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2015年 07月 17日

雑談(3)

◆7月17日午前11時現在。

大阪屋の6月26日付文書「栗田出版販売(株) 民事再生申立にともなう表明」の重要部分を再読します。「栗田出版販売(株) 再生までの間、出版共同流通(株)、並びに当社出資元の出版社とも連携し同社再生を支援してまいります。取引先出版社様にはその間いろいろな面でお手数やご迷惑をお掛けすることがあるとは存じますが、出版の足腰である流通基盤の多様性やバランスへのご賢察を賜り、皆様のご理解とご支援をいただきたく存じます」。

栗田を支援すると表明している大阪屋は、出版共同流通、そして大阪屋への出資元出版社との連携を明言しています。大阪屋に出資している出版社は、「東洋経済オンライン」2014年11月9日付記事「楽天が出版取次「大阪屋」に出資する事情――"打倒アマゾン"でしたたかに築く包囲網」を参照すると、筆頭が楽天で14億円(出資比率35.19%)で、KADOKAWA、講談社、集英社、小学館、大日本印刷(DNP)がそれぞれ4.6億円(出資比率は各11.56%)、残りの約7%は大阪屋の持ち株会社OSSからの出資です。OSSについては、「新文化」2014年10月9日付記事「大阪屋、6社による出資額は総額37億円に」をご参照ください。曰く、「11月7日、大阪屋の既存株主563人が所有する株式1394万株をOSSに移転して持株会社OSSを設立する」。

上記表明の中には楽天やDNPの名前は出てきません。音羽(講談社)と一ツ橋(集英社・小学館)と角川、の出版社三大勢力が出てくるだけです。大阪屋は出版社に迷惑を掛けるけれど支援が欲しいと言います。この場合の「出版社」というのは株主以外の版元も含まれていると読んでいいかと思われます。また、引用箇所の前段ではこうも書かれています。「書店数の減少が続く中、当社や栗田出版販売(株)といった出版取次が経営基盤を安定させ存在感を持ち続けることが、出版マーケットの下支えに不可欠な出版流通の多様性(書店・出版社の取引の多様性)にもつながり、またそれが大きな意味で出版の多様性を担保することにもなるものと信じております」。

書店や出版社との取引の多様性、というのは、様々な書店や様々な出版社が存在してこそ担保できるはずのものですが、そうは言っても大阪屋にとっては大株主の意向を優先せざるをえない事情があるわけです。それゆえ「当社出資元の出版社とも連携」との明言がある。しかし、出版界には《一音角》と必ずしも利害規模が一致しない版元もたくさんいます。大阪屋にとって実質的には、大株主以外の版元の存在価値は、第一のものでも最優先されるものでもないと冷静に見ておくべきでしょう。最初に引用した箇所の後段で大阪屋はこう述べています。「今後とも、皆様のご協力のもと様々なタイプの個性を持った街ナカ書店の活性化と、新たな「本のある空間」づくりに取り組み、心を育み、創造力を育てる「本の力」に多くの地域の皆様が触れていただける場を広げていけるよう努めてまいります」。ここでは書店は言及されていても出版社への出てきません。

債権者集会で栗田役員および代理人弁護士団は「栗田の事業価値の第一は書店との取引だ」と千数百社の出版社を前にして高らかに宣言しました。確かに取次は書店の多様性(というよりもっとあからさまに言えば、取引額の大きな書店がより多く存在すること)を必要としてはいるでしょう。力点は明らかに、「書店・出版社の多様性」ではなくて、大阪屋の言葉通りあくまでも「取引の多様性」にあります。そして、この「取引の多様性」はただちに「書店・出版社の多様性」そのものに直結するものではないことを理解する必要があると思われます。そんなことは当の昔から自明のことだ、と仰る方もいるでしょうが、その都度確認しておくことは無駄ではありません。

