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2015年 07月 02日

栗田出版販売の民事再生に関する心配事あれこれ(3)

◆7月2日15時現在

東京商工リサーチの「TSR情報」(全国版)案内速報7月1日号として栗田出版販売の債権者リストが掲載され、同7月2日号では「その2」が掲載開始になりました。名簿が長大なものになっているだろうことが窺われます。債権者リストは会員登録(月額使用料あり)の上、倒産企業1件あたり2,000円、パソコン画面での一覧表示が1画面あたり100円~1000円(リストの長さによる)とのことです。帝国データバンクでもいずれ債権者名簿を見れるようになるのかなと思います。「帝国ニュース購読者限定サービスとして、債権者名簿を閲覧・検索したり、ご指定の業種・エリアの倒産速報をメールで受け取れるオンラインサービスもお使いいただけます。※ご利用には帝国ニュースを購読の上、ユーザ登録が必要です」と。

閲覧された方々の感想がつぶやかれ始めています。

栗田出版販売株式会社の債権者名簿見てるけど、でかいところは被害もでかいなー・・・。
各出版社の栗田民事再生の未回収額をみた。大手は数億円、身近な中小出版社も3000万円、5000万円とあってちょっとヤバそう。

名簿閲覧とは無関係ですが、出版社にお勤めと思しい方が、こんなことを呟いておられます。

民事再生の栗田、6/25までの売掛金はすべて版元が泣くことに。返品は大阪屋経由で計上されるため、仮に売掛金が7000万円ある版元は消化率50%だったとして、返品含め1億円ほど泣くことが決定。

栗田の債権分からの返品を大阪屋の売上で相殺する方式には反対している版元がそれなりにいるので、泣きを受け入れる版元とそうでない版元と、さまざまあるようです。当面せめぎ合いが続くものと思われます。

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◆7月3日午前0時現在

ニュース共有サービス「NewsPicks」では「Yahoo! ニュース BUSINESS」6月26日付記事「出版取次では過去最大の倒産、栗田出版販売が民事再生」に対する各界の反応を見ることができます。全部を見るためには会員登録が必要ですが、無料で見れる範囲では、明屋書店代表取締役の小島俊一さんの6月27日のコメントが一番リアルです。曰く「最大債権者である出版社の動向に一番興味がある。/栗田の取引先書店が今月末の支払いをするとは、思えないが、栗田が完全に経営破綻した場合、栗田の取引先書店の在庫は、返品先を失い、一気に不良在庫化する。/取次が潰れると言う事は、そういう事。さて出版社は、債権を放棄した上で、今後も栗田に商品を納品し続けるのだろうか?」

「取次が潰れると言う事は、そういう事」というのはまさに今あちこちで業界人が共通して口にしている言葉です。つまり版元にも書店にも双方にダメージが及ぶということ。栗田や大阪屋が出版社の信頼を獲得できずに、版元が栗田に対する出荷を停止し続け、同時に返品入帖を保留し続けざるをえない場合、書店さんへの影響はいよいよ深刻になってくるだろうと推測できます。版元は書店さんに対して事を構えたいわけではないだけに、栗田と大阪屋の責任は今までの役割に比例して大きくならざるをえません。

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◆7月3日午前11時現在

「心配事あれこれ(2)」で関連情報として上げた「出版流通の構造改革」系の話題についての続報です。紀伊國屋書店さんが大日本印刷(DNP)さんとともに今春立ちあげた合弁会社「株式会社出版流通イノベーションジャパン(PMIJ)」の進捗状況について、代表取締役社長の高井昌史さん(紀伊國屋書店社長)が一昨日(7月1日)、東京国際ブックフェアで「出版流通市場の活性化に向けて」と題した講演をされました。「新文化」7月2日付の記事「PMIJの高井社長が直取引の拡大、新物流構想などを発表」によれば、「高井社長は《返品率の改善を目指してパターン配本に依存しない配本適正化に取り組む》として、出版社と、紀伊國屋書店、DNPグループ書店との直接取引を拡大する考えを示した。一定枠内の返品許諾や時限再販を前提に、買切り条件で希望通りの配本を受けられる仕組みを構築する」とあります。

