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2015年 07月 13日

注目新刊:『HAPAX』第4号は「戦争と革命」がテーマ

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★江川隆男さん(訳書:ブレイエ『初期ストア哲学における非物体的なものの理論』)
夜光社さんの思想誌『HAPAX vol.4 戦争と革命』(2015年夏号、本体900円、128頁、ISBN978-4-906944-06-4)に「〈脱-様相〉のアナーキズムについて」(69-77頁)と題した論考を寄せておられます。同号では、江川さんの『アンチ・モラリア――〈器官なき身体〉の哲学』(河出書房新社、2014年6月)について論究した、マーク・ダガン協会「アナーキーのための『アンチ・モラリア』の要約」(63-67頁)も併載されています。江川さんのご論考は青土社さんの月刊誌『現代思想』2015年6月号「特集=新しい唯物論」に掲載された「脱-様相と無-様相――様相中心主義批判」とともにお読みいただくのがよろしいかと思います。

このほか第4号では、HAPAX「無条件革命論――われわれには守るべき約束などない」、小泉義之「来たるべき領土、来たるべき民衆――観念的世界革命論を越えて」、友常勉「性の軍事化と戦争機械」、TIQQUN「『ヤングガール・セオリーのための基本資料』序文」、鼠研究会「どぶねずみたちのコミュニズム」、マニュエル・ヤン「トーキョー日記」、そして日本では『来たるべき蜂起』(彩流社、2010年)が訳されている不可視委員会へのインタビューが掲載されています。このインタヴューは『われわれの友へ』(仏語原書、2014年;日本語訳、夜光社、近刊)のドイツ語版刊行に際して『ツァイト』紙に今春掲載されたものの翻訳とのことです。


★ジャック・デリダさん(著書:『条件なき大学』)
1997年にポーランド、ギリシャ、南アフリカ共和国、イスラエルで行った講演に由来し、フランスの社会科学高等研究院(EHESS)で行われたセミネール「偽証と証し」(1997~1999年)の第1回におおよそ相当するというテクスト「赦すこと Pardonner」(「『カイエ・ドゥ・レルヌ』誌、2004年「デリダ特集号」所収)が、守中高明さんの翻訳により刊行されました。『赦すこと――赦し得ぬものと時効にかかり得ぬもの』(守中高明訳、未來社、2015年7月、本体1,800円、四六判上製140頁、ISBN978-4-624-93263-3)という訳書で、守中さんによる長文解説「不-可能なることの切迫――来たるべき赦しの倫理学のために」が付されています。非常に興味深い、アクチュアルな主題をめぐり、デリダはジャンケレヴィッチの未訳書を参照しつつ、問いを深めていきます。いずれ講義録の全体も将来的に日本語で読めるようになるのかもしれません。


★昼間賢さん(訳書:サンドラール『パリ南西東北』)
ご高訳書がまもなく発売となります。ピエール・マッコルラン(Pierre Mac Orlan, 1882-1970)による写真論集、『写真幻想』(平凡社、2015年7月、本体3,200円、A5判上製248頁、ISBN978-4-582-23124-3)です。帯文に曰く「澁澤龍彦らが愛した伝説的な文人の手になる、もう一つの「写真小史」。「社会的幻想」を鍵語に、アジェ、クリュル、ケルテス、カーアン、カルティエ=ブレッソン、シュタイナート、ロニスなどに通底する戦間期ヨーロッパの根源的な不安の影を、また、かれらの作品に透けて見えるパリの街を、味わい深い独特の文体で自在に描く。写真批評黎明期ならではの豊かな果実。「写真は文学にもっとも近い芸術なのです」(ドアノー宛書簡)。掲載写真多数。原書は、Écrits sur la photographie (Textuel, 2011)です。美しい装丁は間村俊一さんによるもの。


★門林岳史さん(訳書:リピット水田堯『原子の光(影の光学)』)
誠文堂新光社さんの季刊誌『アイデア』370号(2015年6月)は「思想とデザイン」という特集号で、杉浦康平さんをはじめとする有名デザイナーさんの思想書への関わり合いや人文系雑誌をめぐる国内外の現代史を通覧できる素晴らしい内容となっています。哲学思想ご担当の書店員さんや若手編集者の皆さんにとって便利なカタログではないでしょうか。企画とデザインは加藤賢策さんのラボラトリーズによるもの。門林さんはマクルーハン+フィオーレ『メディアはマッサージである』(門林岳史訳、河出文庫、2015年3月)などを論じた「マクルーハンのメディアデザイン」という文章を寄せておられます。戸田ツトムさんや荻原富雄さん、東浩紀さんへのインタビューも掲載されています。特に『GS』『都市』『インターコミュニケーション』『10+1』など数々の雑誌を手掛けられてきた荻原さんのインタビューは必読です(もっと長いものを読みたかったくらい)。数々の雑誌紹介の中には弊社発売の『表象』や『舞台芸術』(第一期)もありました。

by urag | 2015-07-13 18:31 | 本のコンシェルジュ | Comments(0)


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