◎関連参照記事

「Business Journal」2013年8月17日付記事「“1強”アマゾン対楽天、競争激化で再編機運高まる出版業界~苦境の出版社・書店の思惑」に曰く、「出版社の営業幹部は言う。「6月初めに日経新聞がすっぱ抜き、翌日に朝日新聞が後追いで報道した楽天による大阪屋(出版取次3位)買収の件だが、楽天だけではなく、講談社、小学館、集英社の大手3社と丸善、ジュンク堂書店の親会社・大日本印刷も大阪屋に出資する。これはアマゾン1強状態に歯止めをかけたいと考えている出版社や書店が、対抗策として楽天を担ぎ出したのだろう。楽天は、12年に出版業界団体が行った、客注流通を迅速化するための実証実験にも参加していた。楽天が取次業に参入するお膳立ては、すでに整っていたと思う」。楽天が大阪屋を傘下に加える--。これはアマゾンにとってもただごとではない。というのも、アマゾンの仕入れ先(帳合)の一つが大阪屋だからである」。「ネット書店の営業責任者が明かす。「アマゾンが大阪屋との取引を中止すると聞いた。これまでアマゾンは緊急時用と通常時用の2つの取引ルートを大阪屋に設けていたが、前者は正式に楽天の子会社になった時点で取引を止めて、後者も今年12月で中止する意向のようだ。その理由は、大阪屋には当然、楽天から役員が派遣されるので、大阪屋経由の売り上げやアマゾンのシステムなどを把握されてしまうためだろう。それに、アマゾンよりも楽天への出荷を優先するようになるだろうし、アマゾンにとってはメリットよりもデメリットのほうが多くなる」。

先に引用した「東洋経済」やこの「Business Journal」は引用箇所以外にも重要な言及と分析がありますから、再読三読が必要です。過去記事が現在を照射してくれます。さらにこんにちまでの経緯を業界紙などで時系列に沿って追っておけば、事態が立体的に見えてきます。歴史が語ります。

「新文化」2014年2月17日付記事「大阪屋、講談社などから取締役4氏、監査役1氏選任へ」に曰く、「新任の取締役候補者は大竹深夫(講談社取締役)、早川三雄(小学館顧問)、山岸博(同常務)、東田英樹(集英社専務)の4氏。役職については臨時株主総会後の取締役会で決まる。監査役候補者は森武文氏(講談社専務)。大阪屋の南雲隆男社長と中田知己常務は辞任により退任する見通し」。

「新文化」2014年3月3日付記事「大阪屋、新社長に大竹深夫氏(講談社)  KADOKAWAも出資へ」に曰く、「2月28日、大阪市西区の本社で臨時株主総会を行い、大手出版社の幹部5氏を取締役および監査役に招聘する役員人事を承認した。/大竹氏が第9代社長に就いたほか、早川三雄氏(小学館社長室顧問)が取締役相談役に、山岸博氏(同常務)と東田英樹氏(集英社専務)が社外取締役に、森武文氏(講談社専務)が監査役に就いた」。「大阪屋の取締役会とは別に、出資企業の代表が出席する再生委員会で財務・事業計画を協議していく」。

大阪屋さんの会社概要や、講談社ご出身の大竹社長の2014年4月付「ご挨拶」もご参照ください。曰く「当社、出版取次が扱う「本」は、同じ内容の1冊の本でも、読む人によって、また同じ人でも読んだ時の価値観やその時の心情で、得られる価値が全く異なるという側面を持っています。であるからこそ、人生の様々な局面で、様々な人たちが、多様な本と出会える環境をサポートすることが私たち出版取次の使命であると考えております。また同時に、出版の多様性が自由で豊かな社会のために資する役割と、それを担保するための流通・小売の多様性の保持も責務であると考えております。/情報化、デジタル化が急速に進む現在、出版を取り巻く環境も大きく変化を遂げています。当社は、電子書籍も含めた読書形態の多様化、注文品や品揃えへの読者ニーズの変化等にスピーディに対応できる流通体制を整え、読者の皆様の欲しい本が、いつでも、どこでも、どんな形でも手にすることができる出版流通の実現を目指してまいります。 同時に、読者の皆様に「本」との新しい出会いや発見を楽しんでいただける、そして楽しく心地よい、さまざまなタイプの「本のある空間」を全国の街や町に提供できる出版取次を目指してまいります。また、小さくても新たに「本屋」を始めてみたいという意欲をお持ちの方々と、熱く本音で語り合える役割を担える存在でありたいとも願っております。/現在当社では、有力な出版社・企業団の協力のもと新しい時代の出版取次業の創生に向けた取り組みをスタートしております。読者により近い視点で「本の将来・未来を考える」ことをモットーに、書店・出版社と、ともに話し合い、信頼される、“皆様とともに歩む大阪屋” を目指してまいります。 皆様のご期待、ご支援をお願い申し上げます」。