設立前の発表ではさほど明瞭にはなっていないように見受けましたが、出版社と書店の直取引の拡大というのは大方の予想通りです。「ただし、新刊配本などは従来通り取次流通を活用し、独自流通についても取次会社と話し合っていく考えを示した」ともありますから、「取次外しではないか」との懸念を惹起するかもしれないことを踏まえて取次とも協議するということなのでしょう。書店チェーン最大手の紀伊國屋書店と、DNPグループ書店(すなわち、丸善、ジュンク堂書店、文教堂、ネット書店honto)の連携ということになると、これはいわばライバル同士の禁断の協業にも等しく、高井社長がしばしば掲げられてきた「アマゾンへの対抗」としてはこれ以上に強力な布陣はありません。ただし、出版社との直取引に積極的なアマゾンに対抗するということが、PMIJにおいても同様に「直取引の拡大」を意味するならば、それについては取次会社は重大な利害的関心を寄せざるをえません。DNPグループには図書館流通センター(TRC)も含まれるわけですが、TRCは売上規模で言えば日教販や太洋社より大きく、栗田に拮抗しうる会社ですから、「直取引の拡大」が発揮しうる影響力はさらに大きくなります。

しかし出版社にとって問題なのは、当然のことながら「取引条件」です。アマゾンと同等の条件を提示するならば取次の従来の条件より掛率が低いので、取引を渋るもしくは断る版元は相当数あるはずです。また、買切とは言いながらも一定枠内の返品許諾を前提にするというのは「委託制度」の名残に見えてしまうので、版元の警戒心を強めさせ、交渉のハードルをいささか高めることになるでしょう。さらに、時限再販についても、版元によっては留保があるかもしれません。直取引は小零細版元まで含めた総体としてはそんなに容易には進まないでしょうけれど、積極的に応じる版元も、大手や中堅を中心にそれなりの数が出てくるでしょう。

もうひとつのポイントは「返品率の改善を目指してパターン配本に依存しない配本適正化に取り組む」という点です。パターン配本というのは書店の売上規模に応じて版元が商品の送りこみを行うものです。取次がパターンを作る場合もあります。書店にとっては毎日300点以上ある書籍新刊の一つひとつについて発注をしなくても済むので楽ですが、その一方でパターン配本をしない版元(受注制で、送りこみをしない出版社)もあり、専門書版元や小零細版元はパターン配本をしない場合が多いため、店頭の商品構成において他社と差別化したい書店にとっては日々の新刊情報の入手と品定め、そして漏れのない発注が非常に重要になってきます。しかし、書店はますます人員を減らす傾向にあるので、担当する売場面積が昔に比べればますます増えています。パターン配本に依存しない、というのは個別のお店では対応しきれない場合がありますから、チェーン書店は重要視する版元や新刊については本部やMD、仕入、バイヤーなどが一括発注するという手段を取ります。いわば書店サイドのパターンを作るということですが、これはチェーンごとの内部的な支店ランキングや位置付け、実績評価や出店戦略に基づくため、版元のように外側から各支店を見ている人間たちの評価軸とは当然異なるわけです。ですから、版元が書店チェーンから一括発注をもらった時には「この支店とこの支店の数字は現実的じゃない気がするなあ(売れ残る気がする)」と違和感を抱くことがあります。

出版社の経験的実感から言えば、パターンというのは書店内部のランク付けや戦略だけでなく、外部の視点つまり版元の評価が加味されないと、本当の意味での「配本適正化」には辿りつかないのではないかと思われます。なぜかと言えば、どんなにシステムやテクノロジーが進化しても、リアル書店においては、現実に働いている書店員さんのポテンシャルというのが、売上を左右しうるからです。版元営業マンにとって重要なのは、書店の売場面積の大きい小さいでお店を判断することではなく、書店員さんがどれだけ売る力を持っているかを見極め、様々な協力と共闘を惜しまないことです。版元が持っている人的評価を書店が取りこみ、有効活用すること(これには光の部分と闇の部分があることは言うまでもありません。査定とも直結しうるからです)。

