ウラゲツ☆ブログ

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2015年 07月 21日

雑談(4)

◆7月21日8時現在。

先日、業界某団体主催による栗田説明会に参加させていただきました。感想については別途書くつもりです。この説明会では弁護士からの回答に終始するのではなく、栗田役員が説明するという点に債権者集会の反省らしきものが活かされてはいましたが、説明する内容は集会とまったく変わらず、新提案(1ヶ月分の返品相当額の還元や新栗田での新刊委託の支払いサイトの短縮)のほかは、相変わらず不公平で不公正な返品スキームのゴリ押しに終始していました。憤懣やるかたないとはこのことです。もともと版元が承認していない返品をドカドカ送りつけて、それを受け入れている版元があるからお前も受け入れろ、というのは「公平性」ではなくて「恫喝」というのです。そこがまったく栗田は分かっていないし、反省もしていない。公正取引委員会告示による「優越的地位の濫用」第一号に曰く「継続して取引する相手方に対し、当該取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務を購入させること」。

第二号から第五号までは以下の通りです。「二:継続して取引する相手方に対し、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること。三:相手方に不利益となるように取引条件を設定し、又は変更すること。四:前三号に該当する行為のほか、取引の条件又は実施について相手方に不利益を与えること。五:取引の相手方である会社に対し、当該会社の役員の選任についてあらかじめ自己の指示に従わせ、又は自己の承認を受けさせること」。

新提案を飲んだ場合、その後は「旧商品からの返品の買上」を了承したことになります。新刊委託を「6ヶ月間の返品受付期間、8カ月後の入金」という条件で出荷している版元は、7月5日に入金されるはずだった昨年11月分と8月5日に入金されるはずだった昨年12月分の委託精算がけし飛び、1月から今年6月にかけての委託出荷分の精算が終わっていないため、少なくとも今後半年間は6月25日までに出荷した委託分からの返品を買上げ続ける(委託期限切の返品や注文出荷分の返品も含む)という事態に悩まされることになります。もともと委託分の内払いがある恵まれた一部版元は別として、たいていの版元にとって1ヶ月程度の返品相当額還元では吸収しきれるはずもない出費と損害が今後も生じることは明白です。

新刊委託の支払いサイトを短くされたところで、そもそも委託出荷をする版元があるのかどうか。片務的売買契約を撤回していない「新栗田」に対する版元の信用が固まってもいなければ、「新栗田」の継続自体にも不確定要素がある現在、今後も委託で出荷しようなどという行為は版元によっては「お人好しすぎる」と映っているのが現実です。今後の版元のスケジュールは以下の通りです。目まぐるしさに困惑している版元さんもおられるようです。

7月24日(金)消印有効・・・栗田新提案への諾否の回答書の送付(FAXでも可。遅れる場合は事前相談)
7月25日(土)〆・・・「新栗田」への6月26日~7月25日分の請求書作成及び送付
8月04日(火)必着・・・債権届出書を弁護士法人淀屋橋・山上合同へ提出

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◆7月21日9時現在。

株式会社サイゾーが運営する「ビジネスの"本音"に迫る」が謳い文句の情報サイト「Business Journal」に、7月19日付で佐伯雄大さんの記名記事「出版崩壊の序曲?老舗取次が破綻!出版社に“多重の苦しみ”与える再建策に業界猛反発」が掲載されました。佐伯記者は先日ご紹介した「カドカワ、取次会社“外し”加速か 紀伊國屋書店とも直取引開始、業界の常識破壊」(6月20日付)もお書きになっておられる方です。今回の栗田事案を6月26日時点から復習しておく上でたいへん参考になります。記事中では複数の消息筋からの証言が取り上げられていますが、特に注目を惹くもの2つを引用します。