「小さくても新たに「本屋」を始めてみたいという意欲をお持ちの方々と、熱く本音で語り合える役割を担える存在でありたい」という姿勢は素晴らしいと思います。「書店・出版社と、ともに話し合い、信頼される、“皆様とともに歩む大阪屋” を目指してまいります」という文言がその通りに実行実現されることを望みたいと思います。

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◆7月17日正午現在。

ハア・・・・・・。合意書、《面白い》なあ。栗田=版元間じゃなくて、二次卸スキームだから三者間なんだな。

ある方曰く(リンクは張りません)「栗田出版から1か月分だけ返品相殺してあげるなんて提案が来たけど、大阪屋の二次卸スキームに合意することが前提なのでうちは乗れないかなぁ。独自に債権申出日までの返品について相殺の申し立てするのが良さそう」。当然のことながらそう判断する版元が出てきてもまったくおかしくないですね。

栗田出版販売代表取締役・山本高秀さんによる、取引先出版社はじめ債権者各位へ宛てた7月15日付「弊社からのお詫び」。同様の文書を弊社はFAXでも郵送でも受け取っていません。山本社長名義で出版社に郵送された7月13日付文書「返品スキーム等に対する弊社からのご提案につきまして」とも、7月15日付「「返品相当額」等に関するご案内」とも微妙に文面が異なります。郵送二文書と、今回のウェブ文書との決定的な違い、それはウェブ文書が創業者栗田確也さんの名前を引き合いに出していることです。郵送二文書には創業者の「そ」の字も出てきません。遡って6月26日付の最初の「ご連絡(弊社民事再生手続開始申立について)」にも出てこない。なぜ今回なんですか。内容が内容なだけに、なんで個々の債権者に届けないのでしょう。なぜウェブサイト掲示だけ?と思われてしまうことに今なおお気づきでないのでしょうか。《対外的効果》を狙っていると思われるのは現在の栗田さんにとって利益とはならないはずなのですけれども・・・。

「債権者様への説明会では、6月26日以降の返品を大阪屋様経由とすることと、その入帳をいただくという二次卸スキームの中での「返品スキーム」についてもご説明を致しました。しかしながら、民事再生法で要請されている説明会であったこともあり、代理人弁護士からの説明が中心となりました。特に片面的な解約権付売買を根拠とした説明が中心となり、皆様にはご不快な思いを強く残すことになってしまったと悔いております。本来であれば、創業者栗田確也の時代から百年弱に亘り出版業界に長く身を置かせていただいている身として、弊社の言葉でご説明すべきであったと感じており、このスキームは「弊社からのお願い」として、ご負担をお掛けすることへのお詫びとお願いを心から呼びかけるべきものであったと深く反省しております。/結果として、出版社の皆様にとって違和感の強いご提案となってしまい、対応策についてのご提案をその場で差し上げることもできないまま、多数のご意見とお叱りの声をいただき、長時間に及ぶ会となってしまいました。この場をお借りして、改めて深くお詫びを申し上げます」。

債権者の中には今までの出来事の影響や今後のことを何歩先も考えている人々がいます。栗田さんもそのはずです。栗田さんが先手を打ってきたもののほとんどは版元を不快にさせただけで、今回のような文書一つを出すにしても版元の勘所を外しています。自分の立場ばかりを主張して、債権者の立場を後回しにするからです。後手に回るのはそろそろやめないと、出版社との距離は縮まりえないです。