こんにちでは、いわゆる「インペナ契約」※の拡大によって、パターン配本からの脱却を図る書店がある一方で、少人数による店舗オペレーションのためパターン配本に依存せざるをえない書店があるという、「二極化」が進んでいるように見えます。「返品率の改善」といい、「配本適正化」といっても、それは書店が自社パターンを組めば即座に解決する問題ではありません。システム構築が重要ではないとは言いませんが、マンパワーつまり人材育成が大事なはずだ、と日々の現実から実感している出版人は少なくないと思います。この人材育成こそ、出版不況の20年間においてもっとも困難とされ、あるいは後回しにされたりしてきた当のものです。これは書店さんに限った話ではなく、出版社にも取次にも当てはまります。「会社が生き残らなければ元も子もないのだから、部品(スタッフ)を使い捨てにするのはやむをえない」という諦めが人材育成を等閑視することに繋がり、逆説めいていますが結果的には会社が寄って立つ足場が崩れていくわけです。

※「インペナ契約」とは、日本著者販促センターの「出版業界の豆知識」が永江朗さんの著作に準拠して説明するには、「書店は、本を売れば奨励金を得れるが、売れなければ違約金を取られるという合意のこと。incentive(インセンティブ)とpenalty(ペナルティ)の略語。つまり、仕入れの正味と返品の正味に価格差をつける契約となる」。

経済産業省の商務情報政策局文化情報関連産業課が12年前(!)にまとめた「出版産業の現状と課題」という文書にあるまとめ部分「出版産業に係る課題と取組」には4つの課題が列挙されています。(1)再販制の問題、(2)流通の効率化、(3)デジタルコンテンツ市場環境の整備、(4)出版を巡る権利のあり方。経済産業省ではさらにもう1年前(13年前)にも同様の課題を列記していました。大枠では、ほとんどこんにちの問題と変わりありません。これは毎年同じことを議論しているのにまったく情況が進んでいない、ということを意味するわけでは必ずしもありません。様々な試みや進歩や挫折はありましたし、今もあります。「根本的解決」などないのです。そこに固執すると、もはや「全破壊」しかありません。確かに世間には「もうぶっ壊れた方がいいんじゃないの」という方もいらっしゃいます。業界人もまた、それぞれの存在意義について自問を続けていますが、業界を「全破壊」させる魔法の言葉などそもそもないことも知っています。破壊がまったく必要ではないとは言いません。しかし破壊がいつでも解決を導けるわけではないのもまた自明です。

長々と書きましたが、「新文化」の要約ではなく高井社長自身の講演全文を熟読したいところです。もっとたくさんの機微や示唆が含まれているはずだからです。PMIJの試みが今後どう推移していくのか、注意深く見ていきたいと思います。

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◆7月3日13時現在。

あっ。うわー。えっ? 

ここから判断すると・・・・
真正面じゃなくて側面からのリスクか! 
まさにサイドエフェクト、というかサイドアタックだなこれ。

自社が大丈夫でも自前でなくて共有してれば
そっちから巻き込まれてアウトになる可能性があるってことか。

構造、特に階層を把握しないとまずいな。
集団ごと持ってかれる。

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◆7月3日18時現在。

共有部分が万が一やられたら、無関係だったはずの二大取次にも
当面出荷できなくなってしまう。

万が一の想定とはいえ、いくらなんでもそれは一大事。
それぞれの取引先が多ければ多いほど、無自覚な運命共同体になる。
取引先の取引先。そのまた取引先。
誰がそこまで知っているだろう。

同様の案件を持つ会社の数がどれくらいあるのか想像もつかないし、
次の受け皿がたぶん足りない。
留まっても危ない。大移動したらおそらくもっと危ない。

コラテラルに終わるはずがメイン・イヴェントになりかねない。
出来事は始まっていなかったとでもいうのでしょうか。
その時が来たら短期的に解決できるのか?

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◆7月3日21時現在。

最大手の金額が予想を下回ったのは意外でしたけれど、
なぜそうなったのか、そこにも意味があると思います。

何せ取引先が多い。
掲載されていませんが、あの先にはさらに
続きがあるわけです。

数字を見ると一気にリアルさや怖さが増して、
色々な予測が裏打ちされた気がします。
想像はできても、現実味がそこに加わると
やはり怖いですし、改めて戦慄します。

皆様、ご自愛くださいませ。
それではまた6日に。

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by urag | 2015-07-02 16:03 | 雑談 | Trackback | Comments(4)
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Commented at 2015-07-03 12:46 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by urag at 2015-07-03 12:56
「あ」さんこんにちは。なるほど・・・。
Commented at 2015-07-03 17:46 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by urag at 2015-07-03 18:32
「あ」さん、ありがとうございます。同様な立場の方々、案外多いかもしれません。


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