ウラゲツ☆ブログ

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2015年 07月 14日

雑談(2)

◆7月14日17時現在。

「新文化」7月14日付記事「栗田、返品相当額の控除などで新提案」曰く、「各出版社別に過去3年間(2012~14年)の4~6月期の平均仕入額と各年7月期の返品額から返品率を割り出し、今年4~6月期の平均仕入額にその返品率を掛けて、7月期に想定される返品相当額を算出する。栗田はその返品相当額を再生債権から控除し、8月精算時に還元する」。

は?

また曰く「なお、同社は7月10日午後3時半、東京地裁から民事再生手続き開始決定を受けた」。

ん?

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◆7月14日18時現在。

「新文化」7月14日付記事「文化産業信用組合、栗田について出版社に緊急支援へ」に曰く、「文化産業信用組合はこのほど、栗田出版販売の民事再生を受けて、国の「セーフティネット保証」や独自の資金調達により、出版社への支援提案を始めた。セーフティネット保証は、取引先の倒産や災害などによる突発的な事由によって経営に支障が出た場合、2億8000万円を限度額として中小企業に融資する制度。栗田の案件については、同制度の1号認定となり、連鎖倒産を防ぐための措置が通常の限度額とは別枠で実施される」。

→別枠で限度額以上の融資を中小企業庁から栗田に実施ね。なるほど。
→【22時追記】Sさんご教示ありがとうございます。栗田自身がまず適用される第1号として融資を受けるという意味ではなく、栗田案件が「セーフティネット保証制度 中小企業信用保険法第2条第5項」の1号すなわち「連鎖倒産防止」に該当するので、限度額以上の融資(一般保証限度額+別枠保証限度額ということなんでしょうかね)を出版社が受けられる、と読む、と。
→【23時追記】7月6日の債権者説明会の配布文書(10~11頁)に記載のあった、「連鎖倒産防止のためのセーフティネット保証制度」を使えるようになったということなのですね。「再生手続開始申立等事業者指定」を受けたことにより、制度が利用できるようになった、と。文書によれば、対象となるのは50万円以上の売掛債権があるか、栗田との取引依存度が20%以上になる債権者である、と。融資を受けるためには版元のそれぞれの本店所在地の市町村の商工担当課への申請が必要で、審査を経て1か月程度で融資されるという説明だったかと記憶します。さらに申請期限は、申立等事業者の指定期間である1年間であると。――とすると、栗田案件については債権額が10万円以上50万円未満の版元で、栗田との取引が全取次の20%以上でもない場合は、弁済にも制度にも頼ることができない、ということになるのでしょう。

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◆7月15日午前1時現在。

『文化通信』7月13日付記事「出版協、栗田再生案スキームに反対声明」を受けてのざっくばらんなやりとり

上記エントリーとは別件ですがあらためて「会社の民事再生-そのメリットとデメリット」の確認をしておきます。
さらにこれは重要、「簡易再生や同意再生について」。

簡易再生・・・「債権額で5分の3以上の届出再生債権者が、書面により、再生計画案と再生債権の届出・調査手続の省略について同意している場合には、再生債務者は、裁判所に対して簡易再生の申立てをすることができます。この申立てができるのは、債権届出期間経過後再生債権の一般調査期間の開始前に限られます」。「再生計画案の決議に関しては、書面決議の制度の適用が無く、集会で決議が行われますが、簡易再生に同意した債権者が集会に欠席した場合には、集会に出席して賛成したものと見なされます」。

同意再生・・・「同意再生は、届出債権者全員の同意により、再生債権の調査・確定手続と再生計画案の決議とを省略する手続です。同意再生決定が確定すれば再生計画の認可決定が確定したものとみなされます」。

ご参考までに「民事再生Q&A」「報酬規定」。

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◆7月15日午前9時現在。

岐路に立つ日本。「朝日新聞」7月15日7時27分付記事「安保法案、採決突き進む与党 「やるほど支持率落ちる」」。

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◆7月15日午前10時現在。

「新文化」の報道を受けての先達の声。「栗田の新しい提案はスキームそのものに対する説明責任を何ら果たすものではなく、少し譲って通してしまおうとする、相変わらずの出版業界の上意下達の構造のままです。/しかしこのまま通ったとしても、出版流通システムはまったく変わらないわけですから、大阪屋が利益を出し、何とかやっていけるのかも疑問です。/実質的に総合取次としての大阪屋、栗田も破産したのだから、新しい取次のビジョンを提出できなければ、同じことの繰り返しに過ぎないでしょう。/本来であれば、小売店、小出版社を多く参入、育成できる取次としての新たな正味体系、及び低正味買切、時限再販を導入するといったイメージを提出すべきだと思います。でもそれはとても無理ですから、更なる行き止まりが控えている気がします」。