以下別件。

出版労連(日本出版社労働連合会)の声明。2015年5月27日発表「【声明】「戦争法案」の国会審議に抗議し廃案を求める」、2015年6月29日発表「【声明】自民党議員による言論弾圧の幕引きを許さず、戦争法案の撤回を求める」。いずれも中央執行委員長・大谷充さんのお名前で出されています。「文化通信」7月16日付記事「出版労連、安保法案採決で抗議声明」によれば、「日本出版労働組合連合会は7月16日、同日の衆議院本会議で安全保障関連法案が可決されたことについて、「民意を無視した『戦争法案』の強行採決に強く抗議する」との抗議声明を発表した。/声明では、同…」(以下有料)とのことです。

出版労連のしくみ」の紹介によれば、「出版労連は、出版および出版関連産業に働く人たちが集う、産業別労働組合です。名称=日本出版労働組合連合会(Japan Federation of Publishing Workers' Uinons)。組織数150組合・グループ 約6,000名(2012年6月現在)」。役員の皆さんは「中央執行委員長:大谷充(主婦と生活労組)、副中央執行委員長:大塚博文(C&S日本支社労組)/小日向芳子(中法法規出版労組)/高鶴淳二(出版ネッツ)/寺川徹(実教出版労組)/平川修一(出版ユニオン)/吉田典裕(開隆堂・開隆館労組)、書記長:木村広(三省堂労組)、書記次長:北健一(出版ネッツ)/内田浩(メディカルトリビューン関連労組)」と記載されています。

6月29日の声明の結びはこうです。「「戦争で最初に犠牲になるのは真実」の言葉がしめすように、「戦争」をすることと「表現の自由」は相いれないものであることは、過去の戦争の歴史を振り返るまでもない真実である。/政権与党である自民党による、今回の言論弾圧発言のうやむやな解決を許さない。出版労連は出版に携わるすべての人々や、新聞労連・民放労連などのメディア関連労組とともに「知る権利」と「表現の自由」を守り抜くために、あらゆる言論弾圧に怯むことなく活動を旺盛に継続することを表明し、必ず戦争法案を廃案に追い込む決意である」。

「戦争法案」(引用です)の是非を問うことが重要なのは理解できます。それだけに、出版労連は栗田事案をどう考えているのだろう、という思いが募ります。サイト内検索で「栗田出版販売」と入力しても結果はゼロです。栗田の件で声明を出していないのは出版労連だけではありません。428社の出版社で構成される「書協」こと一般社団法人日本書籍出版協会、93社の雑誌出版社からなる「雑協」こと一般社団法人日本雑誌協会、25社の出版取次からなる「取協」こと一般社団法人日本出版取次協会、といった業界主要団体も声明は出していない。栗田からの多額の未払金がある債権者でもある「日本図書普及株式会社」(図書券・図書カードの発行元)もです。業界のどういう方々が役職に就かれているか、ご覧になると良いと思います。たとえば日本図書普及の「会社概要」によれば代表取締役社長の濵田博信さんは講談社顧問でいらっしゃいます。

全国紙に記事が載るような出来事だったのに、業界の主要団体がコメントをひとつも出さないというのはいったいどういうことなのか。不思議な世界だな、と一般読者に思われても仕方ないですね。

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◆7月17日14時現在。

元取次マンで現在は「自費出版企画・編集」のお仕事をされておられる方の貴重な証言です。「‥‥2008年の段階ですでに大阪屋と提携していたが、このあたりの話は予想通りです。私が大阪屋にいたころから「大阪屋は栗田を統合するんだろうなあ」という噂は出回っていました」(7月17日付「元取次視点の出版流通の話⑥「業界第4位・栗田出版販売の経営破たん」より)。ちなみにこのエントリーは「新文化」7月2日付記事(同紙ウェブサイトのニュースフラッシュではなく、紙媒体に掲載された記事)を引用しつつコメントを加えたもの。引用の中にはこんな興味深いくだりもあります。「大阪屋の株主の1社である講談社の森武文専務は6月26日、「今は困惑している。しかし、栗田が事業を譲渡し、書店を守ることができるならば、今回の措置もやむを得ない。今後もできる限り応援したいと思う」と話し、小学館、集英社も栗田を支援する考えを示している」。

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by urag | 2015-07-17 12:09 | 雑談 | Trackback | Comments(0)
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