らせると明言してくれれば早期に対策取れましたよね」。

リプAさん「栗田も大阪屋も言わされているだけで、当事者ではないと個人的には思ってますし、債権者集会で採決されたとしても未来が明るくなるとは思えないなーと踏んでます」。

なお、栗田事案は一般読者の方々からもご心配いただいています。

Aさん曰く「栗田出版販売の民事再生申し立ての件、状況を把握すればするほど、中小出版社にとって最悪のシナリオしか見えない」。「たぶん、これくらいじゃ結局のところ出版取次業界は変わらないと思うから、いっそ公取委とか国税庁が動いてこのいびつな構造にメスを入れてくれるのを願うしかない」。「「出版は文化だから」というつっこみにくい大義名分のもと、昔から放置されたままになっている部分が多すぎる。物流の発達、ネット通販、電子書籍、と時代は随分変わっているのに、「守られた」ままだから、他の一般企業との解離が大きすぎる」。「大手出版社も大手取り次ぎも、上場していない(外部に対する説明義務が無い)というのがこういうときの一番の悪化要因だと思う。想定10億の損を被る計算になるカドカワは唯一上場企業なので、株主にどう説明するのか気になる」。

Bさん曰く「ネットからはニッチな出版物を簡単に購入できて、書店ではメディアに取り上げられた話題のタイトルと雑誌類が売上げの殆どを占めるいま、再販・委託制度のような出版三者が三位一体となる流通形態自体がもう時代錯誤になっていると思う。たとえば廃墟関係のようにマイナーな出版物は制度下の(続く)」。「(続き)いまでも大型書店にしか置いていないし、結局刷ってしまった在庫は三者(版元・取次・書店)のうちだれかが負担を背負わなければならないという内部自滅構造もはらんでいる。この度の栗田の倒産もその負担集中によるものだと思うと、その負担分が回ってくる版元も連鎖的に…、と考えてしまう」。

+++

◆8月3日14時現在。

「出版・書店業界がわかるWebマガジン」を謳う「KOTB[コトビー]」の2014年11月1日付記事「報奨付きの本が多すぎて書店の悲鳴が止まらない」を振り返っておきます。曰く「本来であれば書店の担当者の意識付けとしての役割を果たすはずの報奨。しかし、この銘柄が多すぎて、仕組みが複雑すぎて書店の担当者も辟易しているのが実際のところです。「報奨もらえるの?わーい!」なんていう雰囲気はありません」。

→先日ご紹介した、「仕掛販売・報奨施策・特約縛り」に悩む書店さんの声を思い出したいと思います。実際に店頭に立つ書店員さんにお話しを伺ってみても、苦痛に感じる、という声を聞きます。

また曰く「報奨がつく本が当たり前になってしまうとどうなると思いますか? そうなると、報奨がついていない本を売ろうというモチベーションがはたらきません。同じ金額の本だったら、当然、報奨付の本に力を入れます。こうなってくると、報奨をつける体力のない出版社の本が書店に並ばなくなってしまいます。「これ、どこの版元?聞いたことないし、報奨もつかないなら即返品だよね」なんていう会話が当たり前になってしまう日がいずれやってきます。小さな出版社の本の存在を排除してしまうと、特定の思想などが流布する可能性も。極端な話ですが、現実に起こらないとは言い切れません」。

→実際のところ、有名チェーンから人文書の新刊発注がぱったりと止まった例があります。しばらく受注もなく(したがって配本もせず)時が過ぎていったある日、新刊発売後にものすごい勢いで「頼んでない本が入ってきたんですけど!」と支店さんから電話が掛ってきました。取次に照会したところ配本に手配違いがあったとのことでした。かつてはお付き合いのあった書店さんだっただけに悲しい思い出となりました。

また曰く「返品率を下げるためには報奨を使うのではなくて、売れる本の選別能力が高い書店員を育てるような取り組みが必要なのではないかと感じています」。

→このあと「理想論なのはわかってます」と続けておられるのですが、ごく正論をお書きになっておられると思います。むろん書店さんの現状では人材育成にお金も時間も掛けられないというのは本当だと思います。ではそうした情況に対して、出版社ができることは何か。書店さんとともに勉強会を開くということは昔から行われています。その労力たるやなかなか大変なものです。そのほかに何かできることがあるのかどうか。双方にとって「やってあげる」のでも「何かしてもらえるまで待つ」のでもなく、共に苦しむことが可能なのかどうか。そしてここに仲介者としての取次はどう関わっていけるのか。

→記事中にある「ハイプロフィットやらPPIやらMD企画」については、日販さんの2014年3月24日付ニュースリリース「日販 第67期組織改訂について」を参照してみます。曰く「流通改革推進グループ契約促進チームを書籍部に移管し、PPI促進課と改称する。「出版流通改革」においては、書店マージンを増大させることを目指しているが、「PARTNERS契約」のみならず、新たなインセンティブスキームとして、インセンティブ率が12%を超える商品企画である「High-Profit企画」、また書店における契約出版社ごとの返品率実績に応じてインセンティブが発生する「PPI(PARTNERS PUBLISHERS INCENTIVE)」にも取り組んでいる。 うちPPIについては、ベースとなる契約スキームの構築が進み、契約出版社も一定のシェアを占めるまでとなった。これをさらに拡大・定着させ、実績を向上させるため、出版社交渉機能を書籍部に移管し、PPI促進課とする。同課においては、PPIによる効果が特に見込める実用書ジャンルについて、販売企画・仕入・商品調達責任も一元化する」。

→この「スキーム」という言葉、栗田の一件以来、大嫌いな言葉のひとつになりました。Tシャツに印刷したいくらいです。本当に作ろうかしら。余談はさておき、さらに同社の「事業内容」として紹介されている「出版流通改革」の中の「PARTNERS契約を支えるメニュー」も参照しておきます。曰く「《MD計画書》・・・店頭や顧客起点の発想で、書店の売場計画を支援する情報ツールとして「MD計画書」を提供しています。該当月にどういったイベントがあるのか、注目の新刊は何か?などをジャンル別にお知らせするとともに、フェアなどのプロモーションの提案も行っています。日販の営業担当者が、書店や地域特性ごとに内容をさらにカスタマイズして提案します。《MD企画》・・・契約店に向けては、MD計画書でのフェア提案とともに、随時銘柄ごとの販売提案も行っています。売行き良好書の重版にあわせた受注、今後売れていく銘柄の仕掛けの提案などMD担当者・仕入担当者が受注促進を行っています。《High-Profit企画》・・・書店マージン35%を達成するために、2012年度よりインセンティブ付銘柄の受注・販売促進を行っています。これがHigh-Profit企画です。返品率などの条件を満たした書店に対して、売上に応じたインセンティブをお支払いします。この企画の対象となったことで、書店からの注目が高まりベストセラーとなった銘柄も多く出てきています」。

+++
[PR]

by urag | 2015-08-02 17:52 | 雑談 | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : http://urag.exblog.jp/tb/21509397
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。


<< 注目近刊:『現代暴力論』『ツァ...      雑談(8) >>