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◆7月15日13時現在。

「読売新聞」7月15日12時33分付記事「安保関連法案、衆院特別委で可決…自・公が賛成」。現内閣、自民党、公明党の議員たちの名前を忘れない。「強行採決」の無惨さ。代議制への不信感の否応ない高まりと広がり。

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◆7月15日17時現在。

「図書新聞」7月15日付「【続報】栗田出版販売、民事再生:返品スキームなどで3つの提案――1カ月分の返品相当額を債権から控除――新刊の支払いサイト、2カ月後の末日に」曰く、「栗田出版販売は、債権者説明会で問題となった返品スキームに対する新たな提案として、7月13日付で「返品スキーム等に対する弊社からのご提案につきまして」と題する文書を出版社に送付している。/提案の内容は(1)1カ月分の返品相当額の還元と再生債権からの控除、(2)平成27年7月~12月の新刊の支払いサイトを2カ月後の末日とする、(3)6月26日以降の栗田分の取引で赤残が出る場合は翌月以降の支払いに繰り越して返品を相殺する――の3点」と。

ある版元さんが、栗田出版販売と東京地方裁判所からそれぞれ書類が届いた、とツイートされている通り、各版元に届き始めていて、上記の報道は栗田からの新提案文書「返品スキーム等に対する弊社からのご提案につきまして」(5枚)の内容に関するものです。東京地方裁判所から債権者に届いたのは、再生手続開始通知書」と「再生債権届出書」(説明書、記入例、裁判所用、債務者用)です。それにしてもあの「紛糾」(引用です)した集会のあとに、監督委員の弁護士先生の判断にせよ、地裁の決定にせよ、再生手続開始に移行できるとは。債権者の不服の度合いにはまったく関係ないのですねえ。以下、再び「図書新聞」が栗田の再提案書の内容を紹介する記事に戻ります。

「(1)は、2012年~14年の直近3年の4~6月の平均仕入れ額に対する7月の返品率に、15年6月25日までの3カ月分の平均仕入れ額を乗じたものを返品相当額として算出。返品相当額は再生債権から控除する。同時に、7月の栗田分の返品入帳の精算と合わせて、8月の支払伝票において返品入帳分の相殺として精算する。/期間を1カ月としているのは民事再生法の制約で、法律上の相殺権があるのは申し立て日(6月26日)から債権届出期間の終了日(8月4日)と規定されているため。返品相当額の内容は、7月17日を目途に各社に送付する」。

再提案を受け取った感想としては「人の話を聞いていないし、答えてもいない。とにかくひどい。これが本当に《お願い》の姿勢などと言えるものなの?」の一言に付きます。以下、より詳しく列記します。

(一)版元の途方もない徒労感と失望
小難しい算出方法をしていますが、そこがポイントではありません。「6月25日までに出版社が栗田に納品した旧商品(旧債権)からの返品を大阪屋経由で買い取れ」といういわゆる二重負担の「お願い」を栗田が7月6日の債権者集会で版元に「提案」(相談、ではない)した件について、あれほど版元から激越に拒絶され、繰り返し撤回と再考を求められたにも関わらず、返品を含む二次卸スキーム自体は結局撤回されていない、というのがまず第一のポイントです。4時間を超える債権者集会とは何だったのか、途方もない徒労感と失望が版元を襲っています。「やっぱりね」「またかよ」「ふざけるな」「まやかしだ」「金の問題じゃない」「もう疲れた」「栗田も大阪屋も信じられない、あとは自分の身を守るだけだ」等々、様々な感想が業界を駆け巡っています。

(二)前回以上のややこしい提案と、公平性という欺瞞
なかには「前回よりマシ」と考える版元もいるようですけれど、1か月分の返品の実冊数を債権額確定のために旧債権から引くのではなくて、返品率に準拠するというのは、前回にも増してややこしい話になっています。勝手な計算式を押しつけて金を握らせておいて、さらに債権額の届け出の際にはその金額を差し引いてね、というずうずうしさ。債権「額」から引いたならば、それは実態的には栗田の資産を版元に「還元」するというよりは、もともと版元の財産であるものをさも自分の懐から返したかのように言っているというだけの話に終わりませんか。1か月分の返品額に相当する金額を、大阪屋からの支払いに上乗せするから二次卸スキームを認めてくれ(還元はスキームの承認が前提)、と。すでに返品買上を受け入れている版元もいるから、公平性を期すためにも「ご協力」を、と。債権者集会でも栗田役員および弁護団は「皆さんすべてに今まで通りの出荷と、返品買上をお願いしたい。不平等はなくさねばならない」ということを仰っていました。「公平性」だの「不平等」だのという日本語の使い方がまったく間違っています。