「また、別の業界関係者も今回の再生スキームについて疑問を投げかける。「栗田の民事再生の裏には、小学館、集英社、講談社の大手出版社3社が関与しているとみられている。栗田のスポンサー候補として出版共同流通の名が挙がっているが、この大手3社が同社に資金を出すというかたちを取るのではないか。3社は栗田支援の雰囲気を業界につくり上げようとしている。破たん当日には、トーハンや紀伊國屋書店に3社が自ら出向いて、状況を説明したと聞いています。こうした一部の大手出版社だけが裏で栗田支援の枠組みを決めていることが、返品問題も伴って他の出版社の不信をあおっている」」。

「さらに、ある取次関係者は言う。「栗田は債権者説明会で、事態は最小限の混乱にとどめたといっていたが、現実には出版社は返品問題もあり、栗田への出荷を止めたり、返品を逆送したりしている。それも相当な数です。取次会社と関係を持つ一部の倉庫会社が、出版社に出荷の依頼をするなど栗田支援を働きかけ始めているが、こうした動きが出るのも、栗田帳合(栗田から商品を仕入れる書店)への商品供給が滞っているからだ。現に、栗田帳合の書店は、トーハンとダブル帳合の店が多いので、トーハンに書店が駆け込んでいるとも聞く。さらに日販のトラックが、栗田帳合の書店に荷物を運んでいるとも聞こえてきます。7月7日には大阪屋から改めて出版社へ出荷を求める通知が出されるほど、事態は深刻だ。このまま迷走を続けるならば、栗田の再建は危ういだろう」」。

今回の栗田再提案(特に返品スキーム)が中小零細版元の取引条件を考慮していないことは明らかです。大口取引相手だけを相手にするというシステムでこの先もいけると思っているならば、帳合書店にもそうはっきりと説明すればいいのは。「中小零細版元は切り捨てます」と。

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◆7月21日10時現在。

栗田とは別件の業界ニュースをご紹介します。

◎ヨドバシ・ドット・コム

「新時代を生きるための金融メディア」を謳う「ZUU online」の7月17日付、編集部記名記事「アマゾンを超えるのは楽天ではなくヨドバシ」急成長の原動力は?」に曰く「ヨドバシカメラのネットショップ「ヨドバシ・ドット・コム」の評価がネット上でうなぎのぼりだ。購入金額にかかわらず全品配送料が無料であり、都内なら注文から6時間以内、地方主要都市でも当日中に商品が届く配送のスピーディさが好評である。/同社は、現在、国内全人口カバー率で70%のエリアで当日配達、98%のエリアで翌日配達が可能だとしている。この速さは各大型都市に巨艦店舗を擁し、物流センターを整備しているヨドバシカメラだからこそできる芸当であり、現時点(2015年7月)では業界最大手のアマゾンも太刀打ちできていない。/かつ「ヨドバシ・ドット・コム」の品揃えが家電、食料品、アウトドア、ゴルフ用品、キッチン用品、ペット用品、文房具、書籍(電子電書籍含)など急速に幅広くなっていることから、ネット上では、アマゾンを超えるのは楽天ではなくヨドバシという声も増えつつある」。

書籍をヨドバシへ取り次いでいるのは大阪屋。大阪屋の筆頭株主は楽天。アマゾンは日販を通じて書籍を仕入れている。wikipediaによれば日販の大株主は2015年3月31日現在(上位10名及び持株比率)、以下の通り。持株比率は、自己株式(2,809,450株)を控除した発行済株式総数に対する割合、とのこと。ちなみに光文社は講談社と同じいわゆる「音羽グループ」。

講談社 - 6.08%
小学館 - 6.02%
日販従業員持株会 - 5.31%
光文社 - 2.83%
文藝春秋 - 2.31%
秋田書店 - 2.25%
三井住友銀行 - 2.14%
KADOKAWA - 2.04%
旺文社 - 1.83%
竹下晴信 - 1.70%


◎リブロ池袋本店

「リテラ」7月19日付、井川健二氏記名記事「書店文化の象徴・リブロ池袋店閉店…背後に大家の「セブンイレブン」オーナーの追い出しが」に曰く「つまり、鈴木オーナーとセブン&アイが関係の深い取次会社のライバルである会社の拠点をつぶすために、賃貸の打ち切りを断行したのだという。/事実、今後はリブロの後の店舗をそのまま使い、三省堂書店が入居することが決まっている。これはつまり、「この場所で本屋をやっていても儲からないから」という理由でリブロがなくなるのではなく、大家の出身企業との関係で閉店に追い込まれたということを物語っている。/セブンの鈴木会長と言えば、セブンのフランチャイズ店に対する仕打ちに象徴されるように、自分たちの利益のためには手段を選ばない冷酷な経営が有名だが、今回のリブロ閉店でもまさにその体質がモロに出たということだろう」。出版界では周知の「情報」ではあるものの、ニュースにはなりにくかったせいか、twitterでの反響を見る限り、一般読者の衝撃は小さくないようです。

「新文化」7月21日付記事「リブロ池袋本店閉店、三浦正一社長「いつの日か再び、池袋で」」に写真が3枚。3枚目の一番大きな後ろ姿はYさんのような気がします。社長のご挨拶が何とも切ないです。リブロさんの公式twitterでは今日「おはようございます。今日から「池袋本店のないリブロ」のスタートです。いろいろと未知の世界です。そんなに簡単ではないので無責任なことは言えませんが、まだ、諦めていません。今後とも、よろしくお願いいたします。(営業本部N)」というつぶやきが。また、「人と本や本屋さんとをつなぐWEBメディア」を謳う「ほんのひきだし」では「リブロ池袋本店レポ―ト⑧ 大勢の人に見守られながらリブロ池袋本店が閉店」が本日公開されています。スタッフさんたちの写真やコメントもあって胸に迫ります。一方、利用者の方々の反応についてはたとえば、「東京文系大学生」さんの7月20日付ブログ記事「「ニューアカの聖地」セゾン文化を作ったリブロ池袋本店の閉店」などをご参照ください。「ふとリブロ池袋に費やした金額を概算してみようかと思いましたが、背筋が凍る予感がしたのでここでは辞めておきます」というくだりに共感を覚えます。

なお、同店の「光の柱」に書かれていた識者のコメントのひとつである、原武史さんの「リブロ死すとも西武は死なず」という言葉は「池袋本店はなくなるけど、西武百貨店がなくなるわけではない(から希望がある)」という意味と、「池袋本店を潰したくせに、西武百貨店はのうのうと生き残る(なんて絶望的だ)」という意味の、どちらにもとれます。まずは前者として理解する方が多いのかもしれませんが、後者のニュアンスがじわっと追いかけてきて、読む人によって意味合いが変わってくるメッセージだと言えるでしょう。同店跡地には三省堂書店池袋本店が入居するとのことです。「新文化」7月17日付記事「三省堂書店池袋本店、7月29日に仮オープン」をご参照ください。


◎未来屋書店/アシーネ

「日本経済新聞」7月21日付記事「未来屋書店がアシーネを吸収合併 イオン、書店事業を統合」 曰く、「イオン子会社の未来屋書店(千葉市)は9月、ダイエー子会社で書店事業を展開するアシーネ(東京・江東)を吸収合併する。合併によって、未来屋書店の売…」(以下有料)。アシーネはかつて日本最多の店舗数を誇る一時期があったはずではと記憶します。現在でも全国に90店舗以上あります。2010年時点の「日経MJ」調べによる専門店売上高ランキング(書籍・文具部門)の上位20位にアシーネの名はありませんが、未来屋書店は7位に入っています。2013年には6位。店舗数は172店から236店に増えています。

【22日追記:「新文化」にも記事が出ました。21日付「未来屋書店とアシーネが合併」に曰く、「イオングループの未来屋書店と、ダイエーの子会社であるアシーネは7月8日、それぞれ臨時取締役会を行い合併することを決議、同日に合併契約を締結した。存続会社は未来屋書店。9月1日に売上高約600億円、店舗数340店超となる新生未来屋書店が誕生することになった。〔・・・〕未来屋書店では「〔・・・〕優秀な人材の活用を図り、互いの強みを融合させることで、書籍・雑誌以外の分野で新たな業態・事業に挑戦し、書店事業の変革を遂げていきたい」と話している」とのこと。】