(三)同意なき押しつけによる既成事実化
大阪屋が「買い上げた」という栗田の返品はそもそも、大阪屋と版元との関係においては新規取引に当たるわけなので、版元の同意なしに大阪屋の売上から相殺できません。そのことは集会で栗田代理人弁護士団も認めています。つまり、大阪屋が「買い上げた」(金銭のやりとりの実態があるようには見えませんが)返品を、版元は受ける必要がない。出版共同流通が強引に版元に返品してくること事態が間違っていますし、実際今も「同意がないまま」返品され続けています。同意がないまま返品し続けていることを悪びれる様子すらなく、「返品をもうしちゃってるし、受け入れている版元もいるんだから、ほかの版元も受け入れて買い上げてくれないと公平じゃないだろ」と言っているわけです。繰り返しますが「公平性」ってこういう無理を強制する時に使う言葉じゃない。

(四)債権者集会に対する実質的なゼロ回答
つまりこんなの、もうムチャクチャな話ですよ。すべてが規定路線。債権者集会でのはっきりとした問いかけにまったく答えていないのですから。「6月26日から7月25日までの1か月の推定返品相当額を計算式に基づいて算出して支払いに上乗せするって言ってるじゃないですか、だから7月26日以降はさらに旧債権から返品が出ようがそっちはとにかく買えって」と言っているに等しいです。こんな交渉を「前進だ」と評価する人が果たしているのでしょうか? 利害関係の深い方々の中にはいるのかもしれませんが、その他大勢にとっては金額の問題ではないのです。栗田や大阪屋との取引の根幹を支える「信用」に怖ろしいまでの亀裂が入ってしまったことを心から憂慮しているのです。

(五)新刊委託制度の崩壊序曲
「図書新聞」の続きに曰く、「(2)は、支払いサイトが2カ月を超える出版社に限定して実施。例えば、7月中の締日分の新刊仕入れの支払いを9月末日と支払いサイトを短縮する」と。債権者集会で栗田および弁護士団が言ったのは、「新刊委託は商品を預かっているのではない。請求や精算がまだだろうが、それは個別の取引条件にすぎず、版元が納品した時点で売買契約は成立している(だから商品をどうしようとこちらの勝手だ)」という論理です。そんなことは取次人の口から一度も聞いたことがないです。ないけれど、この考え方で行くと、版元は「そうか、じゃあ、委託でも買上と同じならば、今後は全部注文扱いでもいいね」となります。だから新刊委託の支払いサイトというのは、先方が前回そう版元に説明した時点ですでに重要問題ではなくなっていたのではないでしょうか。

(六)ばれちゃった債権者間「格差」
「支払いサイトが2カ月を超える出版社に限定して」というのは、いわゆる内払いや特払いがある好条件版元は除いて、という意味になりますが、はからずも「刷って本屋に撒いた分だけ、本が売れようが売れまいが版元に入金がある」という現実を暴露してしてしまっているわけです。本の実売数とは無関係にとりあえずカネが入るこの仕組みこそが、一部版元の経営を支えている当の屋台骨である、とわざわざ説明して下さるようなものです。「ばら撒かない、押しつけない」版元はたいていそんな優遇は受けていませんから、「ばら撒き」版元との格差がここにくっきりと表れるわけです。こうした中で言われる「公平性」っていったい何なのでしょう。実に白々しいです。

(七)悪循環への突入は避けられないのか
栗田が新刊委託について上記のように考えているとなると、版元にとっては合併相手の大阪屋も同様に考えているのかどうか確かめる必要が出てきます。栗田の見解と相違ない、というのならば、出版社はもう新刊を委託で出す理由はないし、義理もありません。大阪屋がもし版元と新刊委託取引をしたいならば、一部の版元さんがすでに示唆しているように、きっちりと約定書を交わして、さらに取次さんから版元へ連帯保証書を提出してもらいましょう――そんな要求が出てきても不思議ではありません。商慣行というある種の柔軟性を栗田さんは自ら進んで《法のもとに》ぶち壊してしまったのですから、栗田も、大阪屋も、もう昔の曖昧さには戻れないし、戻るべきではありません。明確な回答がないまま進めば、栗田のみならず大阪屋への委託出荷を版元は制限せざるをえなくなるでしょう。書店への大量の送品がどうしても必要な出版社たちを除いては、です。発注しなければもともと入荷がないような版元の商品を委託で仕入れることが、取次にとっても書店にとっても今よりさらに難しくなる時代が到来するかもしれません。もしそうなったら、専門書を扱う大型書店にはどんな影響が出るのでしょうか。たとえばジュンク堂や丸善や文教堂を傘下に置く一方で、紀伊國屋書店と流通改革の同盟を組み、なおかつ大阪屋の株主であるようなDNPは、どう本件に対応するのでしょうか。