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◆7月21日21時現在。

栗田から請求書が届きました。6月25日付の、返品運賃(所沢・書籍分)です。先方の管理部総務管理課(2014年10月に取引部計算課が改称)にたずねたところ、4月26日から5月25日分の返品分の運賃(要するにSKR=出版共同流通の手間賃)の請求書でした。金額自体は大したことはないのですが、この時期なので少しびっくりします。これはいわゆる「保全処分命令の例外」として栗田がSKRに支払わねばならないために版元にも請求がくる、ということなのかと理解しています。債権から相殺する旨の「相殺通知書」を栗田に提出するようにも求められています。やれやれ・・・。

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◆7月22日19時現在。

「E Book 2.0 Magazine」7月21日付、鎌田氏記名記事「栗田倒産が起動した「業界」解体のシナリオ」が公開されています。曰く「しかし、何事にも終わりは来る。「国家」も破綻し、巨大企業も破綻する。1.5兆円あまりの出版産業が「破綻」する可能性はそれより高く、むしろ想定内とすべきだ。真に憂えるべきはこの国の「出版」の運命だ。現場の方々の努力には敬意を表したいが、全体として不合理なシステムを支えるために、(読者のための)本来の仕事を犠牲にすることは続けるべきではない。返本の波を新刊の波で押し返すような状態では、まともな出版活動ができない。筆者は以下のような仮説を考えている。/第1に、「取次」を将来的に維持するスキームは存在しない/第2に、再販制は出版社に過大なコストであり、打撃となる/第3に、「返品権付売買契約」は出版社にとって最も危険である/第4に、取次会社の再建コストは破綻処理より高くつく/第5に、出版システムの連鎖的「崩壊」は現実に起こり得る」。

これら5つの仮説は進行中である目下の危機において、ある特定の人々が認めようとしない当のものではないかと思われます。ある栗田役員は「新栗田においては全版元との取引条件を最初から見直すようなことはしない」と述べています。つまり、新会社になろうと「今のまま」ということです。「今のまま」ではダメだったから民事再生になったわけですが、それでもなお「今のままでもう一回やらせてくれ」と言っているわけです。まともな投資家だったら一笑に付すであろうような出来事が、この出版業界では起きているということです。

「多数派工作はほぼ完了しているだろうから再生計画は通るだろう」と見ている方はげんにいらっしゃいます。「いや、債権額の半数は押さえることができても、債権者数の半数まで押さえられるのかどうかはいまなお微妙だ」と思っておられる方もいます。じっさい、誰にとっても「仲間はずれ」は怖いですし、自社を不利な位置には置きたくないと思うわけです。損害は出るけれども、従うように見せかけて大いに取次を利用してやろう、というしたたかな方もいらっしゃいます。新提案を飲んだら、再生計画案には反対できないかというと、そうではありません。しかし新提案が信認されることは、栗田にとって再生への大きな一歩ですから、延命に希望が持てないまま新提案を飲むというのはいささか矛盾めいてしまいます。

決断の時が迫っています。迷っている版元さんは、明後日24日までに回答しなければならないと慌てる前に、態度保留の旨を栗田に告げ、もう数日の猶予を相談するというのも、選択肢にとしては現状から言ってやむをえない気がします。このあまりにも短い期間をたくみに設定した栗田や代理人にとっても、版元の諾否をぎりぎりまで待つ態度を見せるのがより「現実的」であるはずです。

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by urag | 2015-07-21 09:40 | 雑談 | Trackback | Comments(1)
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Commented by urag at 2015-07-22 15:31
某零細出版社さんこんにちは。興味深い情報をありがとうございます。O社が積極的に電話をしてくるなんて珍しいですね。事故扱いというのは乱暴な気がします。


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