前回は「7つの逆効果」について書きました。今回も「7つ」挙げましたが、もはや深刻すぎて名付けようがありません。強いて言えば「再提案の7つの帰結」でしょうか。栗田がソフトランディングするためには、弱体化しつつある出版社たちに犠牲を押しつけないことが信用的に絶対必要なはずでした。「セーフティネット保証制度」が使えるようになればいい、などという問題ではないのです。あちらは金額的に譲歩の姿勢を見せたんだし精一杯やった、と思っているのかもしれませんが、この期に及んで信用回復に中途半端なスタンスしか示せないまま今日まできてしまったというのは致命的です。深刻かつ重大な懸念を表明せざるをえません。失われつつあるのはカネという以上に、取引継続のための信頼なのです。信頼を失った会社でも取引先から商品を仕入れ続けることができると関係者は断言できますか。それは無理です。栗田は版元に対し、上記3条件を具体的な金額とともに今週中にも提示するので、来週いっぱいで受け入れるかどうか返事をくれ、と通告してきています。短期決戦で版元の横の連帯が形成されない内にケリをつけたいのでしょう。もしそうだとしたらその目論見はやや甘いです、栗田とも大阪屋とも適切な距離を保とうとする版元はすでに出てきているのですから。受け入れるという版元もいるでしょうが、そうすれば代理人は「簡易再生」に持ち込める可能性が高まります。簡易再生については先刻ご紹介していますので、そちらをご参照ください。

「それにしても栗田さん、これがファイナル・アンサーということでよろしいですね? 合併相手の大阪屋さんも同じ考えですね?」――これが出版社の最後の質問になるでしょう。栗田さんは本当に書店と版元と一緒に再起したいのでしょうか(少なくともすべての相手と一緒に、ではない)。もしそのつもりならば、真摯かつ本音の対話にもっと時間を割くべきでした。もうそんな時間もない、余裕もないのかもしれず、ただただ無念です。

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◆7月16日16時現在。

中小出版社90社で組織される日本出版者協議会(旧名:出版流通対策協議会)が7月16日付で「栗田出版販売民事再生案スキームを撤回するよう求める」というエントリーを公開しています。曰く「債権者説明会でも出版社各社の怒りが爆発したように、売掛金を失うばかりか、自社の返品を大阪屋経由で買わされるなどという事態は、およそ商道徳・商慣習に反するものであり、債権者の利益を不当に害するものであって、絶対に許されるものではない。この再生計画案スキームは栗田出版販売の膨大な債務を、すべて出版社に押しつけた上で、同社を身軽にして帳合書店ごと来春、大阪屋に統合しようという乱暴で身勝手な計画といわざるをえない。/このようなことが許されるならば、すでに始まっている連鎖倒産が示すように、多くの出版社が経営危機に追い込まれ、日本の出版文化は危殆に瀕することとなる」と。

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by urag | 2015-07-14 17:59 | 雑談 | Trackback | Comments(2)
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Commented by 通行人 at 2015-07-15 16:00 x
明日には安保法案が衆院を通過するみたいですね。
今回の法案の成立に努力している安倍内閣と自民・公明両党のみなさんに
心から敬意を表したいと思っています。日本の安全保障を考える上で、
この安保法案の重要性を正しく認識すれば、反対という結論はありえないはずです。

これを機に国民一人一人が真剣に安全保障問題を考えるようになっていただきたいものです。
Commented by urag at 2015-07-15 21:19
通行人さんこんにちは。お仕事お疲れ様です。日本の安全保障というより、日米の安全保障ですね。真剣に考えれば誰だってジレンマは感じるはずですが、なぜか通行人さんにはその葛藤が感じられませんね。さすがです。それにまともな読解力があれば砂川判決を集団的自衛権容認とはとうてい読みえないことに気づきそうなものですけれども。結論から言えば、定型投稿はお断りってことです。


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